シジュウカラ  1992年4月12日(日) 雨のち晴

 午前中カワセミを撮影しようと一庫の河原にブラインドを張ってねばったがあいにくの雨で撮影を断念。見切りをつけて、ちょっと遅れた花見でもしようと能勢妙見山に車を走らせた。妙見山は大阪府の北部に位置し、週末は妙見宮の参拝者やハイカーで賑わう里山で、鳥や獣が多く生息し四季折々の姿を楽しむことができる。

 早速カメラを手にリフト乗り場近くの桜の広場に足を運んだ。幸い雨はやみ、薄日がさしてきている。桜はびっくりする程の満開。さてどの木にするか、まずは品定め。花の立派なソメイヨシノは小鳥と組み合わせたらちょっと鳥の方が見劣りするだろうから、花の小さな種類の方がいいだろう、よしこれだ。後は鳥の出現を待つのみ。三脚を据えて腰を地べたにおろす。 
 天気はどんどん回復してきた。やわらかい陽射しを浴びた桜の花が風に揺れる。そういえば朝飯も昼飯も食べてないけど、これも毎度のことだ。鳥を見始めたら空腹も苦にならない。三度の飯より…というやつか。でも晩御飯だけは食べよう。今日は何にしようかしらん。ラーメン、ギョーザ、ブツブツブツ。それにしてもポカポカしてきて気持ちよくなってきた。もう鳥が出てきてもこなくてもどっちでもいいや。

 腰をおろしてかれこれ2時間。さて、またカワセミでも見に行くかと立ち上がった時、数少ない花見グループのそれでも賑やかな声に混じって、谷のむこうから小鳥達の声が聞こえてきた。やっと来た来た。「ツツピーツツピー。」シジュウカラ。「ギー。」コゲラ。御馴染みの顔が僕の選んだ桜を舞台に遊び始めた。「サンキューサンキュー。ありがとう。」とブツブツつぶやきながら、今日初めてのシャッターを切った。
                                  (紀の国 1993.4)

      

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