市民の声・江東を代表して、大綱2点について伺います。
1.まず、2011年度予算における指定管理者制度と職員配置についてです。
江東区では、1997年から今年度までで1,100人を超える職員を削減してきました。その間、江東区の人口は、1997年の36万8,000人から
2010年は46万6,000人と、10万人も増加しています。それに伴って当然行政サービスの量は増加し、また、社会経済状況の変化によって行政サービ
スの種類もふえています。定員適正化計画の名のもとに、ひたすら正規職員を減らしてきた13年間ですが、このままでは区民サービスの低下を招き、一部の職
員に過度な負担が押し寄せる事態を招くのではないでしょうか。住民福祉の向上という自治体の責務を果たすべきという観点から、以下、質問をいたします。
まず、江東区の指定管理者制度について伺います。
江東区は、2004年に策定したアウトソーシング基本方針に基づき、指定管理者の選定を進めてきました。昨年の4月1日現在、116施設が指定管理者に任されています。
昨年の12月28日、総務省は助言という形で、「指定管理者制度の運用について」という通知を出しました。そこには、近年、指定管理者が管理する施設で死
亡事故が相次いだことなどを受け、安全確保に十分配慮すること、労働法令の遵守や雇用、労働条件への適切な配慮などを自治体に要請しています。
その後、1月5日に、片山総務大臣が記者会見で、指定管理者制度について補足の発言をしています。大臣は、「年末の通知は指定管理者をめぐる誤解や理解不
足を解く趣旨で出した。この制度が導入されてから自治体の利用状況を見ると、行政サービスの質の向上よりコストカットのツールとして使ってきた嫌いがあ
る。自治体は内部では非正規化をどんどん進め、なおかつアウトソースを通じて、官製ワーキングプアを大量につくってしまったという自覚と反省は必要だろ
う。」と述べています。大変重大な指摘だと思います。
さらに、「集中改革プランという法的根拠のない仕組みを全国に強いてきたが解除する。自治体では、業務と職員のバランスはみずから考えて定数管理などをやっていただきたい。」ともつけ加えました。また、例として図書館は直営が望ましいとしています。
区の長期計画の中では、新規事業や施設に関する業務は積極的にアウトソーシングを取り入れるとして、福祉会館、児童館、保育所、図書館などを挙げています。本来、指定管理者制度になじまない施設まで指定を進めているのではないでしょうか。
板橋区は、平成21年9月に、指定管理者制度の運用に関する指針を策定し、適正な人件費総額をあらかじめ区側が積算し、公募の際に示すようにしました。板
橋区政策企画課は、「官製ワーキングプアが問題視される中、対策が必要だと判断した」と報道にあります。まず、この通知と片山総務大臣の発言について区は
どう受けとめたのか、新年度予算にどのように反映させたのか、伺いたいと思います。
2.次に、生活保護のケースワーカーについて伺います。
現在、江東区のケースワーカーは、件数で言うと1人当たり約102件を担当しています。2000年の社会福祉法改正で、生活保護に係る職員1人当たりの担
当件数80件という基準が「法定数」から「標準」に変わりましたので、違法ではありませんが異常な状態と言わざるを得ません。
昨年末の被保護世
帯は6,279世帯となり、1年前に比べて719世帯、約13%も増加しています。また、毎年のように職員で健康を損なう人が出ていると聞いています。お
隣の江戸川区は、今年度36人増員し、生活援護第三課を新設しました。墨田区も、2けたの職員増をしたそうです。江東区でも、保護課職員の増員を求めます
けれども、区の見解を伺います。
2点目は、江東区の子育て支援についてです。
今国会で法案が上程される予定の「子ども・子育て新シス
テム」について伺います。昨年6月に政府が発表した「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」に基づき、内閣府のもとで、幼保一体化について議論がさ
れてきました。新システムは、全国的に保育園の待機児童の解消が進まず、一方で、少子化により幼稚園の入園児童が減っていることを受けて策定されました。
当初の予定からはおくれて6月に法案上程と聞いています。
この新システムは、幼稚園、保育園、認定こども園の垣根を取り払い、幼児教育と保育を
ともに提供するこども園に一体化し、財源も一体給付する内容になっています。自治体に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、自治体の意見の聴取や課題の把握
が不十分なまま議論が進んでいるように思います。
また、2006年に創設され、全国で500カ所以上ある認定こども園ですが、当初、国が考えて
いた2,000カ所には遠く及ばず、その現状や課題の検証が不十分なまま新システムが提案されています。ある区の認定こども園の園長さんは、「はしごを外
されたようだ」とおっしゃっていました。
