山口記者のスキー指南
(「見切り発車」版=1997年2月18日作成、第4版=3月23日未明更新)



奈良支局・山口記者のスキー指南
5つのポイント 読者だけに教えます


1994年1月15日付 毎日新聞「近畿新聞」より転載



プルークの姿勢  ウインタースポーツのファンにとっては心躍る季節です。北海道で生まれ育ち、学生時 代、スキーに打ち込んだ私もその一人。「スキーがうまければ女性にもてる」という神話 がウソなのは私が身をもって証明していますが、「パウダースノーをけたてて、さっそう とシュプールを描けたら」との夢はだれもが抱くはずです。そこで、白馬・岩岳スキース クールの元指導員で、全日本スキー連盟基礎スキー技能テストで最高位のクラウン・プラ イズの資格をもつ私が、上級者にも意外と知られていない上達のための五つの必勝ポイン トを近畿新聞読者だけにお教えします。
(奈良支局・山口一朗)

(1)基本はやっぱりプルークボーゲン
 最初に覚えた「八の字」姿勢は今も万全ですか? 「イエス」と答えた人は、きっとウ ソつきです。私は今もマスター出来たとは思っていません。プルークの姿勢がうまく出来 ていたら、ちょっと体重をかけるだけで自然にターンできます。大切なのは、両足と左右 のスキーがそれぞれ、きれいな二等辺三角形になっていることです。うまくターンできな い人は三角の形がいびつになっていませんか。

(2)両腕は“曙のまわし”を抱えるつもりで

 基本姿勢としてイメージしてほしいのは、やじろべえ。バランスよく、手を大きく広げ ています。初級者はひじを曲げたり、肩がガチガチになりがちです。大きなおなかの関取 と四つに組むように、ゆったりと構えると、上体が安定します。さらに両方のストックの 先がいつも雪面に触れていれば言うことはありません。

(3)下半身はひざよりも足首を曲げよう

A=〇       B=×

〇のつく姿勢=A×のつく姿勢=B

 まず、一九九〇年二月の全国岩岳学生スキー大会に出場した時の私の雄姿(?)を撮影 した二枚の写真を見てください。斜度や雪質は違いますが、高い姿勢でスキーをコントロ ールするAのほうが明らかにいい滑りです。Bはおしりが沈んでスキーの先が雪面から浮 き上がり、ひどい姿勢です。
 この姿勢の善しあしを決める大きなポイントがスキーと上体をつなぐ三つの関節、つま り足首、ひざ、股(こ)関節にあります。どれもが体を支え、一方で雪面からのショックを 吸収してくれますが、スキー板に最も近い「足首」は特に重要です。
 足首を十分に曲げずにひざだけを曲げようとすると、ブーツよりもおしりが後ろ(斜面 の上方)に残ってしまいます。こうなると、おしりの重さでスピードがどんどん出て、コ ントロールがきかなくなります。足首をしっかりと曲げて、おしりを支えれば、ひざや股 関節は自然と適度に曲がり、スキーの操作はかなり楽になります。

(4)スキーを閉じられないなら閉じなくてもいい

 スクールの講習生から一番多く質問されたのは「パラレルターンを覚えたいんですが、 どうしたら足をくっつけて滑ることができますか」ということでした。「くっつけないの が一番いい」というと、みんなポカンとした様子でしたが、ものは考えようです。どんな 状況でも上手なプルークボーゲンで滑れるようになることが先決です。
 プルークにしたスキーの幅を、最初は広くても段々と狭くしていけばいいのです。「パ ラレル」とは「平行」という意味で、無理をして「くっつける」ことではありません。乱 暴な言い方ですが、限りなくパラレルターンに近いプルークボーゲンをすれば、百メート ル下にいる人にはだれもプルークとは気づかないはずです。やがては本物のパラレルター ンにも近づくでしょう。
 足を広げ、ゆったりとしたスタンスで滑る「ブライト」(英語ではブロード)は現在の 日本のスキー界でも主流です。「足を開く方が安定する」というのが私の実感でもありま す。

(5)易しいことから始めよう

 緩い斜面から急斜面▽短い距離から長い距離▽粉雪からザラメやアイスバーン▽整地斜 面からコブ斜面や新雪・深雪――という具合にステップを踏み、無理せずやってみてくだ さい。一方、斜面などの条件をいろいろと変え、できる範囲で幅広い技能の練習をするこ とも効果的で、反復練習だけよりも早く上達します。
  ×  ×  ×
 このほか、長距離ドライブなどで疲れているのに滑ったり、準備体操もせずにゲレンデ に出たり、酒に酔っての滑走は問題外です。岩岳スキー場では、東京から徹夜でドライブ して到着後、すぐにリフトで山の一番上まで登って滑走し、三十秒後に転倒して大けがを したという初心者のスキー客もいました。最低限の心得を甘くみると、ひどい目に遭いま す。



「いっちゃんのスキー質問箱」へ
電脳いっちゃんタイムズのホームへ