INVISIBLE MAN

ANTHONY PHILLIPS BAND

1983年 イギリス

1. GOLDEN BODIES
2. THE WOMAN WERE WATCHING
3. TRACES
4. EXOCET
5. LOVE IN A HOT AIR BALLOON
6. GOING FOR BROKE
7. FALLING FOR LOVE
8. SALLY
9. I WANT YOUR HEART
10. GURU
11. IT'S NOT EASY
12. MY TIME HAS COME
13. TRAIL OF TEARS
14. THE BALLAD OF PENLEE
15. ALEX

 

 「一本筋が通った」アーティストも一回位は本人の自覚・無自覚に限らず道を外す事が多々あります。
 まぁ、大体はレコード会社の思惑やら時代の潮流やらによるポップ化っていうのが一般的な道の外し方です。でも、元々「一本筋が通った」人達だからそのポップ化に際しても妙な感じになるんですよね、それが又イイ味なんですよ。

 このアンソニー・フィリップス・バンド名義のアルバムの表主人公、アンソニー・フィリップスはジェネシスの初代ギタリスト。プログレバンドとして有名になる前に脱退しちゃいますが、その後音楽理論や作曲を学んだ後にソロに転向。中世的でアコースティックな響きを生かした作品や、独特のオーケストレーションの妙を発揮したインスト作品、それらを消化したこれもまた妙なポップ作品を多数発表、ギタリストだけではないオールラウンドなアーティストとして活動しています。
 そんな多作な彼の中でもこの作品は異質。なにせ本人曰く「レコード会社の戦略にのせられた」ですからね。その上なんか吹っ切れちゃった様なコンパクトなポップが展開されているとくりゃ、前述のアコースティックな響きを生かした作品や、インスト作品、牧歌的コンセプチュアルな作品を期待した人が聴くと

「ぶっちゃけありえな〜い(by美墨なぎさ)」

 TR-808を素直にリズムマシーンとして使っていたり(メチャチープ→妙に宅録っぽく聴こえるのがまたイイ味)シンセの使い方が平坦だったりするんだけど、そのせいか、サウンドの異様なポップさが抜群でアルバムのトーンが妙に明るく聴こえます。またさらに、彼のメロディの特徴である親しみやすさが明るさ、ポップさに拍車をかけています。そんなに異端視する程の作品かなぁ、レコード会社にのせられた割には本人もしっかり作ってます。
 まぁ、それが彼の人格なのでしょう。たとえ「レコード会社〜」があったとしても彼自身がオッケーしちゃったし、聴かせるには不出来なものは聴かせたくないとする 音楽に対しての彼の実直さを物語っています。そんなところもが彼の人気のひとつの要因です。

 で、裏の主人公がリチャード・スコットなる人物。この方が又、詳細不明でプログラミングとヴォーカルをちょっととっているだけでなんですよ(笑)。解説には「WHAM!のアンドリューみたいな存在だ」と酷い事を書かれていますが、それはアンドリューに対しても彼に対しても失礼でしょう。せめて坂本龍一の「左うでの夢」でのロビン・スコット位の働きはあるだろうと僕は言いたい!(ってそれ解りずらい?)