江戸ポルカ

一青窈
作詞 一青窈
作・編曲 武部聡志
2003年 日本

c/w
夢なかば
生路〜MAZE


 

一青窈は歌謡曲の王道。

 江戸ポルカ、このタイトルをはじめに聞いた時に思ったのは「う〜ん、歌謡曲の匂い」。そして曲を聴いた時に思ったのは「う〜ん、歌謡曲!」

 まさにそうなのである。この作品は、ここ最近忘れ去られていた歌謡曲が昔持っていた匂いを香せる希有な作品なのである。
 戦前〜戦中〜戦後黄金期の歌謡曲と言えばまさに実験場。昔は「懐メロ」今は「昭和歌謡」として認知されていますが、日本古来のメロディラインに西洋のリズムを合わせたり、エキゾシズムを感じさせる東洋の旋律を合わせる事等が日常的に行われていた頃。
 その辺りの香りなんですよ、この曲の匂いは。我々日本人がDNAとして持っているメロディラインとポルカ(風←これがポイント)のリズム。それを一青窈が歌うというこの国際色豊かな戦略。様々なジャンルを消化し融合していく(これぞミクスチャー!)歌謡曲の凄みがこの曲から聴き取れます。(J-POPなるE電(超死語!)並に空虚なカテゴライズが「歌謡曲」にとって変わる頃にはそんなものはもう無くなっちゃいました)
 その上でアレンジが現代的な仕上がり。これですよ、歌謡曲が持つ底力。懐古に終わらない、新しい味を付け加えながら増殖していく力。僕が理想とする物に近い作品です。
 J-POPというその言葉に代表される方々の進化のない物や「永遠〜」とかの空虚な自分探しフレーズ(しかしこれもまた歌謡曲の一面)から一歩も二歩も素晴らしいこの作品。聴かねば損損!!

 そしてもう1つ、この曲を単なる昭和歌謡懐古に終わらせないのが一青窈の作詞能力の凄さ。歌詞の中に潜む、気持ちの良い前・後韻の踏み方と調の取り方、小粋な言葉遊びが秀逸の出来。

特に2番

まさか、七日
十日すぎたのか
つむじ曲がりかどに雷

図らずとも
あ・うんの抜き足
あなたこそが歌舞伎かおだち

 ホント言葉使いが上手いです、この人。ひとひねり、ふたひねり、変幻自在の魅力に引き込まれます。HIP-HOP的意味ありそうでちょっとあり、アティチュード押し付け歌詞や、今流行りのキテレツジャンル「昭和歌謡」では味わえない「粋な」魅力を体験してみて下さい。