大展望の丹波・五台山から五大山 縦走      

五台山  
 香良の里から望む五台山   (左の最高点、右は鷹取山) 
■目的地:五台山(654.6m)・鷹取山(566.4m)・愛宕山(570m)・五大山(569.2m)
■2.5万図:黒井          <山域:丹波・兵庫県氷上町・市島町>
■日にち:1999年3月23日(火)
■天気:快晴
■同行者:単独
■コースタイム:
   (アプローチ) 自宅 発(9:15)=氷上町香良 独鈷の滝 駐車場 着(11:00)

  駐車場 発(11:10)〜独鈷の滝(11:20)〜一ツ岩(11:45)〜小峠(11:55)〜
  五台山(12:15-12:25)〜小野寺山(12:35-13:05)〜鷹取山(13:35-13:45)〜
  三和峠(13:55)〜岩滝寺上への分岐(14:10)〜愛宕山(14:35-14:50)〜
  五大山(15:10-15:25)〜巡視道標No.110,111,112(15:32)〜No.110鉄塔(15:45)〜
  林道終点(16:05)〜愛宕山登山道口(16:10)〜独鈷の滝 駐車場 着(17:20)


【五台山へ】 西麓に名所「独鈷(どっこ)の滝」がある。
山名は市島側にある白毫寺(びゃくごうじ)の山号・五大山に関わるという。
 昨日と正反対の快晴。起きたら熱っぽいしのどが痛いので風邪を治しに山へいく。
柏原から遠坂トンネルへ向かう県道で、香良口に差し掛かると「独鈷の滝」の大きな
看板が目に入る。東に黒々と山が立ちはだかる。あぁ、あれが五台山かぁ。
この道は日本海の海水浴などによく通っているが、姿と山名が初めて一致した。
 写真を撮った後、帰りに使うかも知れないバスの時刻表をメモしておく。

【独鈷の滝】 ハンドルを東へとり、谷の車道を香良病院まで来ると、先の左手に
駐車場がある。平日のためか1台もいない。トイレもある。さすがに観光名所。
 身支度をして歩き出すと、大きな木々の中に荘厳な雰囲気のお寺がある。
昨日の雪が残って張りつめた空気。山からわき出た川の水音が激しい。
 独鈷の滝はすぐで、年輩のご夫婦が滝の写真を撮っておられた。石段を上って、
緑の道標「五台山へ 2231m」。右に黄色い社の不動明王。安全を祈願して滝の上の
巻き道へ行く。美和峠への分岐があり、「美和坂古道」という、そそるような看板。
その古道は急な登りである。ここは見送り「赤坂」という看板の平坦道へ歩いて行く。
滝の水となる沢の横を通る。独鈷の滝は落差15mというが、その上のなめ滝も良い。
枝の雪  
  枝から融ける雪  
【植林の道】 午に近い陽射しで頭上から雪が落ちてくる。直進に「市島前山」と
ある分岐で左へ沢を渡る。「藤の目」という標識があった。この辺りで「2000m」。
沢づたいに登る。雪解け水も加勢して、水音激しく、春の勢いを感じるようだ。
 延々とほとんど植林の中の登りである。頭上から落ちてくる雪が気になる。

【一ツ岩】 沢を縫いながら登って、やがて沢音を左下に聞くようになり、大岩に
出合う。一ツ岩とある。この少し先が「1000m」(五台山へ)。もう半分かと思うし、
まだ半分かと思う人もいることだろう。先が判るのも善し悪しである。この間も植林。

【小峠】 山頂から南に延びる尾根にでた。小峠である。ここを乗り越えると、
イリズミ谷。道標の脇に「香良病院へ下りるが険しい」とメモ書きしてあった。
濡れた赤い松葉と白い雪の尾根道を登る。松の木から雪が落ちた。
 また右へ植林の道となり、大きくつづら折れに歩く。高く登った陽を浴びてミゾレ
状態の植林登りである。じきに出るだろうと甘く見ていたら、いくつか雪を浴びて
頭が冷えてきた。それでも横着して、タオルで汗と一緒に拭いながら歩く。

