絵葉書の尾根へ 北ア・爺ヶ岳     


爺ヶ岳登路から種池山荘と劔岳 (中央)
■目的地:爺ヶ岳 南峰(2660m)
■日にち:2008年8月13日(水)
■天気:晴れ後曇り
■同行者:俊一
■アクセス:
  自宅 発(8/12 11:00)=(名神・中央・長野 道)=豊科IC(16:30)=扇沢へ下見(17:50-18:10)
   (21:30) 道の駅・池田 (8/13 4:30)=扇沢橋駐車場(5:20)
■コースタイム:
  扇沢橋駐車場 1340m 発(5:40)〜柏原新道〜ケルン(6:35)〜水平道種(7:45)〜池山荘(8:50-9:15)〜
  爺ヶ岳 南峰(10:15-11:00)〜種池山荘(11:50)〜ケルン(13:25)〜扇沢橋駐車場 着(14:15)

 山渓のアルペンガイドが新しくなっている。写真が綺麗だ。俊一が久しぶりにアルプスに行きたいというので、
お手軽な日帰りルートを模索。後立山の唐松岳は山渓8月号にも紹介されている。なるほどロープウェイで稼ぐので
楽だ。数ヶ所に候補を絞りつつアルペンガイドをパラパラ眺めていると、柏原新道が登りやすい道として紹介されている。
その先は爺ヶ岳が近い。地味な名前は登高意欲をそぎかねないが、雪形の種まき爺さんによる山名。尾根からは
立山・剣が絵葉書のように眺められるという。丁度、新田次郎の「劔岳 点の記」を読了したところでもあり、登りはせずも
眺めてみたい山だった。
ガイドブックの写真は完璧で絶好の日和で撮影されているのだろう。日帰りなら尾根に着くのが昼頃、ガスも出るので
あまり期待しないでおこう。

 ガソリン高か新名神のおかげか高速は目立った渋滞もなく、ほぼ予定通り豊科で下りる。犀川、高瀬川沿いに走り
やすいオリンピック道路を北上し車中泊予定地の道の駅松川に着く。まだ時間があるので、登山口の扇沢まで行って
みる。大町温泉郷からいきなり道を間違えて爺ヶ岳スキー場前から鹿島槍スキー場手前で引き返す。温泉郷まで戻り
黒部アルペンルートを上って扇沢の駅に着く。一大観光地の入口なのでとても登山口とは思えない。駅舎も駐車場も
大きい。柏原新道はその少し手前の扇沢橋から入る。橋の前後に駐車場があるがほぼ満車状態だった。
扇沢から見る尾根上は雲に隠れているが赤沢岳や蓮華岳の斜面がワクワクさせてくれる。

 車中泊は利便性と静けさから、当初と違い川を隔てた池田の道の駅にする。温泉と食事に松川村のちひろ美術館横
にある、すずむし荘へ向かう。なかなか良いところでした。池田に戻り24時間営業のスーパーで山用の水とビールを
買い、道の駅で寝る。ラジオでオリンピックの中継を聞いているとなかなか寝れない。いつものごとく何度も目が覚めな
がらうつらうつらしていたら俊一の目覚ましが鳴った。4時。
       
駐車場から赤沢岳方面扇沢 柏原新道は左岸
 眠たい目をこすりながらすぐ横のコンビニで朝食と昼のおにぎりを調達。車の中の整理をして出発。山はどんよりとした
雲に覆われている。昨晩は蒸し暑かった。前日の下見のおかげですんなりと扇沢橋に到着。空いているスペースに駐車。
何人か支度の人たち。尾根を見上げると朝日に輝く針ノ木や赤沢の峰がオレンジに輝いている。小屋泊まりならこの
景色が山上で見られるのだ。そんな尾根に見とれて扇沢橋を渡り。登山口の指導所で入山届を書く。お兄さんが一人、
「日帰りですね。」 そりゃぁ、泊まりで行くべきでしょう。(^^;;
       
杉や栃の大木もある岩小屋沢岳方面
 大きな扇沢の横を上っていく。歩きやすい道とは言っても取り付きは急登のつづら折れ。足を慣らしながらゆっくり登っていく。
白山ほどではないが、思ったより人が多い。思い思いの場所で休憩しては何度も抜きつ抜かれつ、顔を覚えてしまった。
大きな杉の木がある樹林の中を登っていくと下で見た尾根が段々広がってきて、針木岳も全容を現すようになる。
尾根の西面なので日陰の道、ひと休みすると山の冷気ですぐ寒いほどになる。花は過ぎている。ショウジョウバカマや
イワカガミの葉が目に付く。ゴゼンタチバナの葉も出てきた。意外と木々の間からの眺めが良くて、誘われるように歩く。
同じ尾根の写真を何度も撮ってしまう。なんせ、上に着く頃はガスで見えなくなっているかもしれないのだから。
リスが前を横切った。ふさふさとした尻尾が気持ちよさそう。
       
