Tchaikovsky
"1812"Overture, Op.49
チャイコフスキー
大序曲「1812年」
シンシナティ交響楽団:エリック・カンセル指揮


 「作品の」よりも「録音の」評価が先に出ちゃってるのがここで紹介する本盤。まずは「録音の」に行くそのまえに曲の由来を(笑)。
 この大序曲1812年の「1812」はナポレオンがロシア侵攻の年。そのフランス軍のロシア侵攻〜ロシア軍の頑強な抵抗と飢えと寒さで敗退〜ロシアの勝利を描かれています。フランス国歌、ロシア国歌の明解な引用とメロディの良さでとても楽しく聴けるのですが、一番の売りは曲中の「大砲の発射」。初演のさいは実際に発射されたらしいです(ライブ盤なんかではテープ、シンセを使用したりしている場合もあります。)
 作曲家本人はこの作品にそれ程の思い入れは無いらしいのですが、そんな「やっつけ」のようにいい加減に作ったからかなぁ(想像)、あまり考えないで作ったからかも知れません(あくまで想像)、そのために逆に良い仕上がりになっちゃってわかりやすいし面白いから初演以来、一般的な人気は異常にある作品になってしまいました。浮世とは不条理なものです。

 本盤を製作した「テラーク」というレーベルは独自のデジタル録音で有名なレーベルで、この作品の一番の売りである「大砲の発射」音の録音に際し、現代の大砲でなく、あえて19世紀当時の大砲を使い、色々な弾頭を発射してデジタル録音したとの事。さらにロシアの勝利を告げる鐘の音も入れ、デジタル編集。良い感じで入ってるんですよ、ボコンボコンとガランガランが!実際に録音中に発射したかの様な上手い編集、そしてデジタル録音による臨場感。
 本盤以前は録音や編集が(なんとかしようと頑張っているものの)しょぼいモノが多かったので大砲の迫力が伝わってこなかったのが、ここではその迫力が見事に再現されています。ただ、その事のみがこの作品を製作した評価対象になっっちゃったりしてしまうのがちょみっと哀しい出来事。でもお茶受け盤としては最適です、ぜひ御一聴を。