クラウンへの道
プライズ・テストの頂点を極めたゲレンデのスペシャリストたち
1990年6月10日発行
 ノースランド出版「Ski Graphic」1990年6月号より転載

(「見切り発車」版=1997年3月12日作成、第2版=3月23日夜更新)



念願のクラウンは、5度目の挑戦でようやく取得

山口一朗(24歳・毎日新聞記者)

「クラウンへの道」の記事左面「クラウンへの道」の記事右面



毎日新聞記者として、社会への第一歩を踏み出す


 「今シーズン限りで板を脱ぐと、もうみんなに宣言してしまいました。やっぱり、脱が ざるを得ない仕事についてしまいましたから……」
 山口一郎さん(24歳)は、今春から毎日新聞記者として社会への第一歩を踏みはじめた。 高校時代に合州国・ミシガン州に留学経験を持ち、国内の資格においても英検準一級を取 得。“国際化の時代”と呼ばれる昨今、最も身近な外国語である「英語」を学んできた成 果を今度は日本全土、いや、世界に向けて羽ばたくジャーナリストとして歩み始めること になった。
 「毎日新聞の一面に『余録』というコラムがあるのですが、将来はその執筆者になりた い」
 大志を抱くのは大切なこと。が、それをきっぱりと言い切る姿勢はまさに彼の真骨頂。
さて、そんな彼がスキーバッジテストの最高峰、クラウン・プライズを取得したわけで あるが、いかなる経緯でたどり着いたのであろうか。

本格的なスキーへのきっかけはトイレの張り紙に


「初めて板を履いたのが3歳頃。ですが、中学、高校時代にはほとんどスキーをやりま せんでした。それには理由があって、両親とも体育教師だったんですが、『競技スキーを やるように』とよく言われていました。それでやってみた所、ポールがくぐれなくて……」
その時からなんと“スキーが嫌い”になったとか。また、中学時代(富良野東中)は隣の クラスに田端夏葉(全日本スキーデモンストレーター)がいて、当時の全中での活躍、そし てその滑りを見せられていた。そのせいもあってか、次第にスキーに対してコンプレック スを抱くようになる。
しかし、スキーをやらなかった代わり、剣道と水泳に打ち込む。また、高2の時は合州 国・ミシガン州に留学。まじめで熱心な性格は「剣道2段・水泳2種指導員、英検準一級」 といったキラリと光る資格をズラリと取得するに至る。高校卒業後、一浪を経て関西大法 学部に入学。そこで、フトしたきっかけから関西大学スキー同好会ZOOに入部すること になる。嫌いであったはずのスキーをまたどうして?
「校内のトイレに張り紙がしてありまして、それがZOOの新人勧誘のビラでした。内容 を見ると、『2級、1級、準指、正指導員取得者多数!』と書かれてました。で、とりあ えず1級が取りたかったのと、今まで全国大会というものにでたことがなかったので、そ こでがんばって出場してみよう(全国学生岩岳スキー大会)という気持ちに変わって」

スキーの上達は順調、が、なぜかクラウンは四タテ


1年の時に1級、2年ですでにテクニカル、また関デモ(関西学生基礎スキー大会)の 大会においても新人戦5位、2年時、個人戦19位と順調に進む。そして実力も備わった3 年時、待望のクラウン検定を迎えることになるのだが……。
 2月の岩岳、3月の栂池、4月の栂池、4月の志賀、どうしたことか、なんと立て続け に不合格。その年の3月の関デモの個人戦で2位と、レベルの向上は証明されているはず。 が、いかんせんクラウンだけは取得できない。いずれにせよ、今年の検定は終わった。が、 諦めるわけにはいかない。学生時代最後となる来シーズンこそはと、新たな闘志をかき立 て……。

  平成2年2月18日、午前10時、青空の広がる岩岳スキー場。バーンはザラ目雪とはい え比較的滑りやすい。そんな中での5度目のクラウンへの挑戦が開始された。
「午前中がウェーデルン、パラレル、総合滑降、昼を挟んで午後はステップとゲレシュプ。 全部終わってみての自己採点は350点ギリギリ」
 結果2点オーバーの合格。そこで最も大きな勝因であるが、
「リフトに乗っている時、滑りの中で気の付いた点をメモするんです。通称山口メモっ て呼ばれているんですが」
やはり、新聞記者への道はすでに学生時代から形成されていた!




SKI DATA BANK


●スキー歴
約21年(途中ブランク有り)
●年間滑走日数
約70日
●一日の平均滑走時間
約6時間
●使用マテリアル
スキー/合格時=ロシニョール4G−K203センチ、オガサカ・シリカ200センチ、ブーツ /サロモンSX92エキップ、ビンディング/サロモン957エキップ、チロリア490RD、ポ ール/オガサカRC2、オガサカRC3、ゴーグル/アックス
●所属
関西大学スキー同好会ZOO(大阪府スキー連盟所属)
●資格取得歴
2級=S53年(12歳・4回目合格) 1級=S62年(21歳・初回合格) テクニカル=S63 年(22歳・2回目合格) クラウン=H2年(24歳・5回目合格)
●クラウン合格時の得点
パラレルターン=71点、ウェーデルン=71点、ステップターン=71点、総合滑降=68点、 ゲレンデ・シュプルング=71点、制限滑降=○
●得意種目
ゲレンデ・シュプルング
●不得意種目
総合滑降
●オフトレーニング
今まではクラブの練習
●チューンナップ
お店に出す
●スキー以外の資格
剣道2段、水泳2種指導員、英検準一級、電話級アマチュア無線技士
●趣味
アマチュア無線
●好きなスキー場
岩岳スキー場、黒姫スキー場
●好きなスキーヤー
小野塚喜保



彼のスキーを客観視


全日本スキーデモンストレーター

小野塚 喜保



性格はまじめで丁寧、だからアドバイスなんかもよく聞いて、それをヒントにきっちり 自分の中に取り入れ、またみんなともいっしょに取り組んでいます。
滑りも性格がよく出ているようで、自分が納得するまで練習しないと気が済まないタイ プ。滑りの感覚を非常に大切にし、今、すごく伸びています。今後、彼が発展していくた めの課題としては、言われたことのみをやるのではなく、やはり自分自身で何をすべきか 考えていくことです。また、まじめに取り組むだけでなく、もっとスキーの楽しさを味わ っていくような所も必要でしょう。
技術的に言えば、典型的な基礎スキータイプ。スピード系に弱さが見られます。もっと 雪面を切っていくような滑りの応用技術を身につけること。そのためにはリーゼンの練習 が効果的なのでは。



●PROFILE
やまぐち・いちろう
昭和40年10月20日(24歳)血液型B 身長184センチ 体重80キロ 胸囲98センチ
生まれは北海道・士別市。中学は富良野東中で田端夏葉(全日本デモンストレーター)の隣 のクラスだったとか。高校時代は旭川、なお高2の時一年間アメリカへ留学。大学は関西 大学。(本格的なスキー始動はその時から)現在は毎日新聞記者1年目、修業の身である。



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