初夏・颯爽・綿向山を歩く 山行記 

行者堂のブナ林 フタリシズカ
ハンショウヅル ギンリョウソウ

■目的地:綿向山(1110m)・竜王山(826.3m)<山域:鈴鹿・滋賀県日野町>
■日にち:1998年5月31日(日) 
■天気:晴れ
■同行者:あきゆきさんご夫妻・俊一
■コースタイム: 自宅 発(6:15)=綿向山 登山口 着(8:10)

  綿向山 登山口 発[約360m](8:20)〜西明寺(8:40)〜林道 水木谷線起点(8:55)〜
  竜王山 登山口(9:10)〜竜王山 山頂(9:40-10:00)〜鉄塔(10:10-10:20)〜
  約905mピーク(10:35)〜展望岩場(10:45-10:55)〜962mピーク(11:20)〜
  雨乞分岐(11:50)〜綿向山 山頂(12:10-13:15)〜金名水(13:30)〜
  行者堂(13:50-14:05)〜5合目避難小屋(14:30)〜林道出合(14:50)〜
  水無分岐(15:30-15:45)〜登山口 着(16:15)

【綿向山】 鈴鹿山脈から琵琶湖の方へ派生する信仰の山。
山麓に聖徳太子開基という禅寺・西明寺がある。山頂では鈴鹿の絶好展望を誇る。

【林道にはまる】 名神八日市ICを下りて順調に進んでいたが大谷辺りで迷う。
アタ感で進むと早苗の並ぶ田原から綿向山の眺めが実にいい。小野の里を通って
Y字路を右に進む。マツタケ山のような中を細い林道が続く。方角は間違いなさそう
なので待ち合わせの8時をまわったが、なんとかなるだろう。
 やがて広い舗装道に出て、右に少し下ると見覚えのある顔が目に入る。あきゆきさんの
奥さんである。以外とあっけなく到着。お待たせでした。挨拶もそこそこに身支度を
して出発。

【西明寺】 地域総出の草刈りが始まっている。俊一は小さな紅色のカミキリムシを
捕まえてきた。静かな山間の集落の前方に、居住まいを正した西明寺がある。
清楚で奥ゆかしさを感じるお寺だ。鐘楼もあり、俊一は北摂・羽束山のように勝手に
衝きたくなっているようだが、やんわりと抑えられるような威厳が漂う。

【竜王山】 道標に導かれて林道歩き。俊一、テントウムシをゲット。未舗装で丸い
石が敷かれた林道は趣があっていい。時々ハイカーを乗せた車が追い越す。そろそろ
取り付きかと言うところで、右手の山中へ竜王山を指す道標が現れた。入口は草で覆
われているが、すぐに下草のない杉林。やがて雑木林へと変わる。早くも下りる単独
行とすれ違う。緑眩しく、風涼し。道脇にマムシグサ発見。くねくねと木陰の中を
登って、少し緩やかになった頭上にタニウツギが咲く。
 巡視道の様な階段。俊一の靴紐が解けたので結んでいると、ヒルが上に伸びている。
長さは3cm程。おぉ、これが鈴鹿の献血魔かいなと初対面に微かな感動。
 階段を登ると竜王山山頂。えっ、もう着いたのぉ。松の立木越しに近江盆地を見下
ろす。高度感を煽ってくれる景色に満足。我々だけの静かな山頂である。東の先には
仁王立ちのような鉄塔が小さく目に入る。奥さんからゼリーを頂く。
腹も減ってきたので、俊一とおにぎり一個ずつ食べる。
開放感あふれる鉄塔の下  
  鉄塔の下
 
      1998.5.31. 
 
