title 車線変更のコツ-実際に隣へ・・・

 
 スピードの基本的な考え方が分かったところで、実際に道路で隣車線へ移ることを考えてみよう。普通の場合ならば、左の車線は流れが遅く、右へ行くほど速くなっていくのだけれど、実際にはそうとも限らない。右車線が右折レーンの場合などは、一番右の車線だけ止まっているようなこともあるし、高速道路でも一番右の追い越し車線が最も速いペースで流れているとも限らない。追い越し車線が一番速いのは当たり前だけど、中には「制限時速を守ってますよ」と言わんばかりに平気で迷惑をかけ続けるドライバーも多い。場合分けすればキリがないけれど、これからは実際に、自分よりも速いペース・同じペース・遅いペースのレーンへ移っていくときのことを考えてみよう。ここでは便宜上右の車線ほど流れが速いということにしておくのでそのつもりで見てほしい。
 
★ かなり遅いペースの流れに入ろうとする
 
 中央車線を走っていて、このままだと左折できないために左のレーンへ移ろうとするときなど、入ろうとする車線の流れが著しく遅いケースは多い。実際にはほとんど止まってしまいそうなペースでノロノロ動いていることが多く、正直言って何事もなく入れてもらえる可能性は低い。一つだけ先に断っておくと、どうしようもない場合を除けば、交差点の中に入ってしまってからレーンチェンジするのは絶対にご法度。車線変更禁止区域であるからという理由もあるけれど、交差点を横断しようとするクルマが、後ろもしくは横後方に注意を払っている可能性は低い。ただでさえ事故の危険性の多い交差点を、より危険にする必要などどこにもない。多少遠回りになってもムチャをしないようにしよう。これはなにも交差点に限った話ではなくて、多少ムリくさいと感じたら素直に通り過ぎる勇気が必要ということだ。
 
 「入ろうとする車線の流れるスピードが基準」だから、当然スピードを落とさなくてはならない。しかし急ブレーキをかけていきなり横へ移動しようとすれば、自分の後ろのクルマに追突してくれと言っているようなものだし、隣のクルマにとっても不快。とりあえずウィンカーを早めに出して、レーンチェンジの意思表示をすることが先決だ。このとき、ウィンカーを出せばいいのではないということに留意してほしい。相手が認識できてはじめてウィンカーの意味があるのだから、チカチカ点滅している時間はかなり長くなる。チコンと照らして入る人、ひどいのになると入ってから申し訳程度にウィンカーを点ける人もいるけれど、とにかくウィンカーを光らせてから一呼吸置くまでは、絶対に隣へ移らないこと。
 
 後ろのクルマの注意を喚起したら、入ろうとする地点のあたりをつける(A)。入れそうなクルマの後ろに入るという鉄則からすれば本来βの位置に入るべきだけど、この場合には車線ごとにスピードの差があるので、無理に急ブレーキをかけてスピードダウンすると危険なことがある。後ろのクルマが近すぎなければβの地点に入るのがよいのだが、左車線の進みが遅すぎてα地点に入らざるをえない場合もしばしば。そこで今回は、αに入るパターンを考えてみよう。
 
 自分のクルマの方が速いので、前に入ろうとするクルマ(ここでは真中の濃い青)を追い越すことになる(B)。しかしこのまま走っていってしまってはどこまで行ってもレーンチェンジできないので、微妙にスピードを落としていって、前のクルマと並ぶか少し後ろくらいで同じスピードになるよう調節する。このときの重要ポイントは、青いクルマの前ではなく、その前の薄いグリーンの後ろに入ろうとしているように思わせること。そのために一つ前のクルマと少しの間並走し、青いクルマに「お先にどうぞ」と思っていただくのだ。これは基本にして最大のコツでくどいくらいに書いたことだから、よく分かってもらえることだろう。道を走っている以上、どうしても前に入らなくてはならないことがあるけれど、そのときにいかに前に入っていると思わせずに入るかが、スムーズなレーンチェンジの決め手。
 
