いつまでも「ビートルズの弟分」と言われ続け、評価が低かったのですが10年位前からのリイシューやら近年のパワーポップ流行りで再評価の目を見た彼ら。
所謂「アップル時代」の名曲の方に心を奪われがちですが、どっこい、その後移籍したワーナー時代の彼らの方も侮れません。甲乙つけがたいのですが、僕はこちらの方が好きかな。
印象は「タフなロックバンド」。現在で言う所のパワーポップに近いモノがありますが、近年のパワーポップの「甘酸っぱさ多し」って感じでは無く、「酸いも甘いも」と言った表現の方がニュアンス的には似合うようです。
僕はどっちも好きなのですが、アメリカとイギリスのニュアンスの違いがあるけれど、同時期・同傾向のアメリカのバンド「RASPBERRIES」にも「酸い甘い」はありますね。
もともと定評のあった素晴らしいソング・ライティング、メロディラインに加え、ビートルズという影を良い意味で消化した雑多な音楽性、ブリティッシュロック/ポップなのだけれど、アメリカっぽい薫りも漂わせています。時代性か、いくぶんハードな音作りもなされています。
そこで一番重要なのは、バンドの前に向っていこうとするいつまでも「弟分」を引きずらない清い姿勢が聴いてとれる所。メインのソングライター、ピート・ハム以外のメンバーの作品も各人の個性を行かした厳選された雰囲気のある歌曲、佳曲が揃い、アルバム内容を充実したものに。バッドフィンガー流のロック/ポップの集大成とも言えるべき作品になっています。
基本的には(バッドフィンガーの作品全てがそうですが)大ポップ大会。新機軸のストリングスを導入したロック組曲風の6にしても大仰に、冗長にならず、ポップさを生かす最大限の編曲がなされており、そんな曲にから7の染み入る歌へと続く選曲の妙もまた聴き所となっています。
中でもやはりピート・ハムの作品、ダイナミックなギターサウンドを聴かせ、日本でのみシングルカットされた4。間奏部に入る日本語のリーディングはサディスティック・ミカ・バンドのミカによるもの。このあたりはプロデューサーのクリス・トーマス絡みですかね。そしてドラマティックな展開を見せる、構成力の妙を見せた5。この2曲はこのアルバムのベストトラック。バンドの歴史の中でも上位に入る名曲です。
アップル時代には見られなかったタフさを獲得し、バッドフィンガー完成型ともいえるこのアルバム、何故か期待通りには行かずに売り上げは悪く、その上メンバー脱退や色々なトラブルに巻き込まれリーダーのピート・ハムの自殺と言う衝撃的な事件を迎え、オリジナルメンバーでの時代は終焉。
その後再編されますが、今度はもう1人のオリジナルメンバー、トム・エバンスが自殺。呪われてます。
その後また再結成されます。しかし、確かに曲は良い曲あるけど、メインだった2人が居ないでこれを再結成と呼んで良いものか、う〜ん悩みます。
それはともかく、黄金期だけでなくこちらの時代にも光があたって欲しいですね。曲はこちらの方が完成度的には上だし。
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