花紀行 雨竜沼湿原への路 (続報)


佐々木 純一


《湿原概況》

春先の融雪期4月・5月にかけての低温・降雪により山間部は雪解けが遅れ、平年だと沼明けする6月初め、湿原全体が60〜100cm位の雪で覆われ、ほんの一部が顔を出している状態でした。6月23日でも登山道・水場付近は雪渓が残り、湧水が下を流れ、トンネル状となり、湿原内もシャーベット状の氷で塞がっている池塘が多く、ショウジョウバカマ、エゾイチゲが満開、例年だと葉が目立つミズバショウが小沢沿いに見事な群落曲線を描いていた。

7月7日ですら、展望台下の登山道は残雪が50〜60cmの厚さで残り、暑寒別岳の雪渓は8月末日まで残っていたほどでした。

《開花状況》

登山道は7月中旬までは約10日遅れ、8月になって平年の状況に戻る。湿原内は当初約3週間位の遅れでしたが、7月中旬から約10日遅れとなりましたがエゾカンゾウなど高茎植物は総体的に花数・草丈も低く、全体に寂しい湿原でした。コバイケイソウはほとんど開花しない状況です。例外的にセリ科植物だけは生育が良かった。

水生植物は開花期こそ大幅にずれ、オゼコオホネなどは水温が低かった為でしょうか、芽出しが遅かった分、9月になっても順次開花し、8月より立派な状態です。他の水生植物もその傾向にありました。今年の花時計は狂いっぱなしでした。

昨年の植物リストに加え、今年新たに確認した植物を記述します。今年は登山道の下草刈りを実施しなかったため、より林床植物が開花・結実し、不要な草刈りはしないで「ササの伐採だけを」と仲間達と希望していましたがその結果は、はからずしも予想通りでした。

今回は登山道途中の白竜の滝・岩壁、周辺の花を別枠にて紹介します。滝は高さ25m、周辺岩壁は恵岱岳玄武岩、安山岩が露出しており柱状節理を形成し、雨竜沼湿原基底岩盤となっている火山噴出岩です。登山道では見られない特異な植物相となっている。ただし、滝壺周辺にはマムシも生息していますのでご注意ください。

今年の調査も昨年同様イネ科、カヤツリグサ科、シダ類など同定できない種が多く、非力を痛感し、ご了承ください。

尚、昨年モメンズル(マメ科)と報告したのはイワオウギの誤りでした。ここに謹んでお詫びと訂正をいたします。

     (調査期日 '96. 6/8. 6/23. 7/7. 7/14. 7/20. 7/27. 8/4. 8/11. 8/14. 8/25.

              8/29. 9/4. 9/8.)

  登山路(南暑寒荘〜湿原入り口)
科  名
植  物  名
科  名
植  物  名
アカネツルアリドオシ ランハクサンチドリ ネジバナ
マメイワオウギ ミヤケラン エゾスズラン
アブラナエゾノイワハタザオ イネミヤマドジョウツナギ
スミレキバナノコマノツメ ユリクルマユリ
バラシウリザクラ ヒカゲノカズラマンネンスギ
キンポウゲアカミノルイヨウショウマ

オオカラマツ

白竜の滝・岩壁および周辺
科  名
植  物  名
科  名
植  物  名
キクアサギリソウ ベンケイソウイワベンケイ
シソミソガワソウ ミツバベンケイソウ
ミソハギエゾミソハギ キンポウゲミヤマオダマキ
マメイワオウギ ヤブマメ タデタニソバ
バライワキンバイ イラクサアカソ
ユキノシタエゾノクロクモソウ

ヤマハナソウ

ダイモンジソウ

エゾウメバチソウ

ユリクロミノイワゼキショウ
ヒカゲノカズラ ヒメスギラン

雨竜沼湿原
科  名
植  物  名
科  名
植  物  名
アカネエゾノヨツバムグラ イネミヤマドジョウツナギ
スミレタニマスミレ ミヤマイヌノハナヒゲ
バラクロバナロウゲ ユリオオバタケシマラン
スイレンネムロコオホネ ヒカゲノカズラヤチスギラン

展望台(標高890m 南暑寒岳登り口〜展望台)
科  名
植  物  名
アブラナミヤマタネツケバナ
イチヤクソウギンリョウソウ
ランコイチヨウラン



ボタニカ13号

北海道植物友の会