[ひと・声]アイススレッジスピードレースの山口善久さん


1997年9月6日発行 毎日新聞なら面より転載



◆アイススレッジスピードレースの山口善久さん(31)
      アイススレッジは、スピードスケートの刃が2本付いたそり。ホッケーとスピードレースの2競技があり、レースはスピードスケートのリンク上を、クロスカントリースキー用ストックでこぎ、タイムを競う。山口さんは、今年3月の長野パラリンピック(障害者五輪)のプレ大会で、百、五百、千、千五百メートルの全種目でメダルを獲得。日本ナショナルチームの一員として7日から米ウィスコンシン州ミルウォーキー市での強化合宿に参加する。
 天理市出身。高校2年の夏、骨肉腫と診断された。医師に「切らなかったら死ぬ」と言われ、2カ月後に右太ももを切断。高2の2学期を休んで復学し、全寮制の学校では、級友らが自然に手を貸してくれ、山口さんは「苦労って、感じないままでしたね」という。
 19歳の時、一緒に入院していた友人らの誘いでスキーを始めた。約1年後、「国際大会に出たい。スキーのトレーニングに」と車いすバスケットボールを始め、バスケットボールと陸上競技で身体障害者の国体に計7回出場、優勝や上位入賞の経験も。
 「長野パラリンピックに出たい」と一昨年、スキーを再開。日本パラリンピック大会の大回転と回転競技に出場したが、スタート間もなく転倒するなど、散々の成績。「世界へ」の夢をあきらめかけたが、昨年から始めたスレッジで頭角を現し、あっと言う間に世界のトップレベルに。短距離が得意だ。
 都祁村に在住。車いすバスケチームのマネジャーだった妻美加さん(32)、長女舞子ちゃん(8)、二女瑞季ちゃん(3)との4人暮らし。天理市のシャープ工場に勤め、パソコンの画面などの品質管理を担当する。上司の河本健夫さんは「彼は職場全員の誇り。合宿中、仕事のことは心配せずに、スレッジ一筋で頑張ってほしい。来年の本番は、自分が納得できる成績を残して」とエールを送る。
 パラリンピックの競技は柔道の体重別のように、障害の種類や軽重でクラスが分かれ、山口さんは長野で下肢不自由者のうち、障害の軽いLW11クラスに出場する。競技は3月7、9、11日の3日間、長野五輪のスピードスケートや長野パラ開閉会式会場にもなる「エムウェーブ」で。山口さんは「ノルウェーなどの世界の強豪を抑え、金メダルを取りたい。結果は最初に家族に伝えたい」と話す。
 同競技の三井利仁・長野パラリンピック選手強化委員は「山口選手は冬の環境がない奈良に住み、コンディション作りが大変だが、長野パラでは、きっとメダルを獲得できる」と大きな期待をかける。【山口一朗】

◆選手らサポートを
                       長野パラリンピック冬季競技大会のアイススレッジレース日本ナショナルチームは、企業や個人からの金銭的な援助を求めている。
オリンピックに比べ、パラリンピックの選手は国などからの支援が少なく、今回の合宿も、選手らが旅費などを負担する。三井さんは「スポーツファンのサポートを期待している」と話す。問い合わせは、東京都多摩障害者スポーツセンター内(0425・73・3811、ファクス0425・74・8579)の三井さんへ。





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