長野で開催の
パラリンピック関連施設に車いすが入れない
市民が現地調査


1997年9月20日発行 毎日新聞大阪本社夕刊 ボランティア面「希望夕刊VV」より転載



 来年2月に長野市を中心に行われる長野冬季五輪スピードスケート競技会場で、五輪翌月のパラリンピック(障害者五輪)のメーン会場となる「エムウェーブ」の座席や、長野県内のホテル、交通機関などが、障害者にとって非常に使いにくくなっていることが、市民グループ「もっと優しい旅への勉強隊・学び隊」(事務局・東京都渋谷区)の現地調査で分かった。同会は「長野パラリンピック関連施設報告書」(A4判、84ページ)をまとめ、「受け入れ側と大会を見に行く人の両方に活用してほしい」と話している。【山口一朗】

 調査は、障害者6人(うち車いす利用者2人)を含む23人が参加し、今年3月8、9両日に実施。地元のボランティア団体「ながのパラ・ボラの会」などが協力した。
 参加メンバーらは公共の交通機関や車いす用リフト付きワゴンなどで移動し、「施設」「ホテル」「白馬地区」の3グループが、パラリンピック施設や交通アクセスなどの15カ所で行った。現地だけでなく、東京から長野までの鉄道や高速道路のサービスエリアなどの使い勝手▽現地のホテルが盲導犬を受け入れるか、室内の設備が車いす利用者でも使えるか――といった点や多くの観光客が訪れる善光寺などでの体験を細かく分析。図や写真も使い、率直な感想を書いた。
 エムウェーブでは、6400ある座席のうち、車いすで通れる通路に面したものは全くなく、車いすで観戦できる場所も15〜20カ所に限られているなどの不便さが明らかに。アルペンスキー会場に近い同県白馬村内のホテルでは、「バス・トイレの中は広いのに、入り口が狭く車いすが入らない」▽「長野市内のレストランは、車いす用トイレを備えたものが見つからない」――などの問題点も分かった。
 こうした不備を指摘され、「パラリンピックまでに改修を行いたい。障害者対応の設備基準を教えてほしい」と積極的に申し出たホテルがあった一方、「重箱の隅をつつかないで」という施設も。調査に参加した人たちは「整備の遅れというより、設計段階からバリアフリー(障害をなくすこと)への配慮が欠けている。次世代に役立つ本物のノーマライゼーション(健常者も障害者も共に当たり前に生きられる)社会を構築するために、政府や県などは、パラリンピックを生かしてほしい」と要望している。
 報告書は1000円。売上金の一部は、障害者関連事業に使う。問い合わせは同会事務局のSPI(03・5485・0651)。





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