title 車線変更のコツ-基本にして最大のコツ

 
 どーして入れてくれないのか分かったところで、隣の車線へ移るタイミングを考える前に、まずは自分がいったい何をしたいのか考えてみよう。レーンチェンジをしているんだから、そんなもん隣の車線に移りたいに決まっている。まさにその通りで、当たり前の話で、しかもここに全てのカギが眠っているのだ。なにを言いたいのか分からない人のために言い直せば、要するに隣の車の前に出たいのではないということ。このことに気づきさえすればあとはいたって簡単で、隣の車との位置関係や、移るタイミングになんて頭を悩ます必要なんてほとんどなくなる。レーンチェンジを気楽に行うための、最も簡単でしかも役に立つ考え方、というか気持ちの持ち方は…
 
こいつの前に入れるかな?と思ったクルマの後ろに入ろうとする
 
ってこと。少なくとも相手の前ではなく、後ろに入るよう心がけるのが最大の秘訣だ。なんだそりゃぁとお思いの方も多いだろうけど、本当にただこんだけのことでムチャクチャ入りやすくなる。勿論他のクルマとのスピードの兼ね合いや、レーンチェンジに要するスペースの問題なんかはいろいろあるけど、とりあえず相手との位置関係についての基本はこれだけだ。もっとも車線変更には遅いクルマや危ないクルマを抜かすのが目的ということも当然あるのだが、それは他の機会に譲ることにしよう。
 
 聞いてみれば実に簡単で、また367がテキトーなこと言い始めたと思われるかもしれないけど、相手の後ろに自分の位置を移していくことにはかなり大きな意味合いがある。流れの中でレーンチェンジするってことは、少なからず他のクルマと干渉する。クルマを運転しているのは当然人間なんだから、人間同士の生臭いドラマが展開されてるってことに他ならない。要するに車線変更には心理的な要素がたくさん絡んでいるのだ。
 
 自分の車線前方の路肩にバスが停まっているので、右車線に移ろうとしている状況を考えてみよう。バスはハザードを出して長いこと停車していそうなので、是が非でもスムーズにレーンチェンジしたいところ。はじめに白いクルマの前に入ることを考えてみると、気持ちの上ではAの矢印のようなラインを描くことになる。走っている際中だから前のバスがどんどん迫ってきて気が焦る…というわけで、白いクルマの前に入ろうとすると、緑のクルマの後ろというよりも本当に白いクルマの直前に入ってしまうことが多い。
 
 なぜかといえば自分にあわせて隣のクルマも走っているのだから、Aでの自分と白いクルマの距離の差を広げようとするには、相当のスピード差がないといけないのだ。同じくらいのスピードで斜め少し前を走っているクルマがレーンチェンジしてきたら、白いクルマの鼻先に入ってしまうのは間違いない。相手の視界から自分のレーンチェンジの様子を眺めてみれば、ホラ、ただの幅寄せとしか思われないのだ。これでは絶対に怒りなくして道を譲ってもらうことはできないし、きっと誰でも腹がたつでしょ? 
 
 実際にはもっと前に出ていないと横に動かないと主張する人も多いと思う。しかし、たとえもっと前にいたとしても、一番初めにはそのクルマの後ろに入ろうと考えるべきだ。そうじゃないと、「どれくらいのスペースのときは…」とか場合分けをしなくちゃいけなくなって、とっさの判断が遅くなる。とにかく隣車線のクルマどれかの安全な後ろを目指し、どいつの後ろに入るか迷ってしまったときには、とりあえずあとの一台をターゲットにしよう。これはあくまでも心構えであって、必ずそのクルマの後ろに入るということではない。ここらへんのちょっとしたところに、このコツのスペシャルな部分が潜んでいるんだ。
 
 さて次には相手(白いクルマ)の後ろへ入ろうとしてみよう。レーンチェンジの意識としてはCの矢印のようなラインなのだが、当然ながら前進しながら後ろへ進むなんてことは絶対にありえない。D・Eと自分のクルマを追っていけば、確実に前に進んでいるのが分かる。つまりクルマの位置関係ってのは相対的なものだから、隣のクルマが自分より先に出たならば雰囲気的に後ろへ下がったような気がしてしまうものだけど、実際にはちゃんと走っているってことだ。はじめにも書いたように、やりたいのは車線変更であって隣のクルマとのレースじゃない。白いクルマの前だろうが後ろだろうが、前へ進みながらバスをパスできさえすればそれでいいじゃないかと気持ちを切り替えることだ。その方が車線変更し切れなくてストップしちゃうより数段いいからね。
 
