新生会設立趣意書・日本コスモス会綱領 

 

 この趣意書は1951年当時、池田諭が起草したものであり、藤園塾の運営と同時に社会環境を教育的に向上させていこうという全体的な構想が描かれている。晩年、塾を再建しようとした時、まず「教育環境をつくりかえる会」を発足させたことにもうかがえるように池田諭の塾構想の骨子がここにある。
 また、『人間変革の思想』の中で書かれている「日本コスモス会」の綱領も掲載するが、内容は新生会綱領とほとんど同じであり、「日本コスモス会」設立の原案がこの趣意書であったと考えられる。

               1999年9月 池田諭の会

 

 

   新生会宣言

 人間の善意は過去より今日に至るまで、あらゆる角度立場から、人類の幸福、救済を目標とし健斗をつづけてきた。しかし現在私達がみる様に好ましい状態の出現はなお程遠く、かえってそれぞれの主義思想立場は相互に卑劣で愚かないがみあいをつづけて共に滅ぶ道を歩んでいるとも言えよう。ここに私達は人間のためのあらゆる主義思想立場が相互に協力して究極の人類救済の達成に真に効果的に生かされる様につとめたい。
 これを可能にする道は人間尊重相互理解教育実践であります。私達はまず自らこの道を歩みながらさらに一般に拡充してゆきたい。
 皆様の積極的参加と協力をお願い致します。

 

   新生会綱領

一、私達は現在のこの様な生活態度で、本当に自分を愛する道を歩んでいると言えようかと常に自問自答する徹底した自愛主義者である。
一、私達は、ありとあらゆるものは、全て人間のために存在するのであって、如何なるものも人間を奉仕させ、手段とすることを許さない人間中心主義者である。
一、私達は私だけでなく、私と同じく全ての人が生きようとしており、救いを求めていることを知って相共に進む同胞主義者である。
一、私達は全ての人が幸福にならない限りは、如何なる人の幸福も満足も崩壊する危険のあることを知って、一人の落伍者もなくする様につとめる博愛主義者である。
一、私達は如何なる特権意識も究極には自分を亡ぼすものであることを知って、それを打破し、育たないようにつとめる庶民主義者である。
一、私達は社会科学的思惟実践に立って、現実の人間の間に見い出される経済的、社会的、肉体的精神的不平等の状態を打破するようにつとめる平等主義者である。
一、私達は戦争の原因である人類の偏見をなくするために、強力かつ広範囲な啓蒙運動を展開する徹底した平和主義者である。
一、私達は人類歴史の進歩に無知な人達が進歩と発展を阻み、愚劣な斗争の根源となることを知って、進歩的発展的思惟実践の態度を一般に普及してゆく進歩主義者である。                                               

 

   新生会会則

第一条 本会を新生会と称す。
第二条 本会事務所を山口県徳山市徳山公園に置く。
第三条 本会は宣言綱領の達成に邁進することを目的とす。
第四条 会員は本会の趣旨に賛同するものも以て充当する。
第五条 本会は会長一、副会長、部長各一、を置く。
第六条 会長は本会を代表し、会務を統べる、副会長は会長を補佐し、会長事故ある時は会務を代行する。
第七条 役員は全て無給とする。
第八条 指導相談を仰ぐため、顧問若干を委嘱する。
第九条 本会は各府県に支部を設け各府県支部は各地方支部を置く。
第十条 本会の維持は会費による。会費は会員月収の500分の1とす。
第十一条 本会の会計報告は毎年4月5日とす。
                             

 