江東区は4月から、グランチャ東雲で初めての幼保連携型認定こども園をスタートさせますが、2013年から実施予定の新しいこども園との整合性について、どう認識しているか、お伺いいたします。
1月24日の新システム検討会議の作業部会は、幼保一体化の最終案を公表しました。それによると、幼保2つの機能を持つこども園を創設する一方、既存の保
育所はゼロ歳から2歳児専用の乳児保育所のような施設に変え、幼稚園は現状のまま維持するとなっています。区市町村は、各家庭の保育と幼児教育の需要を把
握し、それに基づいて事業計画を策定して、需要に見合う3施設を整備するとされました。
保護者の費用負担についても示されています。現在、認可
保育所は公定価格、幼稚園の多くは自由価格になっています。こども園は公定価格を原則としつつ、それ以外に入学金や特別な幼児教育などの費用を、自由価格
として上限を設けず上乗せの徴収を認めています。結果的に応益負担の側面が強くなります。それでは新システムの目的である、すべてのこどもへの良質な生育
環境を保障することは難しくなるでしょう。
また、契約については、保護者がみずから施設を選択し、施設と契約する「公的幼児教育・保育契約」と
し、正当な理由がある場合を除き、施設側に応諾義務を課すことにしています。ただし、定員を上回る場合は、建学の精神に基づく入園時の選考を認めるとして
いるので、応諾義務の実効性に疑問が残ります。
また、現在、認可保育所は児童福祉法や児童虐待の防止等に関する法律などに基づき、虐待の疑いが
ある要保護児童に対して措置的に入所させる機能を持っています。しかし、要保護性の高い児童ほどサービス利用料がふえ、負担が重くなります。貧困状況にあ
るこども、障害のあるこども、ひとり親家庭のこどもなどが排除されかねません。現在のような保育所の社会的機能は、新システムになっても維持されるので
しょうか。また、新システムでは、自治体と事業者の直接的な契約関係はなくなり、自治体の指導、監督が実効性を持たなくなることが懸念されます。
さらに、昨年1月に閣議決定された「子ども・子育てビジョン」に盛り込まれている格差や貧困の解消という、貧困予防と早期支援の視点がこの新システムからは抜け落ちています。
新システムには、保育のナショナルミニマムを堅持しさらに充実させること、保育に関する財源を確保し義務的経費化すること、国や自治体の責任を明記すること、すべてのこどもに保育を受ける権利を保障するため、保育制度の介護保険化をやめることを求めたいと思います。
自治体の子育て政策に大きな転換を迫る子ども・子育て新システムについて、何よりもこどもの最善の利益のために、自治体側から積極的な意見を国に出していくべきです。これらの課題について区はどのような認識をお持ちか、お伺いいたします。
次に、昨年も本会議で取り上げましたこどもの貧困問題について伺います。
日本は教育費の私費負担が重く、OECD諸国の中で政府支出に占める教育支出の割合が27位と、最下位に近いランクです。現行の生活保護、児童扶養手当、就学援助などでは対応し切れないこどもの貧困が広がっています。
12年前にイギリスのトニー・ブレア首相が宣言したとおり、こどもの貧困対策の柱は教育にあります。すべてのこどもは将来の社会の担い手です。家庭状況に
かかわらず、すべてのこどもに十分な教育の機会を保障することが、その担い手を育成することにつながります。教育が未来をつくります。そのための費用は社
会全体が負担すべきではないでしょうか。教育への投資は、長期的に見れば社会保障費の減少、所得税の増加など、経済的・社会的効果をもたらします。
埼玉県では、昨年の10月から生活保護世帯の中学校3年生を対象に、無料の学習教室を県内5カ所で開きました。保護者の収入格差がそのまま教育格差につな
がっているのを改善したいということです。学習教室は、特別養護老人ホームの会議室などを借りて開設し、週5回、放課後2時間ほど開いているということで
す。
広島県福山市でも、自力で将来を切り開くことが困難なこどもを支援する必要があるとして、生活保護世帯に特化した進学支援などの取り組みを
開始しました。事業は、元教員の家庭・教育支援員2人と、生活保護のケースワーカーによる個別支援、そして大学生ボランティアらによる居場所づくりの2本
立てです。
板橋区では、貧困の世代間再生産を防ぐことに力を入れて、福祉事務所が組織として、こどもを対象とした高校進学支援プログラムや不登校児支援プログラムの作成、教育委員会や学校と福祉事務所の連携などを実践しています。
また、各地には困難を抱えたこどもたちの学習支援に取り組むNPOや個人などが少しずつふえていますが、拡大するこどもの貧困に対して十分な対応を行うに
はそれだけでは困難です。やはり自治体が直接学習支援、進学支援に乗り出すべきではないでしょうか。税金の投入先として大変効果が高い分野だと考えます
が、区の見解をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。