質問の機会を得ましたので、大綱3点について質問いたします。
1.まず最初は、新学習指導要領についてです。
2008年、文部科学省は、戦後8回目となる小中学校の学習指導要領改訂を公示しました。新学習指導要領は、小学校では今年度から、中学校では4月の新年度から完全実施されます。
前回2002年の改訂では、いわゆる「ゆとり教育」が打ち出され、授業時数が大幅に削減され、学校完全週5日制が実施されました。しかし、その結果、学力低下が指摘され、既に2006年からゆとり路線の転換が進められてきました。
教育課程審議会会長であった三浦朱門氏は、「できん者はできんままで結構」、「非才は実直な精神だけ養っておくべし」と発言し、格差を肯定したのです。
その後、公立校、私立校の学力格差が拡大し、学習塾や予備校に通わないと高い学力が身につかないという保護者の不安を生み出しました。まず、現在の学習指導要領に基づくこの10年の江東区の教育について評価を伺います。
文部科学省によれば、新しい学習指導要領は、こどもたちの現状を踏まえ、「生きる力」をはぐくむという理念のもと、知識や技能の習得とともに、思考力、判
断力、表現力などの育成を重視しています。これからの教育は、「ゆとり」でも「詰め込み」でもありませんとうたっています。
この改訂では、30
年ぶりに授業時数と教科内容がふえています。小学校は、国語、社会、算数、理科、体育の授業時数が約10%増加、低学年で週2コマ、中高学年で週1コマふ
えました。中学校では、主要5教科と保健体育が実質10%程度増加、各学年で週1コマの増加となっています。
ゆとり教育で削減された分がほぼ復
活しただけでなく、さらに増加した内容もあります。現在は週5日になった授業日数で身につけさせなければなりません。授業についていけないこどもたちをふ
やさないためには、先生方がこどもたちに向き合い、学習に集中できる時間を十分確保することが求められます。土曜日の授業についての検討を含め、授業時数
増加に対する江東区の対応を伺います。
また、詳細な事項は扱わないとしたいわゆる「はどめ規定」が削除されました。はどめ規定は、「何々は扱わない」、「何々には深入りしない」といった文言で、学習基準を限定する規定です。
はどめ規定の廃止により、英語では単語数が900語から1,200語以上になり、高度の文法や長文もふえます。数学は発展的内容とされていたものが復活し
ました。理科は、削減された内容が復活、教科書のボリュームが大幅にアップしています。地理、歴史は取り扱う範囲が拡大・深化しています。
はど
め規定の廃止は、新学習指導要領改訂の重要なポイントです。これまでスタンダードとしてとらえられていた学習指導要領は、今後は最低基準として位置づけら
れたことになります。公教育における平等教育の考え方が後退し、できる生徒にはもっと高度な学習を施すことが許容される、いわば競争教育がさらに肯定され
たと言えます。
現在、経済格差による教育格差が深刻化する中、この学習指導要領の改訂には十分な対応をしないと格差を広げることにつながりま
す。学力の二極化の進行をとどめるために、また、経済的困難を抱える家庭のこどもたちの学力養成や進学のために、教育委員会と区が連携し、教育的、福祉的
対応が必要だと考えますが、当局の見解を伺います。
さらに、新学習指導要領では、中学校の体育で武道が必修化されました。先日のニュースによると、66%の学校では柔道を選ぶと報道されました。しかし、学校柔道では多くの深刻な事故が起こっています。
独立行政法人日本スポーツ振興センターの資料によれば、1983年度から2010年度の28年間で、17歳以下のこどもが114人、部活動や体育の柔道で
死亡しています。また、295人が重傷を負ったそうです。他のスポーツに比べ、10万人当たりの死亡率は飛び抜けて多くなっています。
2月6日のNHK「クローズアップ現代」では、「必修化は大丈夫か 多発する柔道事故」と題して、学校柔道必修化の問題を取り上げました。頭部への深刻な事故が大変多いこと、指導する教員の多くが柔道の素人であり、安全指導や技術が不十分であることなどです。
受け身だけを教えればいいという意見もありますが、受け身だけでも死亡事故は起こっています。柔道未経験の教員が短期間の講習だけで柔道を指導することは大変危険です。江東区在住の脳外科の専門医が、学校関係者と一緒に検討する必要があると懸念していました。
また、衆議院会館で開かれた柔道死亡事故についての勉強会で、柔道事故が多い理由として、しごき文化の蔓延、指導者のスポーツ医学知識の欠如が医師から指
摘されました。生徒の安全を最優先にした指導体制を組むべきと思います。柔道というスポーツの特性を十分理解している専門家を配置すべきではないでしょう
か。区教育委員会はどのような指導体制を考えているのか、安全配慮は十分にできるのか、また保護者の不安の声はないか、伺います。
2.次に、第5期介護保険事業計画について伺います。
1月下旬、国は第5期の介護保険の報酬や新しいサービスを発表しました。全体的に施設から在宅へ、軽度から中・重度の方へというサービスの重点化が見てと
れます。そして、2006年の改正以来、利用抑制傾向がとどまっていないことに危惧を感じます。江東区も、この改定を踏まえた高齢者保健福祉計画・介護保
険事業計画を策定していますが、第5期計画について、何点か問題点を申し上げ、区の見解を伺います。
まず、介護職員処遇改善加算についてです。
