トーマト
TORMATO

YES

1978年 イギリス

1.a)輝く明日
FUTURE TIMES
b)歓喜
REJOICE
2. クジラに愛を
DON'T KILL THE WHALE
3. マドリガル
MADRIGAL
4. 自由の解放
RELEACE,RELEACE
5. UFOの到来
ARRIVING UFO
6. 天国のサーカス
CIRCUS OF HEAVEN
7.オンワード
 ONWARD
8. 自由の翼
ON THE SILENT WINGS OF FREEDOM


2004年リマスタ盤ボーナストラック
9. ABILENE
10. MONEY
11. PICASO
12. SOME ARE BORN
13. YOU CAN BE SAVED
14. HIGH
15. DAYS
16. COUNTRYSIDE
17. EVERYBODY'S SONG
あと秘密

 

 プログレ眼鏡をかけると「ポップ」過ぎてファンにはイマイチ「パッと」した評価がないこの「Tormato」。それまでの大作主義は鳴りを潜め、リズム隊を少しワイルドにして腰回りを軽くし、曲を10分以下(それでも長い?)に圧縮した結果、元々のメロディの良さが引き出され、結果的に明解になった点は僕の好きな所。
 
 前作「究極」が今までの集大成+新機軸だったのに対し、こちらではその新機軸、彼らなりのポップさをさらに発展させ、方向転換。2はイエス初の具体的なメッセージソング(当時の西欧の日本に対する偏見と誤解にも基づいた捕鯨批判もの←多分天然入ってるので本人達もあまり気にしてないのでは。キーボードのリック・ウエイクマンを除くと菜食主義者だしね)や、より直接的にロック的なモノを感じさせる4など、より外に開かれた(今までも開いてはいたのですが)様な印象を受けます。元々イエスは優秀なポップ/ロックバンドでもあるのですが、曲の引き延ばし方が尋常ではありませんでしたしね。
 陳腐とまで言い切る人もいる5,6曲目はジョン・アンダーソンの「思いつきでやっちゃいました」天然ポジティブが聴き取れて僕は好きなんだけどなぁ。特に5の宇宙人を声を模した妙なギタープレイは今までにはない斬新さ(笑)。
 ベースのクリス・スクワイア作7は内省的で控えめながらもアルバム内で光を放つ渾身の作品。全楽器がイエスにしては珍しく全員の自己主張を押さえ、曲想を高める事に集中。天にも昇る美しい昇華なんて言葉がとても似合う逸品。

 このアルバム(僕は大好きなのですが)全体的に非常にギターとキーボードのバランスが可笑しいんですよ、言い直せば「音数過剰」。
 前作から使用するギター&キーボードの種類が増え、音色も派手になってきました。特にキーボード、ポリ・ムーグとバイロトロンがその派手な音色を出す事に超貢献。音数が(ついでに言えば手数も)多い上に音色が派手じゃねぇ。
 ギターのスティーブ・ハウとキーボードのリック・ウエイクマン、彼らは楽器数を必要以上に(本人達には必要)使いたがる上、音を入れたがる傾向にあります、メンバー全員が「音入れ大会主賓」の印象があるイエスの作品群でも二人の貢献?度が目立ち、明るく派手な音色がポップさを醸し出してはいるのですが、ポップとしては過剰、曲はプログレ者だから何か変。
 その事がとても良く現れているのが8で、まぁひどい(褒め言葉)もんです。ある面、過剰すぎてバランスが取れているように聞こえる本末転倒な所がとても不思議。でも、この曲がなぜか一番以前のイエスらしく聴こえます。

 所謂プログレを期待して聴いていた当時の日英の真面目な人達には受けなかったのかなぁ。ちなみにアメリカでは評判が良かったらしいです。色んな意味で解りやすい(こ難しい人は「表面的」と解す)し、バラエティに富んでる事(こ難しい人は「散漫」と解す)も一因かと。
 僕みたいな後発ファンで面白がり(そんな人いるかなぁ?)にはとっても面白いんだけど。
 深遠なる世界ですか…、ふ〜ん。そんなポップな事は悪い事なのでしょうか?パンクとかの人達にも同じ様な風潮があります。イイじゃんポップになったって。
 貫き通すのも人間だけど、時代に合わせ変化していくのもまた人間。どちらも人間臭いんだから僕はイイと思います。けど、僕は「変化」を聴いていたいし、そんな部分に面白さが出るのではないかと。聴いてる方もそれが面白いのではないでしょうか。



 今回発売されたリマスタ盤はなぜかこの本作と次作「Drama」だけ日本盤がでません。それもまた「Tormato」の評価の表れなんでしょうね、哀しい事ですけど…。ボーナストラックは可もなく不可もなく、って感じですかね。13と15はジョン・アンダーソンの2枚目のソロに流用されています。この頃のジョンは多分にアコースティック、牧歌的なモノを自分に求めていたようで、その辺がバンドとの意見の違いに繋がって本作で脱退って運びになったのではないでしょうかね。