急登続く木曽の越百山          

山頂から北  
越百山 山頂から雲隠れの南駒ヶ岳 
■目的地:越百山(2613.2m)
■日にち:2000年8月12日(土)
■天気:晴れ時々曇り
■同行者:俊一(11才)
■アクセス:8月11日(金)
      自宅発(13:10)=(名神)=大津SA=(中央道)=恵那峡SA= 中津川IC=
      R19=道の駅「大桑」=関電伊那川ダム=ケサ沢駐車場(20:05) 泊

■概略コース:ケサ沢駐車場〜越百山 (ピストン)
■コースタイム:
      ケサ沢駐車場 発(5:40)〜福栃沢登山口(6:30)〜下の水場(7:05)〜
      下のコル 四合目(7:30)〜上のコル 五合目(7:55)〜おこじょの平(8:15)〜
      六合目1900m(8:35)〜遠見尾根(8:50)〜七合目2070m(9:15)〜
      上の水場(9:20-9:30)〜八合目2250m(9:55)〜越百小屋(10:40-10:45)〜
      越百山(11:50-13:10)〜越百小屋(13:55-14:00)〜上の水場(14:35)〜
      上のコル(15:30)〜福栃沢登山口(16:10)〜ケサ沢駐車場 着(17:00)

【KOSMO】 日帰りで行ける所はないかなぁ、と関西から車のアクセスも比較的良い
中央アルプスを調べた。人の多い駒ヶ岳周辺を避け、静かでハイマツ帯のある山。
檜尾岳、空木岳、南駒ヶ岳、越百山など主稜線ではいずれも急登の長い歩きを強いられ
る所ばかりで、もともと日帰りというのが甘い。しかし、「こすも」という名前に惹か
れ、FYAMA等先達の山行記に目を通すと何とかなりそうだと手応えを感じて決定。

【林道へ】 初めて走る道だから林道は明るい内に入っておきたかった。前日昼飯を
食べたらすぐに出発。しかし、読みが甘い。世間はお盆休みのラッシュが始まっていた。
おまけに事故も重なり中津川で既に陽が落ちた。国道19号では一時雨が降る。
道の駅「大桑」で伊那川ダムへ右折する所を地図で確認、橋を渡ってとは判っても
夜道でついつい通り過ぎてしまいそうになった。
 民家を抜けるとやがて離合するのは辛い林道が静かな闇に続く。ダムの近くはサルも
いるという情報があったので、俊一は目を凝らしてライトの光を見ている。道はずっと
舗装されていて走りやすい。たまに窪みあり。3つ目のトンネルの中で前方に茶色の
走る小動物。サルよりも小さい、ウサギのようだ。ダムの気配を過ぎて闇の中に車が
4台。登山カード入れもある。ここがケサ沢駐車場のようだ。

【寝る】 寝袋を出してすぐに車中泊。辺りは沢の音だけ轟々と鳴る。曇り空だが目が
慣れると谷の上は明るい空が判る。なかなか寝付けない。うつらうつらのうちに何台か
が到着。明るくなったのは4時頃。5時前に起きあがる。パンとクラッカーと牛乳の
朝食を食べながら、五月蠅い蚊に閉口しつつ支度をする。車は10台になっていた。
ケサ沢  
明るいケサ沢
【林道歩き】 山行計画を登山カード入れに入れて出発。すぐに車止めのゲートがあり、
右を回って橋を渡る。山深い谷の下に白い沢の水が清々しい。丸いつぼみもつけたタマ
アジサイが咲く。ケサ沢に沿ってゆっくりと登っていく。10m程の大きな岩が転がる沢は
山の大きさを物語る。花崗岩の砂礫の白い道。橋を3つ渡る。林の中を通る。1m程の
葉を広げたシダ。沢のヘリを変化の少ない緩い登りが続き、道標や看板が立つ福栃沢の
出合う登山口につく。越百山まで6.5km、南駒ヶ岳は8.5km。沢の水で顔を洗って登りに
就く。
ササの道  
ササで覆われた道
【ササの水玉攻撃】 砂防堰提の脇から上りに入る。予想通りのササ下生えの素朴な道。
と感傷に浸るまもなくササの葉は生い茂り腰まで。葉に着いた水玉であっという間に
ズボンは濡れてしまった。花はほとんどない。ササの青い緑の世界である。
ササのつづら折れが続き、水場。向かいの福栃沢の谷は緑の中を荒々しい崩れの筋が
引く。やがて山腹を巻くと下のコル、四合目。ここから直下に見下ろす林の根元は一面
のササ。北側に南駒ヶ岳の西尾根の裾が朝日を浴びて眩しい。ケサ沢本谷の沢音が聞こ
える。
朝日  
朝日射す
【尾根道】 下のコルからは尾根道。まだササはある。木立の間から朝日が射す。
シャクナゲの尾根は花こそないが咲いていたらさぞ賑やかだろう。足元にはこれも
花の過ぎたイワカガミなどが群生している。ギンリョウソウを見つけた。
「やせ馬の背」は林の中の木の根道。両側の谷へ渡る風が通って心地よい。
「ちょっとの平」で小休止。
南駒ヶ岳と仙涯嶺  
遠見尾根展望台からの眺め
【苔の道】 上のコル、五合目。少し下ってここがホントのコルではないのかと思う。
急登。木の根道。単独兄さんが追い越し、いつの間にか先に行って見えなくなる。
六合目1900m。五合目へ20分、七合目へ35分。熟年4人組が追い越す。
遠見尾根展望台。枝の間に南駒ヶ岳と仙涯嶺の険しい姿がみえる。
七合目。六合目へ20分、(上の)水場10分、八合目へ35分。御岳は雲の中で見えず。
苔むした倒木やかわいいキノコなど水の豊かな林である。
道標の時間はどうも健脚向きのように感じてくる。
オオバミゾホオズキ  
水場にて
【水場】 上の水場の広場。右へ少し下るとオオバミゾホオズキの黄色い花が二輪。
冷たい沢水と合わせてホッとさせてくれる。やはり花は和むなぁ。水筒に水を満たすと
持ちきれないほど冷たい。
 さてこ、こから先はまたも急な登り。トウヒの原生林の中をつづら折れで休み休み
登る。うちわにギザギザをつけて上面トゲだらけの葉。何という名の草だろうか。
ガスが両方の谷から忍び寄ってきた。下草の少ない明るい林の急登が続く。
ゴゼンタチバナの残り花が咲いている。
福栃の登り  
八合目付近でガスが出る
【福栃山横巻】 八合目2250m。「福栃の登り」。九合目(小屋)へ30分、七合目へ20分。
辛い登りである。とにかく長い登りが続く。ガスがさらに湧いてくる。
救いは静かな林に響く小鳥の声。ピロピロピロ。ピロピロピロ。
「福栃山横巻」の標識。やっと登りから開放されるかと思うと嬉しい。しかし、
緩い登りがまだ続く。ゴゼンタチバナの群落。南駒ヶ岳がガスをまとっている。
やっと下り、「小屋まで5分」の標識は元気づけられる。