3年間継続した処遇改善交付金が今年度末で終了し、加算に変更されます。この3年間で約4,000億円の交付金が税金から投入され、職員の待遇改善に一定
の効果があったのですが、第5期では、その分が介護報酬に含まれます。江東区では保険料への影響がどれくらいになるのでしょうか。介護労働者の処遇改善効
果はどれぐらいと見込んでいますか。
また、介護労働者の離職率は相変わらず高く、ヘルパーさんも施設職員も過酷な労働を強いられています。
先日、神戸の老人ホームでの入居者に対する虐待が報じられました。虐待は許すことはできませんが、虐待を生む介護労働者の過酷な労働実態を改善しなければ、同じ事件が起こります。自治体として高齢者虐待防止と処遇改善にどう取り組むのか、お聞かせください。
今回の改正に当たり、社会保障審議会介護保険部会で「地域包括ケアシステム」構想が示されました。その構想に基づき、国及び自治体は、日常生活圏域内にお
いて、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される体制の整備を確立することが急務とされました。
「地域包括ケアシステム」は住民にとっては理想的な構想ですが、介護の現場からは妄想ではないかという声が出ています。地域包括ケアの構想に基づき、定期
巡回・随時対応型訪問介護看護と複合サービスが追加されました。今までも夜間対応型訪問介護は実施されていますが、現在の江東区の実績は37人です。利用
者が伸びない理由はどこにあるのでしょうか。
国の会計検査院は、夜間対応型訪問介護について、7割の事業者が低調で事業効果が十分でないとし
て、厚生労働省に改善を求めています。新しいサービスは、夜間対応型にさらに医療系サービスを組み合わせるもので、一層事業者の参入が難しいことと思いま
す。江東区での見通しはどのようなものでしょうか、伺います。
第5期改定で最も問題があり利用者に影響するのは、ホームヘルプサービスの短時間
化です。ホームヘルプサービスは、江東区でも大変利用者の多いサービスです。それが身体介護に20分未満が新設されました。日中利用できるのは要介護3か
ら5の方で、提供する事業所には多くの条件が付されています。
生活援助サービスは、現在、30分以上60分未満が229単位、60分以上が
291単位となっています。新しい時間は、45分未満が190単位と大きく報酬単価が減らされ、45分以上は235単位で、60分を超えるとマイナス56
単位になるそうです。60分以上はサービスするなということでしょうか。
生活援助サービスは高齢者の自宅での暮らしを支えています。2006年の介護報酬改定以降、同居家族がいる場合は生活援助を認めないという機械的な判断がふえ、高齢者、家族双方に負担をふやすことになっています。
2011年度、介護事業経営実態調査結果の速報値によれば、身体介護の1回平均利用時間は約40分、生活援助は70分になっています。この改定は、現実を無視した机上の空論で、窮地に立たされる高齢者と家族が増加するでしょう。江東区のヘルパー利用の時間を伺います。
3.3つ目は、江東区男女共同参画についてです。
江東区の男女共同参画条例の前文には、「江東区は、日本国憲法のうたう人権と平和の尊重を区の基本理念とし、男女共同参画社会づくりに積極的に取り組んで
きた。しかし、性別による固定的な役割分担意識など、いまだ根強く、男女の個人としての能力の発揮や活動の選択を制限するものがあり、これらの解消には、
なお一層の努力が求められている。」とうたい、条例第8条に基づいて、毎年、男女共同参画の進捗状況報告書をつくっています。
昨年9月の平成22年度版に基づいて何点か伺います。
男女平等社会の風土づくりとして、社会制度や慣行を見直す力の養成という施策が挙げられています。しかし、その事業として「年金制度・税制等の公的制度に
関する学習」、「男女平等の視点にたった民法をはじめとする法律に関する学習事業」が実施されていません。制度や法律は最も重要な社会の枠組みです。それ
らを学ぶことは男女共同参画を進める力になります。せっかく施策に掲げておきながら実施せずというのは残念なことです。今後の取り組みを強く求めたいと思
いますが、区の見解をお聞かせください。
また、相変わらず中学校での男女混合名簿実施が1校もありませんが、その理由と今後の対応をお聞きいたします。
また、「あらゆる暴力の根絶」は、江東区の男女共同参画の中で重点プランとなっています。中でも、女性に対する暴力は増加を続けています。DVやそれに連なるさまざまな相談、一時保護、支援、生活再建などを担っているのが婦人相談員です。
事務概説によれば、婦人相談の件数は、2008年が1,112件で、昨年2011年は1,834件、3年で1.65倍と急増しています。江東区では、ずっ
と婦人相談員は非常勤2名体制です。しかし、1人平均900件以上の相談を受け、対応するのは限界を超えているのではないでしょうか。
また、婦人相談は水曜日が休みとなっていますが、DV対応は緊急を要する場合も往々にしてあります。婦人相談員をふやし、十分な対応ができる人員配置を求めますが、区の見解を伺います。
さらに、配偶者暴力相談支援センターについて、23区では港区と板橋区が設置していますが、江東区ではどのような検討をしているのか伺って、質問を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。