FOREST FOR THE TREES
FOREST FOR THE TREES


1. DREAM
2. INFINITE COW
3. FALL
4. YOU CREATE THE REASON
5. TREE
6. WET PAINT
7. STREAM
8. OHM
9. ALGORITHM
10. GREEN LIGHT STREET
11. PLANET UNKNOWN
12. THOUGHTS IN MY HEAD


 その時代の最先端を行き過ぎちゃって古くなってしまう音は多々あります。今流行りのヒップホップ味のフォークもその傾向にあるかなぁ?なんて思うのですが、10年も前に同じ様な事をやっていて今だにそのセンスの粋さでは現代に通用する珠玉の名作がこのFOREST FOR THE TREESの唯一のこの作品。

 ベックの傑作「ルーザー」の共作者として知られるカール・スティーブンソンの単独プロジェクトで、1994年に録音されていたものが、カール・スティーブンソン自身の精神的変調により、お蔵入り。その後1997年に関係者の尽力により発売されたという経歴を持っています。

 何といってもこの作品の魅力は斬新性とポップさの見事な同居にあります。エレクトロなリズムに多種多様な楽器、サンプリングが絡むという、要素を上げていくと今では普通になってしまったサウンドなのですが、これがもし1994年に発売されていたら?と考えると…凄いの一言です。それが今聴いても新しく聴こえるとは。2006年の時点ではWhy?というバンドが同傾向の音楽性です。
 FOREST FOR THE TREESってどういう意味なんだろう?詳しくは書きませんが、歌詞は難解。アルバムタイトル/ユニット名から類推するにしても単なる自然/原始回帰って訳でもありません。自分の内面を押し進めるうちに広がっちゃった心の宇宙空間の表現とでも説明すればいいかなぁ。

 サウンド面は、作品の色が集約されていると言っても良い、シングルカットもされた1曲目。シタール(彼自身の演奏)、タブラ、バグパイプ、ストレンジで民族的なコーラス。プログラミングされたリズムにのるラップが混ざりあい、これまた素晴らしくポップに出来上がった曲に様々な要素が乗っかるという僕の大好きな「過剰ポップ」に近いのですが、過剰さを過剰に聴こえさせないプロダクションがまた素晴らしい。
 展開の起伏やフックの妙、「い〜しや〜きいも〜」やチャルメラのサンプリング(8曲目)や「ヘビー・メタル・ギター」(4曲目)なんてクレジットもあったりして、仕掛けも面白い。この辺も彼の複雑な内面を表現している様です。
 そんな飛び道具のような仕掛けを1発に終わらせていないのは、センスの粋さなんでしょうね。今でこそ聴いて欲しい名盤だと断言します。自己の世界を作り上げながらも消えていった天才の残した1枚の遺産を楽しんでみてください。
 音楽性云々は別にして(僕は全く別だとは考えていませんが) ビーチ・ボーイズ/ブライアン・ウィルソンの(後年、ブライアン自身でプロジェクト復活させましたが)「SMILE」が好きな方はぜひ。色々なニュアンスは共通していると思います。