WISH YOU WERE HERE

BADFINGER

1974年 イギリス

1. JUST A CHANCE
2. YOUR SO FINE
3. GOT TO GET OUT OF HERE
4. KNOW ONE KNOWS
5. DENNIS
6. IN THE MEAN TIME
SOME OTHER TIME
7. LOVE TIME
8. KING OF THE LOAD(T)
9. MEANWHILE BACK AT THE RANCH
SHOULD I SMOKE

 

 いつまでも「ビートルズの弟分」と言われ続け、評価が低かったのですが10年位前からのリイシューやら近年のパワーポップ流行りで再評価の目を見た彼ら。
所謂「アップル時代」の名曲の方に心を奪われがちですが、どっこい、その後移籍したワーナー時代の彼らの方も侮れません。甲乙つけがたいのですが、僕はこちらの方が好きかな。

 印象は「タフなロックバンド」。現在で言う所のパワーポップに近いモノがありますが、近年のパワーポップの「甘酸っぱさ多し」って感じでは無く、「酸いも甘いも」と言った表現の方がニュアンス的には似合うようです。
 僕はどっちも好きなのですが、アメリカとイギリスのニュアンスの違いがあるけれど、同時期・同傾向のアメリカのバンド「RASPBERRIES」にも「酸い甘い」はありますね。
 
 もともと定評のあった素晴らしいソング・ライティング、メロディラインに加え、ビートルズという影を良い意味で消化した雑多な音楽性、ブリティッシュロック/ポップなのだけれど、アメリカっぽい薫りも漂わせています。時代性か、いくぶんハードな音作りもなされています。
 そこで一番重要なのは、バンドの前に向っていこうとするいつまでも「弟分」を引きずらない清い姿勢が聴いてとれる所。メインのソングライター、ピート・ハム以外のメンバーの作品も各人の個性を行かした厳選された雰囲気のある歌曲、佳曲が揃い、アルバム内容を充実したものに。バッドフィンガー流のロック/ポップの集大成とも言えるべき作品になっています。
 基本的には(バッドフィンガーの作品全てがそうですが)大ポップ大会。新機軸のストリングスを導入したロック組曲風の6にしても大仰に、冗長にならず、ポップさを生かす最大限の編曲がなされており、そんな曲にから7の染み入る歌へと続く選曲の妙もまた聴き所となっています。
 中でもやはりピート・ハムの作品、ダイナミックなギターサウンドを聴かせ、日本でのみシングルカットされた4。間奏部に入る日本語のリーディングはサディスティック・ミカ・バンドのミカによるもの。このあたりはプロデューサーのクリス・トーマス絡みですかね。そしてドラマティックな展開を見せる、構成力の妙を見せた5。この2曲はこのアルバムのベストトラック。バンドの歴史の中でも上位に入る名曲です。

 アップル時代には見られなかったタフさを獲得し、バッドフィンガー完成型ともいえるこのアルバム、何故か期待通りには行かずに売り上げは悪く、その上メンバー脱退や色々なトラブルに巻き込まれリーダーのピート・ハムの自殺と言う衝撃的な事件を迎え、オリジナルメンバーでの時代は終焉。
 その後再編されますが、今度はもう1人のオリジナルメンバー、トム・エバンスが自殺。呪われてます。
 その後また再結成されます。しかし、確かに曲は良い曲あるけど、メインだった2人が居ないでこれを再結成と呼んで良いものか、う〜ん悩みます。
 それはともかく、黄金期だけでなくこちらの時代にも光があたって欲しいですね。曲はこちらの方が完成度的には上だし。