【鞍部】 まだまだ植林の中だが、五台山と小野寺山の鞍部に着いた。道標がある。
氷のはった水たまりと新雪に覆われた道。この時期にこんな雪の山歩きが出来るとは
思っていなかった。昨日のものと思われる雪を被った足跡を逆に辿っていく。
わずかな登りの先はやけに明るい。
縦走尾根  
  鷹取山への尾根 (五台山から望む) 
【山頂】 明るい陽射しが嬉しい静かな山頂。菩薩像やベンチ、展望テラスまである。
以前は何にもなくて、茨の多い藪山だったそうです。いくつかの立木はあるものの
360度の大展望、久しぶりに感激した展望に出会えた。
 但馬の白い峰々が悠々と彼方に聳える。多紀連山や大江山、そして親不知が間近で
大きく尾根を広げる。ダンノ凡太郎さんが採ったルートで歩きたくなる山並みである。
そのダンノさんの話では、小野寺山の方が展望はお奨めという。ここも去りがたいが
新雪を踏みしめて次の峰へと歩いてみる。
親不知  
  親不知への尾根  (小野寺山から望む) 
【小野寺山】 2.5万図に山名はないが、五台山の東南東にある645mのピークである。
伐採してあり見晴らしは確かに良い。展望図がある。持参してきたワラジヤの地図、
「北近畿」と重ねる。北西の五台山山頂を除いて、北からぐるりと遮るものなく見渡
せる。私にとっては但馬方面になる北西が見れないのが残念。それでも南に鷹取山の
トンガリを代表に今から歩く尾根筋や多紀アルプス。その奥に微かに北摂の山並み。
西に千ヶ峰までも覗き、東は京都愛宕山から比良山も薄く白く見える。京丹波方面は
長老ヶ岳や頭巾山の辺りが白い。北に移ると青葉山や由良ヶ岳。そして私にとっての
大発見。真北に聳える三岳山がかっこいい。粟鹿山も誘うようにある。
 こうやって山々が累々と波打つ景色を眺めていると、たとえようのない幸せな気持
ちになってくる。昼食のラーメンを作るのも惜しまれる眺めである。(^^;

【縦走開始】 さて、ここから先は一般のハイキング道とは違うかも知れないので、
軍手に帽子、カウベルとヤブ用装備で稜線を目指す。
 いきなり急降下。雪が混じる坂道、そして平坦な尾根道。予想よりハッキリした道
が続く。氷上町側はずっと植林。市島町側は雑木林。やがて胸突き八丁の雪を被った
急斜面が現れる。小野寺山から見えたトンガリ鷹取山への登りである。木の幹を掴ま
りながら登る。白いロープがあるが出来るだけ頼らない。
鷹取山山頂  
 鷹取山 山頂  
【鷹取山】 丹波らしい山です。山頂は立木で覆われて南に切り開き。黒井城趾と
西多紀の山が見える。地味な四等三角点。大正六年建立とある「雷大御神」も質素。
10分程小休止。また急坂をおりる。

【三和峠】 平坦になった稜線の先に場違いの金属板。「市島町」と「氷上町」の
町名板。三和峠というようで、右(西)の緩やかな植林の中へ独鈷の滝に繋がる道が
ある。「美和坂古道」というのはここへ登ってくるようだ。
 さらに緩やかな登りを行くと「岩滝寺上への分岐」とあり、縦走路から西の548m
ピークへの稜線分岐。

【愛宕山の登り】 いよいよ愛宕山である。その山容から覚悟はしていたものの、
いきなり急坂の登りが立ちはだかる。この登りは、本日のハイライトでした。
 雪と土の急斜面で登るために掴まる木が少ない。朽ちた木を掴もうものなら、滑落
してしまいそうなヤバイ登りである。キックステップで足場を確保し、白いロープに
頼りながら何とか登る。とは言っても高低差50m位か。どこかうまい巻き道があったの
かもしれないが...。
 この後は登りと平坦が階段状に2、3度続き、稜線上にしては立派な社の後ろに
飛び出るのでした。

【愛宕神社】 お社は京の愛宕さんの分社のような感じで、鐘を鳴らして無事を
感謝する。ノートがあったので記帳する。急登が大変だったことを記す。
 神社の前には西の斜面へ下りる道がある。里の人はここから登ってくるのだろう。
南に向かうとすぐ岩がありついつい登る。立て札があり、「京都愛宕山遥拝所」と
記してある。なるほど東の立木の間に愛宕山方面が見える。この岩、登るのをはばか
るほどの苔がついている。ここでおにぎり。なんせ、前回の向山縦走はシャリバテも
反省のひとつだったもんなぁ。

