[スポーツマインド]
障害者・高齢者対象のスキー学校「パルネットワーク」
−−兵庫県


1997年12月5日発行 毎日新聞大阪本社夕刊 2面より転載



 スキーを楽しむ障害者が増えている。兵庫県村岡町のスカイバレイスキー場に昨シーズン開校した障害者・高齢者対象のスキー学校「パルネットワーク」にはシーズン前から講習の予約が続々入っている。来年3月には長野冬季パラリンピック(障害者五輪)も開催され、競技人口も上昇一途。同校代表の永瀬正明さん(33)は「障害者のレジャーの選択肢を広げ、将来は国際大会に出る選手を」と意欲を見せている。ゲレンデで自然と語り合う障害者の声を聞いてみた。【山口一朗】

 同校は昨年5月、スキー指導員や介護福祉士ら5人が設立。肢体不自由者にはそりに2本のスキーを付け、座ったまま乗れる「バイスキー」や、ストックの先に短いスキーを付けた「アウトリガー」などを活用。目の不自由な人への掛け声も工夫し、運動経験の少ない障害者でも気軽に取り組めるよう配慮した。
 神戸市垂水区の会社員、安藤恭子さん(39)は、左半身が不自由。普通校に通ったものの、学生時代に1回だけやったスキーも「転んでばっかり」で楽しい思い出はなかった。しかし、一昨年夏、日本唯一の障害者スポーツ専門誌「アクティブジャパン」で、ハンディのある人を対象にしたスキーがあることを知った。スキー先端部を安定させる「スキーブラ」を使った。他の障害者とも知り合い、「スキーって楽しいんや」と実感した。
 20歳で失明した大阪府門真市の電話交換士、志馬(しめ)奈津子さん(29)と、手足などが不自由な寝屋川市の会社員、大西満子さん(27)は一昨シーズン、スキーにトライし、「スピード感がうれしい」と、とりこになった。高校の修学旅行で「スキーなんか、二度とやるもんか」と思った志馬さんは「再開したら、風を体で感じて新鮮」といい、大西さんも「寒さと運動は苦手。階段が上れたら大丈夫らしいので始めた。指導員がいるので安心」と話す。
 3年前の交通事故から車いす生活を余儀なくされた富田林市の福祉施設職員、花岡伸和さん(21)は今年2月にバイスキーを初体験。体を傾けるだけで自在にターンができ「そう快さと自由を感じた」という。  永瀬さんは約14年間、スキーを指導。最近5年間は主に障害者のコーチをしている。最も気をつけるのは安全性と体調。障害の種類や程度により、指導方法を変え、「1対1」の講習を基本としている。
 目の不自由な人には「盲人」を示すゼッケンを着けてもらい、掛け声とともにストックをたたいて先導する方法も開発した。手足の不自由な人には、ひもを腰に結んで補助し、スピードや体の向きをコントロールできるよう指導した。体調に合わせ、ストレッチなども取り入れている。
 スキー愛好者で、身体障害者水泳では国内トップクラスの大阪府堺市の会社員、岡部雄太さん(27)は「障害者1人で、どのスキー場でも滑れるようになってほしい。ハンディのある人がもっと外出すれば、次第に障害者用トイレやエレベーターも整備され、だれもが楽しめる環境になるはず」と期待している。
 講習やスタッフとしての参加についての問い合わせは、永瀬さん(080・59・21571)へ。





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