 Cの前のクルマ(グリーン)と自分(黄色)の位置関係を見てみると、Bのときとさほどかわりない、というか徐々に後退している感じがわかるだろうか?これこそが青いクルマに「入れてあげよう」と無意識のうちに思わせるワザ。距離が短くてなかなか並走できないことも多いけれど、これをするだけで随分入りやすくなる。焦る気持ちを抑えてゆっくりと、安全かつスムーズかつ速い運転に最も重要なことだ。
 
 そして…うまいこと隣へ移ることができれば、Dのように後続車の迷惑になることもない。実際にやってみると分かることなのだが、ウィンカーを出している時間は意外と長い。わずらわしいと感じる人もいるかもしれないが、密室空間の車内から他のクルマへと伝えるメッセージなんだから、大切に使ってあげようじゃないか。もしもかわりにクラクション・パッシング・手振りで合図するなんてことを想像してみると…やたらと喧しそうだ。それでも車線変更が終わった後には、きちんとウィンカーが戻ったことを確認するクセもつけてほしい。せっかくのウィンカーが勘違いの元になっちゃいけないから。
 
うまいことスピード調節ができればスムーズに入っていけることと思うが、場合によってはほとんど止まってしまって時間がかかることもある。そんなときには後ろのクルマが右側をパスできるように、幅寄せと思われない範囲で左側へよっておくのも重要。ただしそれでも車体の向きは道路と平行に保っておかなくてはならない。流れの止まっている車線に斜めに入り込もうとしているクルマをよく見かけるが、斜めを向くとそれだけ占有する幅が広くなる。本人に悪気はなくても他のクルマの迷惑となってしまうので気をつけよう。
 
★ 少し遅いか、同じくらいの流れに合流する
 
 実際最も多いと思われ、しかも一番わかりやすいのがこの場合。スピードの差があまりないのだから、やはり気持ちよく入れてもらうにはの考えに基づいてスムーズに入っていけばいい。前のクルマの後ろに入ろうとするという基本さえ守れば(もしくは守ろうと心がければ)、そんなに苦労はしないのではないだろうか。
 
 ただしこの場合に気をつけなくてはならないのが、スピードの考え方。遅いペースにあわせるときは勿論だが、相対的なクルマの動きとしては後ろに下がっていくような雰囲気になる。このときにスピードが落ちすぎると後ろのクルマに迷惑がかかるので、車線変更後に同じくらいのペースを保てるような速度管理が必要。とは言えさほど難しいことではなく、「スピードを落とさなきゃ」と意識しすぎなければそれでいい。実際に前のクルマが近づいていれば、たとえ一定の速度を保とうと思っていても、反射的にアクセルを緩めてスピード調節しているもの。もしも車線変更後、前との距離がはじめから開いていて、真後ろのクルマにピッタリつかれてしまうような人は、むしろ加速するくらいのつもりでアクセル操作したほうがいいこともある(あくまでも気持ちの上の話で、実際のクルマの動きとしては速度を保つのがやっとのことが多い)。逆に前のクルマに直後についてしまう人は、もう少しアクセルを離そうと意識した方がいい。このへんは人それぞれ、感覚によって差があるので断言はできないが、思い当たる節があれば試してみてほしい。
 
★ 速い流れに合流する
 
 苦手な人が多いだろうと思われるのが、速い流れに移ろうとする場合。とりあえず自分の方が遅いのだから、ムリヤリ前に入り込もうなんて考えを起こしてはいけない。どんなに加速性能の良いクルマでも、追い抜きをかけるほどのスピード差を生み出すことは難しいし、そのための加速をしていたら前のクルマにドカンだ。ただしもし前のクルマがいないのであれば、自分の車線で加速して相手の少し後ろを並走してスピードの差をなくしてやるのは良い方法。その後につけてきたクルマが車間を詰めてこなければ(入ってもいいですよという意思を感じたら)スムーズに移れることだろう。
 
 速い流れに合流するときの基本は、隣車線の流れの速さにまでは加速しなくてはならないということ。元の車線にいながらにしてそれができるのであれば容易いのだが、普通の道路では難しいことが多い。ただしそれは、重要なコツというかファクターを考慮に入れていないから。それは…
 
前のクルマとの車間距離を十分に開けておくこと!!
 
