第１８回定例講演会（平成５年１２月１８日）講演要旨

身近に見られる薬草

（民間薬としての使い方）

道川　冨美子

　次に、気になることの多い胃腸と呼吸器に関係のある薬草、それに滋養強壮の働きのある薬草を表にしてみました。書き出したのは観察会で見られる植物がほとんどで、あとは北海道で簡単に見られるものと普通に庭に植えられているものだけを選びました。

(1)消化器関係の薬草

植物名	薬用部分	生薬名	主な薬効
ゲンノショウコ	全草	牛扁草	整腸作用（温かくして−下痢に、冷まして−便秘に）薬湯−冷え症
キンミズヒキ	全草	仙鶴草	下痢止め・整腸・健胃、止血（鼻血・血尿など）、強壮、抗癌
クズ	根	葛根	下痢止め、口・のどの渇き、解熱、頭痛、肩こり
オトギリソウ	全草	弟切草	胃炎・胃カイヨウ・十二指腸カイヨウ、傷などの止血、生理不順、神経痛
（エゾ）リンドウ	根	竜胆	健胃・胃炎・黄疸、消炎（のど、膀胱など）、皮膚炎、頭痛
エゾエンゴサク	塊茎	延胡索	胃痛・腹痛、生理痛、打撲による痛み
（ヤマ）シャクヤク	根	芍薬	腹痛・腹のはり、筋肉痛・筋肉の痙攣、貧血、生理痛
ホオノキ	樹皮	厚朴	腹のはり・下痢止め、去痰・咳止め
（エゾ）ヨモギ	葉	艾葉	健胃・冷えによる腹痛、貧血、止血（痔など）　薬湯−冷え症、腹痛
タンポポの類	根	蒲公英	健胃・胃炎・胃カイヨウ、乳腺炎・腫れ物、目の充血、排尿痛
ヒシ	実	菱実	健胃、滋養強壮、抗癌（特に胃腸の）
サンショウ	果皮	山椒	健胃・冷えによる腹痛、むくみ
クロバナヒキオコシ	全草	延命草	健胃・胃炎・腹痛
アキカラマツ	全草	高遠草	健胃
タラノキ	根皮・枝	堯木	健胃、糖尿病、むくみ
ニガキ	木部	苦木	健胃・食欲不振・消化不良・胃炎・胃痛
クマザサ他	葉	熊笹	健胃、糖尿病、アレルギー体質、喘息、高血圧
カワミドリ	全草	槇香	健胃・吐き気・腹のはり、解熱、頭痛
ハッカ	全草	薄荷	健胃、解熱・発汗、精神安定
クマヤナギ	枝・葉	熊柳	胆石、健胃・整腸
アサ	種子	麻子仁	便秘、咳止め
ノイバラ	実	栄実	便秘、むくみ、腫れ物・ニキビ
ドクダミ	全草	十薬	便秘、むくみ、腫れ物・ニキビ、蓄膿・鼻炎、高血圧、膀胱炎
イタドリ	根	虎杖根	便秘、健胃、腫れ物、神経痛
モモ	花	白桃花	便秘、むくみ、脚気

(2)呼吸器関係の薬草

植物名	薬用部分	生薬名	主な薬効
オオバコ	全草	車前草	咳止め、むくみ、健胃、強壮
	種子	車前子	咳止め、むくみ、消炎（膀胱炎、前立腺炎など）、目の充血
オニユリ	燐茎	百合	咳止め、解熱、口・のどの渇き、精神安定
フキタンポポ	蕾	款冬花	咳止め・去痰・呼吸困難、のどの腫れ
アンズ	種子	杏仁	咳止め・呼吸困難、便秘
サクラの類	樹皮	桜皮	咳止め、腫れ物
キキョウ	根	桔梗	去痰・痰をともなう咳、のどの腫れ、腫れ物
ツリガネニンジン	根	沙参	去痰・痰をともなう咳、健胃、強壮
ハマボウフウ	根	浜防風	去痰・呼吸困難、口・のどの渇き 薬湯−湯冷めしない
ツユクサ	全草	跖草	解熱、のどの腫れ・痛み、むくみ、膀胱炎、下痢止め
（エゾ）ニワトコ	枝	接骨木	発汗・解熱、むくみ、骨折、打ち身、ねんざ 薬湯−神経痛・リュウマチ
シソ	葉	蘇葉	発汗・解熱、食中毒、精神安定
	種子	蘇子	発汗・解熱、咳止め、むくみ
ナギナタコウジュ	全葉	香需	発汗・解熱、むくみ
ヤマグワ	葉	桑葉	解熱・呼吸困難・咳止め、口・のどの渇き
	根皮	桑白皮	解熱・呼吸困難、むくみ、高血圧
（キタ）コブシ	蕾	辛夷	蓄膿・鼻炎、頭痛・歯痛
オナモミ	実	蒼耳子	蓄膿・鼻炎、解熱、頭痛

(3)健康増進・滋養強壮・強精作用のある薬草

植物名	薬用部分	生薬名	主な薬効
チョウセンゴミシ	実	五味子	疲労回復、滋養強壮（慢性の咳・呼吸困難・多汗・頻尿・口渇・下痢）
ヤマグワ	実	桑椹子	疲労回復、滋養強壮（貧血・めまい・目のかすみ・口渇・早期白髪）
アマドコロ	根茎	玉竹	疲労回復、滋養強壮（慢性の咳や痰・口渇・のどの痛み）
ナルコユリ	根茎	黄精	疲労回復、滋養強壮、強精（食欲不振・足腰のだるさ・頭のふらつき）
イカリソウの類	全草	淫羊槇	滋養強壮、強精（不妊症・足腰のだるさ・頻尿・関節痛）
ツルドクダミ	塊根	可首烏	滋養強壮、強精（早期白髪・足腰のだるさ）、便秘・整腸
ナガイモ・ヤマノイモ	塊根	山薬	滋養強壮（下痢・食欲不振・足腰のだるさ・頻尿）
マタタビ	虫こぶ	木天蓼	滋養強壮（神経痛・腰痛・足腰のだるさ）、冷え症、ネコの万病薬
ネナシカズラ	種子	兎絲子	強精、めまい、目のかすみ
アマチャヅル	全草		疲労回復、咳止め、早期白髪、胃弱
エゾウコギ	根・枝	刺五加	疲労回復、滋養強壮（足腰のだるさ・神経痛）
クコ	実	枸杞子	疲労回復、滋養強壮（目の疲れ・目の充血・視力低下）
	葉	枸杞茶	滋養強壮のお茶がわり、高血圧

●採集時の注意

• 誤った植物を採らないように、まず確認すること。類似植物、有毒植物に注意。
• 目的の部分はどこかを考えて、不要分まで取らない。
• 根絶しないように、必ず残すこと。
• 適切な採集時期をのがさないこと。
  • 全草（地上部分）……開花時
  • 葉・樹皮……成長の盛んな時
  • 果実……種類によって成熟期、未熟期
  • 根、塊茎、鱗茎……休眠期

　生薬は生のまま使う事はめったになく、乾燥し使いやすい大きさに刻んだり砕いたりして保存しておきます。乾燥することで、

• 長期保存がきく
• 遠くのものも手に入れる事ができる
• 中に含まれる成分の変化が少なくなる

という利点が指摘されています。

●薬草の保管

　茶筒・空き缶や厚手の紙袋に入れ、直射日光のあたらない風通しのよい乾燥した場所に置くのが理想的です。