 ここまで見てくると、隣車線に移るためにチョイと我慢しなさいってことみたいだけど、「前に入れるかな?と思ったクルマの後ろに入る」ってワザはそんな甘っちょろいもんじゃない。レーンチェンジに有効なワケがちゃんとあるのだ。 
 
 とりあえず後ろを走っているシルバーのクルマからの視界を考えてみよう。C〜Eの画像の視点が変わっただけだけど、どうだろう?自分のクルマはただ単に平行移動しているだけに見えないだろうか?ムチャな車線変更で腹が立つのは、自分のクルマを押しのけようとして入ってくるときだ。前のほうを走っているクルマが平行移動しようが、癪に障る人なんてそういるもんじゃない。
 
 しかも素晴らしいことに、シルバーのクルマが自分の前を走っている白いクルマに注意を払っていない確率はかなり低いと言っていい。自分の注意の向いているクルマの横に、ウィンカーを出して中央へ寄ってくるクルマ。前を空けようとするかはともかくとして、シルバーと黄色の二車が接近するかなり以前から、レーンチェンジの意思表示をちゃんと受け取ることができるのだ。ウィンカーを出さずに寄ってくるだけじゃなんの意味もないけど、道をうまく走り抜けるためには、自分の意思をなるべく早く、正確に、伝えたい相手に知らせることが重要なのだ。 
 前を譲ってくれる可能性を上げる要素はまだある。今度は前を走っている白いクルマとの位置関係を見てみると、左のアニメのように後ろに下がりながら入ってくるように見える。勿論クルマ自体は前に進んでいるのだけれど、やっぱり他のクルマとの相対的な動きがドライバーの気持ちに大きく影響してくる。

 白いクルマにしてみれば、隣を走っているクルマが自分の後ろに入ってくるのなんて、はっきりいってどうでもいい。つまりなんの影響も与えないのは自明だ。そして問題のシルバーのクルマにとっては、さっきは「平行移動」と書いたけど、実は前のクルマが下がってくるように感じるのだ。この理由は簡単で、後ろから黄色いクルマだけを見ているわけはなくて、白いクルマと両方を無意識のうちに認識してるから。白いクルマが前へ進んだなら、黄色いクルマが下がってくるように見えるのは当たり前だね。
 
 さて、前のクルマが下がってくるとなれば、ただの平行移動よりも道を譲ってあげたくなるのが人情。なにも親切心でやるわけじゃなくて、自分(シルバー)にとってなんの損もなさそうに感じるってだけ。考えてもみてほしい、もともと前にいるクルマが場所をかえただけだから、自分の順位は変動がないのだ。 
 相手からの利点だけじゃなくて、自分にとってもメリットがある。相手の後ろに入るってことは、相手との位置関係は前を見ながら掴むことができるってことだ。ムリして前に出ようとしてサイドミラーやルームミラーで距離をはかるよりずっと楽ちん。一刻も早く終わらせたいレーンチェンジなんだから、できるだけ煩雑な動作は避けてやるのが吉だ。
 
 最後に、隣のクルマとの位置関係から言って、前にでも入れそうな場合のことを考えてみよう。前にも書いたけど、こんなときにはとりあえず後ろにつこうと考えて、ウィンカーをチカチカさせつつ隣と同じくらいのスピードで併走してみることだ。ターゲット(ここでは白)のクルマが前に出ようとしてスピードを上げたならば、素直にその後ろに入ろう。そして…車間を詰めるでもなく自分を前に入れてくれそうな気配を感じたならば、ご好意に甘えて前に車線変更しよう。このとき多少スピードを上げて、なるべくその前のクルマ(緑)の後ろに入ったような印象を与えるようにすれば申し分ない。
 
 そんならはじめから「後ろに入ろう」なんて考えなくてもいいじゃないかと思う向きもあろうが、それは違うのだ。もともと前に出なくてもいいと考えているから、実際後ろになってしまっても穏やかな気分でいられるのだ。しかも前を譲ってもらった時には、期待していなかった幸運に巡りあった気がして嬉しい。期待を裏切られて前に入れない時とは比べ物にならないヨ。気持ちにゆとりと楽しさを持つのが世渡り上手の一番のコツなのだ。
 
 まだまだ細かいコツはいろいろ残っているけど、レーンチェンジで一番大事なのはここまでのこと。お金がかかるわけでもなく、ただ単に気持ちの持ちようひとつだから、一度TRYしてみてほしい。試してみてもらえればきっと…
 
 もっと詳しく知りたい方のために、スピードの考え方ヘ続く。
 
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