 車線変更は対象となる車線の流れが最も大事なので、どうしても横方面へ注意を払いすぎてしまうもの。しかしながら速い車線に移ろうとすれば、一時的に加速しなくてはならない。ということは、前のクルマに追突しないようにもっと注意する必要がある。車間距離を十分に取っていれば、その確認作業が楽になるのだ…が、本当に重要な理由はもっと別のところにある。
 
 左のアニメーションは、右と左であまりかわるところのない状況なのだが、左の車間をきちんととっていたときと、右のそうでないときとでは、最終的な赤いクルマとの車間に決定的な差がある。アニメーションだから分かりやすく作っているのだろうと思われる向きもあろうが、大げさでもなんでもない。むしろ実際に起きる状況の方がシビアだと思ってもらいたい。
 
 それではアニメーションを解説していくことにしよう。先ず自分の前のクルマ(シルバー)の進み方と、隣の青いクルマの進み方を比べてみてほしい。一定時間ごとに等間隔に進んでおり、しかもその速度差はかなりあることが読み取れるだろう。このときAとaの両方が同じタイミングでレーンチェンジすることを決心したと仮定しておく。
 
 Bとbのどちらも車線中央へと寄っていき、車線を移る用意をしているのが覗えるが、このときの自車(黄色)の位置には多少のズレがある。このズレこそが車間距離によって生み出されたもので、レーンチェンジを安全に行えるか、それとも危険な行為になってしまうのかを決定するのだ。理由は簡単で、車線変更をはじめてから実際に加速していくわけだが、前のクルマとの車間が詰まっていると、隣の車線へ移ってからでないと加速し始められないから。実際には、cの状態になったときにレーンチェンジできたものと安心してしまい、本当はもっと速いスピードで流れていることが分からず、アクセルを踏み足りないことが多い。その結果赤いクルマの急ブレーキを誘ってしまうのだ。
 
 加速しながらレーンチェンジするときのスピードを、概念的に表したのが右の図(太いところほど加速している)。つまり「移ってから加速すればいいや」というのでは間に合わないので、とにかくレーンチェンジが済むまでには概ね加速を終えているのが望ましい。そして、隣へ移ってからは前のクルマとの車間調整などの微調整に留められれば申し分ない。どんなシチュエーションでも可能なわけではないが、可能にするための最大のコツが車間距離というわけだ。
 
 言われてみればそう難しいことでもないのに、実際にはなかなかできないのは、加速し始めるまでについついスピードを上げてしまうので、前のクルマに不必要に近づいてしまうため。ルームミラー・サイドミラーや目視などで「ここぞ!」と思うまでは、じっと前のクルマと同じペースでついていくのが密かなテクニックだ。そしていざ移ろうとするときには腹を据えてアクセルを踏むこと。
 
 高速道路への進入なども、加速レーンでしっかりとスピードを上げてやることができれば、そんなに難しいことはない。ただし時折ありがちな落とし穴は、前のほうにオドオドしながらなかなか入れないでいるクルマがいる場合。こんなときにもすぐ後ろに迫って煽るようなことはしないほうがいい。二台続けてレーンチェンジしていくには結構スペースが必要だから、思わぬ危険を招いてしまうことになる。第一自分までスピードを上げられなくなってしまうのが痛い。そんなクルマが前方にいるといち早く察知したら、加速レーンに入るまでのスピードを控えめにしておき、車間を多めに開けておくほうが後々容易になることも覚えておこう。そうすればいざ加速レーンに入った際に、思う存分アクセルを踏んで隣車線のスピードに追いつけるのだから。
 
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