【小屋】 越百小屋で5分休み。行く手遥かに越百山の頂が聳える。
残念ながらその背は青空ではなく白い雲。しかし、その脇には夏の青空が覗いている。
 水を飲んで歩き始める。崩壊地の脇を巻きまたもや原生林の登り。もうかなり消耗し
ていて3歩歩いて一息着くの繰り返し。花は白いミヤマカラマツソウ程度。涼しいのが
救い。やっと平坦になって山頂手間のコブへ登り着く。南駒はガスに隠れる。山頂への
道がハイマツの間を上っているのが見える。シナノオトギリが咲く。
小屋を見る  
山頂から福栃山を見下ろす
【山頂】 さぁ、気を引き締めて最後の登りにかかる。背後にアルプスのパノラマが
広がってくる。ハイマツの間を登ると意外にすぐだった。山頂は抜かれた熟年4人組。
記念写真を撮ってあげる。彼らは台風が来ているので南ア北岳バットレスを変更して
ここへ登ったという。
 南越百山からは単独。話を聞くと大平から摺古木、安平路と縦走してきたという。
おとなしい顔に似合わずこちらも強者である。南越百山まではササをずっと漕いできた
そうな。ガイドブックに記載の通り。今日は摺鉢窪小屋、駒ヶ岳からは伊那前岳を通っ
て下りる。あと二日の行程、天気が保ってくれたら良いなと思う。
南越百山の稜線  
ガスが晴れた南越百山を望む
【眺め】 昼飯はお湯で戻すワカメご飯にカレーピラフとスープ。いつになく豪華。
豪快な山並みを眺めての食事は最高の幸せ。ガスもやがて晴れてきて、南越百山への
稜線や北は南駒ヶ岳への山並み。西北に糸瀬山。時折、南に安平路、摺古木。東に伊那
谷の蛇行する与田切川が雲の切れ間から見下ろせた。じっくりと目を凝らせば薄く南ア
ルプスの山並みが屏風のように浮かび上がるが富士山の方は厚い雲。眺めに飽きない。
 単独おじさんがテントを担いで登ってきた。皆さんこの急登をすごい人ばかり。
大きい山は歩く人もスケールが違う。空木を回って下りるそうだ。

【花たち】 南越百山もピストンする予定だったが、ガスも多いのでパス。一時間ほど
高山の雰囲気を楽しんだがそろそろ去らないといけない。下りは花にも目がいく。
ミネウスユキソウやタカネツメクサ、そして登りに気がつかなかったレモン色の
トウヤクリンドウが二株。その先は深く切れ落ちた谷である。眺めを惜しみつつ下る。
さらに下りてコブに戻るとリンドウのつぼみ、早くも秋の準備。
越百山  
山頂手前のコブから越百山を見上げる
【雨の話】 越百小屋で5分休み。髭のおやじさんが出てきて「もっと早く下りないと
スコールが来るよ。12時には下りてこないといけないなぁ。下まで3時間はかかる。」
こっちの勝手だと思いつつも、悔しいが木曽の手強さを感じさせる一言であった。
夏は多いときは1日に3回降る時もあるという。朝9時、11時、そして昼下がり。
どおりでこの山の森は大峰・台高と錯覚する雰囲気を感じさせる豊かさがある。

【下り】 長い下りが続く。たまに軽い登りになると朝の登りを思い出す。林の中は
涼しい。半ば過ぎて俊一が足の痛みを訴える。長い下りで無理をしてしまったようだ。
水滴攻撃に悩んだササは既に乾いている。陽射しが暑い。

【お隣】 やっとの思いで林道登山口に着いた。俊一、へたりこむ。
紫のヤマホタルブクロ。沢からそよぐ涼風。その中を心地よい惰性で険しかった山を
下りていく。下りの後半で抜きつ抜かれつの単独。彼は駐車場に着くと隣の車だった。
前日にうさぎ平から空木をまわってきたそうだ。

【湯】 南木曾温泉郷で町営の「木曽路館」の露天風呂にはいる。食事とセットで
\1600。木曽の谷に沈む夕日を眺めて湯に浸かる幸せ。そばも美味しい木曽路でした。


  越百山について   

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2000.8.13. BY M.KANE