梅の便り(ツグミ)

 2月、慌ただしい月が始まった。日々、新聞の天気予報欄、梅便り欄を睨みながら、さて週末はどこにでかけようと悩むことになる。仕事をしていても、寒い日はああ山は雪だなと思い、暖かい日は梅が咲いたろうなと思う。

 待ち侘びて週末、雪が降れば山へ走って雪景色の中の小鳥を撮影し、天気が良ければ梅林に出掛けて梅と鳥の組み合わせを狙う。雪の撮影は寒いけれど誰にも干渉されることがなくて良いのだが、梅はというと、これが意外に大変。普通の公園の梅林に撮影に行くことが多く、梅を見に行ったのか人を見に行ったのか分からない程、次から次に梅見客が集まってくるのだ。鳥が来た、と思ってレンズを向けても人が横切ったり、鳥が驚いて逃げてしまったり、揚げ句、まだ寒いのに無理やり宴会が始まったりして、そうなるともう落ち着いて鳥を撮るどころではない。ひとごみをかきわけかきわけ、逃げ出す羽目になる。

 ところが、何年も続けて同じテーマを追っていると、梅がまだちらほら咲きの時期の早朝なら、梅見客もまばらでじっくり鳥を待つことができる、おおこれは素晴らしい、ということが分かってくる。分かってはくるのだが、朝は寒くて身体がなかなか言うことをきかないのだ。結局お昼近くに現地に到着、人と人の隙間からスミマセン、スミマセン、お邪魔しますね、スミマセンと遠慮がちにカメラを構え、腰の引けた写真を撮って逃げ帰ってくるのが落ちなのでした。
                                 (紀の国 1994.2)
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