【鉄塔下の展望】 少し低木や草が張り出している道を尾根伝いに歩いて鉄塔。 芝生のような草のみで展望良し。2基あるが、綿向山の勇姿は奥(東)の鉄塔がいい。 分県ガイドの写真と同じで、正面に大きい緑がどっかりと立ちはだかる。  俊一、芝生に寝ころぶ。天上でのごろ寝はなんとも贅沢なひとときである。青空と 爽やかな風で実に気持ちがいい。  左から右へに廻っている緑の尾根をあきゆきさん、奥さんと目で追い、今から歩く ルートを確認しあう。見た目は手強い距離のようだが、「まぁ、すぐですわぁ。」と あきゆきさん。 【尾根道】 鉄塔から少し下り、ヤマボウシを見て峠。道標あり。まっすぐと薄い 踏み跡をのぼる。ピークを越えて低木の尾根道から見晴らしのいい岩場に出た。ここ で小休止。谷向かいにあるイハイガ岳北面の緑が切れたガレは印象的な景色である。 行く手には962mピークが尖っていて、綿向はそんなに甘くないよと言っているようだ。 「もう、そこやねぇ。」とあきゆきさん。お陰で足も軽い。  俊一と「しりとり」をしながらアップダウンの道を行く。親子二人の時はどうもな いが今日はちと恥ずかしい。続けての「だじゃれゲーム」に至っては思考せず、俊一 ひとりの自画自賛状態となる。 【ササ急登】 林道からの道が繋がる鞍部を過ぎて、962mピークの登りは木の根を つかまりながらの急登になる。落石しないように気を使う。ピークを過ぎると道脇に シャクナゲの葉が目立つが既に花はない。  登りはいよいよブナの混じった林となる。あきゆきさんはギンリョウソウの撮影 モード。5、6名のパーティとすれ違う。ブナ林の雰囲気は落ち着いていつ来ても 良いものだ。  左手の木陰が切れるとササに変わる。10名を越えるグループが下りてきた。 待ってくれているので、ササにつかまりながらえいえいと登るが、ペースが乱れる。 登り優先というものの気を遣ってしまうなぁ。 【縦走路】 登りきると背丈を超えるササに囲まれた雨乞分岐。ササに覆われた雨乞 方面もさることながら、右手の縦走路から開ける鈴鹿の山並みが気になる。 程なく到着のあきゆきさん夫妻に促されて、明るい尾根道を下るとササの丘の横から 雨乞岳や鎌ヶ岳の姿が登場。感激の瞬間であった。見所の多い山に嬉しくなってくる。 【賑わう山頂】 少し登り返すとタニウツギが頭上でお出迎え。20名ばかりで賑わう 山頂に到着。ケルンの先に出ると素晴らしい鈴鹿の山並みが屏風のように並んでいる。 ケルンと小さなお社のまわりをぐるぐる回って景色を噛みしめつつ、昼飯場所を物色。 お社の後ろの日陰に決定。おにぎり4つ。晴天でも、爽やかな風で日陰にずっといると 肌寒くなってくる。  俊一はお社参道の玉砂利で、お父さんの絵を書いてくれたのでデジカメに撮る。 ちょっと早いが、父の日のプレゼントということにしとこう。元気は余ってケルンの まわりでとり鬼をしようという。人が多くて2、3周で止めておく。あきゆきさんと は山座同定。宮指路岳の芳村さんは今頃どの辺だろうか。展望盤には白山も見えるとか。  水無山への尾根道にも少し行ってみた。鈴鹿峠に向かって山が落ちていく様が映る。 ササの明るい尾根である。
鎌ヶ岳と雨乞岳を望む  
  雨乞岳を望む
 
      1998.5.31. 
 
【ジグザグ下山】 下山はお社前の階段から。やがて延々とジグザグの緩い下り。 途中、金名水に寄って水の冷たさに喜ぶ。初夏となっては道脇にはめぼしい花が 乏しい。釣り鐘状の紅花、ハンショウヅルやフタリシズカ、マムシグサ程度。  七合目の行者堂・ブナ林は落ち着く。天を覆う葉の影で涼しい。大きな幹の傷が 痛々しいものの、それさえ取り込んでしまうような生命力を感じる。  俊一に「今までにない花を10見つけたらご褒美!」の約束をし、みんなで花を探し ながら下りる。5合目避難小屋で左に取り、林道に出て竜王山の方へ少し歩くと道標。 この草陰にキイチゴが沢山あり、試食する。植林の中をまたもジグザグ道。コアジサイ、 ヤマアジサイが咲きはじめている。 【沢】 前日までの雨を集めた沢音が響いてきた。木の橋を渡り小屋が出てくる。 水無分岐の道標が立つ。沢に入る道があったので、水辺でひと休み。もう少し早く 休むべきかと思ったが丁度いい所がなかったので即、決定。俊一は真っ黒なオタマ ジャクシが沢山いるのを見つける。残念ながら堰が多いためか魚の姿は見えない。 【堰堤】 水無分岐からは林道終点がすぐで、数台の駐車スペースがある。ゆるりと 天然記念物の「接触変質地帯」の看板を見たり、押し寄せる山の緑を堪能して歩く。 新しい大きな堰提がある。やがて林道が川から離れてきたので、「変だ。」ということに なり引き返す。あきゆきさんが大きな堰提の下に道が続いているのを発見、橋を渡って 車を置いた登山口へ何とか無事に到着できた。  あきゆきさん、奥さん、とてもいい山をありがとうございました。 【ブルーメの丘】 歩きを堪能して時間も遅くなってきたので、靴を履き替えると 早々に帰路へ着く。しかし、途中でバックミラーに映る山が気になり、車を降りて 写真を撮る。青空の下、素晴らしい山に感謝。  麓の日野町はブルーメの丘や琵琶湖空港計画など意欲的な町おこしの様子が道々に 感じられる。でもこの静かな里に、そして山の上で飛行機が間近に飛び交う様を想像す ると、勝手ながらそれが現実にならないで欲しいなぁと思うのでありました。

  綿向山について   

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1998.6.14. BY M.KANE