【愛宕山の下り】 さあ、最後の五大山へと向かおう。険しい岩稜が続く。足下注意。
ヒカゲツツジが多い。あと2週間もするとレモン色に輝くのだろう。ロープを伝って
下りる。北に弓なりの五台山稜線が見えた。南は鉄塔越しに五大山。この下りも景色は
いいものの、気を遣うヤセ尾根だった。
縦走尾根  
 五大山から五台山を振り返る  
【五大山】 この山の登りも朽ちた木のハシゴが険しさを彩る。山頂に着くと、「す
みれ組」の似顔絵が載った登頂記念板に思わずほっとする。幼稚園児でも登っている
やまのようである。丹波の幼稚園児、恐るべし。(^^;
1m程の松があり、東に白毫寺からの途がつく。五台山への稜線や多紀の山並みが良く
見える。西の氷上側には加古川の流れが西日に光る。
 これで今日の稜線歩きも終わり。下りの尾根筋を見極めて、丹波を堪能した一日を
終える。...と思ったのが大きな間違いであった。家に着くまで山歩きは終わらな
いというのを、改めて感じる下りが待っていたのである。

【丹波のヤブ】 道なりにおりていくと、巡視道標No.110,111,112と三つの矢印のあ
るポイントに着く。直ぐ下がNo.111の鉄塔である。2.5万図ではまだまだ先だろうと
トラバース気味に南へ採る。かなり歩いて、鹿の足跡を見、ちょっと行き過ぎかなぁ
と不安になる。北油良に下りるつもりが、南油良行ってしまいそうだ。右(西)へ行こ
う。時折、立木の向こうに岩を抱えた愛宕山が見える。
 No.110の鉄塔に着いた。ということは、高圧線と交わる405m地点のようだ。このま
まこの尾根を西に向かい北に逸れれば北油良に出れる。そう思いながら尾根を歩く。
道はハッキリしている。さて、その北向き。途中まで踏み跡があったが、どうも、
怪しくなってきた。下は植林。丹波の山はタダでは帰してくれないようだ。

【林道】 低木のヤブを下りて植林に出、沢沿いに下り、その少し上の荒れた小径を
歩いていくと伐採斜面の林道終点に出た。見上げると険しい面もちの愛宕山が立つ。
 やがて左手に堰堤があり、右の植林に「愛宕山登山道口」とある。ほぅ、ここから
登るのかぁ。さらに歩くと車止めの先に安養寺の前に出る。
愛宕山  
 林道終点から愛宕山を見上げる  
【里】 犬の散歩のおばさんが来た。「何処からきんさった。ほう、愛宕さんまで
行ってこられたか。険しかったろうねぇ。24日に村役の人が登ることになっとるが、
今月はどうかねぇ。」「神社に4人の名前が記帳してありましたよ。」「昨日は雪
だったけど、勤めの人が多くなったので休みの日に登りなさったんだねぇ。で、何処
から来られたの ? 」「川西です。あの峠を越えて香良へ出ようと思いますが、通れ
ますか ? 」「峠道は昔は通っていたが、今は誰も使わないねぇ。ササの茂るヤブだ
よぉ。」(道脇の笹を指して)「こんな感じですか ? 」「そうそう。」
 ということで、北油良から香良への峠越えをあっさり諦め、県道へ向けて歩く。
振り返ると険しい雰囲気の愛宕山が聳える。歩いてみると里も良いものである。
 子供が話しかける。「おっちゃん、何処行ってきたん?」「あたごやま」「?」
「あたごさん」「あぁ、あたごさんね。」

【すみれ】 長い舗装道の歩きはちょっと応えた。バスがないかなと時間を見れば
あと20分。歩いた方が良さそうだ。それにしても飛ばす車ばかりだなぁ。歩行者に
なって初めて判る感覚。西日を担いだ安全山がきれいなトンガリに見える。
 香良口では、歩く方に五台山が聳える。やっと着いた駐車場には夕日が射す。
車を切り返すと、後の土手にタチツボスミレが一株微笑む。
....なんてドラマチックな山行の幕...。(^^)



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1999.3.29. BY M.KANE