SOLID STATE WARRIOR

ROGER JOSEPH MANNING JR.


1. THE LAND OF PURE IMAGINATION
2. TOO LATE FOR US NOW
3. WISH IT WOULD RAIN
4. THE LOSER
5. SANDMAN
6. WHAT YOU DON'T KNOW ABOUT THE GIRL
7. DRAGONFLY
8. CREEPLE PEOPLE
9. SLEEP CHILDREN
10. YOU WERE RIGHT
11. 'TIL WE MEET AGAIN


 先人の名前を出して音楽性を言い表わすのは簡単ですが、そんな枠には納まり切らない極上の、彼だけの音楽作品。

 シンガー・(ポップ)ソング・ライターとしての彼の力量が余す所無く楽曲に滲み出ている。全曲捨て曲なし!元ジェリー・フィッシュばかりを期待し過ぎると評価を見誤ります。あれはアンディ・スターマーとの化学作用による稀に見る極上ポップであり、それとはまた違う所の極上ポップ世界を堪能するのが正解。 ただ、ジェリーフィッシュがあったからこそのこの楽曲群に繋がったのだと歴史に思いを馳せましょう。

 ここまでの作品が完成したのは、彼の曲作りの才能によりますが、彼のスタンス、鍵盤奏者であることを抑え、あくまでも「ポップソング」を作り上げる事に自分の才能を傾注する姿勢がそのあたりの要因なのかと。
 また全楽器の持ち分をしっかりと考え、1人多重録音に聴かれる「こじんまりさ」も感じさせないのは、バンド経験者ならでは。経験がモノを言ってます。
 よく聴くとしっかりと鍵盤アレンジがなされているのもミソで、この辺の隠れた自己主張はまさに「センス」、「粋」だと思います。

 アップな曲も良いですが、特にバラード曲が秀逸。ヴォーカルのドリーミーでソフトな処理は危険なほどの甘さが漂って寓話・ファンタジーテイストの曲にさらに深みを持たせています。
 処理の仕方でそう聴こえるのかもしれないのだけれど、憂いを多少帯びた甘い声質がビーチ・ボーイズのブルース・ジョンストンにそっくり!なんて素晴らしい!(ここで先人の名前を出しちゃった…)
 バラード曲にはとても通じる物があり、あのポップス職人ブルース・ジョンストンの域に達しちゃっているのはもう脱帽ですね。
 もちろんアップな曲あっての話しですよ、この事は。バラード以外もポップの極みを聴き取れる曲しか無いので。まぁとにかく聴きましょう。


 先鋭的で時代感のあるポップもまたポップの一形態ではありますが、こういった綿々と連なる歴史を継承する普遍調のポップもまた一つの形態ではあります。どちらが良いとは決して言えないので、僕にできる事はそれらの形態や主張を聴き倒す事のみ。
 歌・曲・演奏・歌唱が高度にバランス良く、その上その全てが良質という久々の名盤。2006年初頭にして名盤が誕生致しました。聴き倒せ!