右上に種池山荘蓮華岳と針ノ木
 扇沢から1.7kmにあるケルンを過ぎるといよいよ種池山荘が微かに見えてきた。上はいい天気だ。まだあと4.5km。
汗が出尽くしてきた頃、道は徐々に緩やかになってきた。楽に歩ける。歩くのが楽しいくらいだ。確かに良い道だ。
しばらく登れば稜線はさらに広がり、針ノ木雪渓も見える。岩小屋沢岳の尾根も迫力が出てくる。足下は石畳になり
ゴゼンタチバナの花が残っている。「水平道」のプレートがある道は歩きやすいだけでなく眺めも良い道である。
石ベンチでは家族連れが休憩中。荷揚げのヘリが扇沢駅の方から往復している。
       
水平道岩小屋沢岳
 崩壊地が出てきた。下から山荘を見上げた時にその下にあった崩壊地を横切るのかなと思っていたが、やはりそうだった。
今までの平穏な道とは違い、少し緊張するところである。特に上の雪渓が残る谷を巻く時は高度感がある。気をつけていきたい。
「ガラ場通過注意事項」という指導板がある。ガラ場を過ぎるとカーブして登りがきつくなった。高い木がなくなり小屋の屋根が
見えてくる。小屋の向こうには、写真と同じ雪渓をいくつも残した立山連峰がちゃんと聳えていた。まさにアルプスの眺め。
       
山荘直下ハクサンフウロと立山
 背後に端正な爺ヶ岳の姿もあるが、立山に惹かれて西の方へ少し歩いてみる。10張りほどのスペースのあるテン場を
過ぎると林の中徐々に下りとなり、どうしようかなと思う頃に景色が広がった。地図では平坦に見える尾根も意外と起伏がある。
ここで眺めるにとどめて体力温存し爺ヶ岳に向かう。丁度小屋への荷揚げのヘリが着き、すごい土煙が上がった。
       
岩小屋沢岳への尾根道山荘からの爺ヶ岳南峰
 小屋の前を過ぎてチングルマのお花畑の間を歩く。至福の歩き。何と雷鳥の親子も4羽で迎えてくれた。すぐ近くまで
寄ってくるのでみんなカメラに忙しい。トウヒの短い林を抜けるとハイマツの道。振り返ると正に絵葉書のような眺め。
戻りの尾根に赤い屋根。残雪の立山と青い空。できすぎである。しかし、それも束の間、下から白いガスがどんどん
湧き上がっている。左手に見える高い山、いきなりの鹿島槍の登場は戸惑ってしまった。既にこちらもガスで半分隠れている。
ぎりぎりセーフで尾根に辿り着いた感じである。
       
爺ヶ岳南峰登路から劔鹿島槍 南峰
 ハイマツの間のザレた道をゆっくりと登る。爺ヶ岳から冷池山荘、鹿島槍へと続く尾根、緑の斜面が綺麗だ。
思った通りひと息では登れなかった。南峰の山名板が立つ。陽射しはガスで隠れて丁度良い。時々直射で入ると熱い。
トンボがたくさんあがっている。南峰は巻いて先へ行く人も多い。立山はガスに隠れ、劔も出たり現れたり。それでも
牛首尾根からその先に続く黒部の山並みで充分。
 腹もふくれた、ガスも晴れそうにない。中峰へ行っても展望は期待できそうにないので力も湧いてこない。あっさりと種池へ
下りる。お花畑はガスの中である。俊一がもう一度雷鳥に会いたいの願いが叶ったのか、今度は2家族が散歩していた。
       
雷鳥の雛霧のチングルマ
 景色は以前としてガスの中。おまけに最近は大気の状態が不安定とかで雷も多いと聞く。意外と未練もなく来た道を下りる。
これが思ったより長い。そして下りもきつい。登りの時はそれほど感じなかったが、よく登ったものだ。
針ノ木もガスに隠れる。沢音が出、バスの音が聞こえてもまだまだ下りる。やっと扇沢橋に着いた。何と15時前。明るい19時
頃まで歩こうかとも思っていたので早すぎる。沢に下りて冷たい水で顔を洗い身体を拭くと気持ちが良い。

温泉は木崎湖を予定していたが、昨日の湯が良かったので山麓の道を走って再びすずむし荘。露天風呂から青空。


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2008.8.17. BY M.KANE