   機構並びに活動方針

一、教育部
 左の趣旨の人間教育所、教育研修所教育講座を各地に設立開催し教育の充実普及をはかる。

 (1)人間教育所(青少年対象)
イ 普遍的本質的目標
◆絶えず現代最高の叡智を求めて、真摯かつ謙虚に、全ての人、全ての物を自己の師として、自己批判と自己否定を通じて、死の瞬間まで主体的探究を念々に進めてゆく人。
◆自己と家庭と職場と郷土と祖国と世界と宇宙を一如的に把握し、心と言葉、日常性と思想性を諸生活の実践追求の中に自主的に体得する人。
◆美しき伝統に育まれ、歴史の生命を呼吸しながら、無限の発展性将来性を持つ歴史の流れの中に棹して、現代の課題とその解決策を適確に把握し、更に新しい歴史と伝統を創造形成する人。
◆独自無双の個性の自覚的成長が同時に全ての物を包含して、それに所を与え生かすことの出来る人、更にはその様な生活の中に生き甲斐と生きる喜びを味わい得る人。
ロ 具体的現実的目標
現代日本の直面する問題と真剣に取り組みその一歩解決に忍耐強く直往する人。

 (2)教育研修所(教育者対象)
イ 各国教育学の研究を通して日本教育の確立をきする。
ロ 現代日本の直面している諸問題(人口過剰、資源の貧弱、食糧不足、失業、社会矛盾、精神的奴隷性等)と取り組み、その解決を可能にする教育の確立。
ハ 教育の成否は教育者その人にある以上、教育者自己研修の道を開く。

 (3)教育講座
イ 教育成否は教育家、教育学者、教育行政官の綜合的研究統一的施策に加えて、父兄、教師、社会人の三位一体的協力の如何にあることを知って、社会全体を教育的に再構成する様つとめる。

二、宗教部
1 現代宗教の閉鎖的排他的性格をなくして宗教の本質使命にめざめる様つとめる。
2 一部の独占物となっている宗教を庶民のものとして道を開く。
3 現状の宗教から生まれた一般の宗教そのものへの誤解をとくにつとめると共に、従来のともすれば陥り勝ちな安易な自己肯定消極的逃避的態度を排して、積極的救済の道を進む。

三、芸術部
1 芸術理論から芸術生活の創造実現に進む。
2 芸術心の育成培養につとめる。
3 庶民芸術の創造育成につとめる。

四、社会科学部
1 正しい社会科学概念の把握普及。
2 私達身近に直面する問題の解決の道を社会科学的に究明し、その解決に進む。
3 実践のための批判精神を徹底的に育成してゆく。

五、自然科学部
1 自然科学概念の正しい理解普及。
2 科学は人類の平和的発展のためのものであって、他に何物もないことを理解し一般に普及する。
3 生活水準向上の為に生活面の工夫改善及び科学理念の具体化につとめる。

六、編集部
1 雑誌「大地」年四回人間教育所、藤園塾刊行。
主として高校生を対象とする啓蒙雑誌特に人間教育の指針となるもの。
2 雑誌「若竹」刊行予定。
一般を対象とし、現実の諸問題解決の指針となるもの、暫定的には「大地」に含む。
3 会報 毎月発行、会員に無料配布。
会員相互の連絡、会の動向、その他、他の団体の動向、簡単な時局解説。

七、渉外部
他の学会、研究会、各種団体と密接に連絡をとりながら、相互理解の道を推進する。

八、事業部
各種研究会、講演会、展示会を定期的に開催。

九、会計部                                     

 

 

日本コスモス会綱領

 

1、私達は現在の此の様な生活で本当に自分を愛する道を歩んでいると言えようかと自問自答する。
2、私達はあらゆる主義思想国家が全て人間の為に存在することを信じ、それらの為に人間を手段にしない。
3、私達は自分だけでなく自分と同じく全ての人が生きようとし、救いを求めていることを知って相共に進む。
4、私達は全ての人が幸福にならない限り、如何なる人の幸福も崩壊する可能性のあることを知って、一人の落伍者もなくする様につとめる。
5、私達は現実の人間の間にある経済的社会的肉体的精神的不平等の状態を打破する為に特に社会科学的思惟実践につとめる
6、私達はいかなる特権意識も窮極には自分を亡ぼすものであるから其れを打破し育たないようにつとめる。
7、私達は戦争の原因である人類の偏見をなくするようにつとめる
8、私達は歴史の進歩に暗い人達が進歩と発展を阻み、愚劣な斗争の基をなしているので進歩的発展的思惟実践の態度を一般にひろめる。

 

 

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