わがままトーク「スポーツ考」
「エトス」1988年3月号(太平洋教育文化交流協会関西本部発行)より転載



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 学校暦が九月から六月までのアメリカは、春休みが一週間と短い。復活祭(イースター )以外には特に何もないからかもしれない。この一週間の特徴といえば、旅行する人が多 いことだろう。
 かく言う私のい遊学時もそうだった。各地に散らばったピースの仲間たちと一緒に、首 都ワシントンDCで過ごすはずだった。−−ホワイトハウスを見たい。NFLのレッドス キンズの本拠地はどんな所だろうか−−そんな思いで参加を申し込んでいた。
 ところが、同じ時期に高校(ハイスクール)の野球チームの合宿(キャンプ)で、フロ リダに行くことになった。それならばワシントンどころではない、絶対にフロリダへ、と 思い直した。
 というのも日本の高校を休学してまで渡米した理由のうちに、野球をやりたいという気 持ちがあったからなのだ。事情あって中学一年の途中までで野球をやめてしまっていたか ら、せいぜいベンチを温めるか、出たとしても一〇点以上の大差の時の「お情け代打」ぐ らいだろう。でも、ボールを握るだけでもいい。ただ、スクールカラーの青(ブルー)と 白(ホワイト)のユニフォームを着たかったのである。
 米国では、季節ごとにスポーツが変えられる。しかも小学生から大学生、プロまで、試 合を中心として、すべての日程が組まれる。だから、ある種目では補欠でも、他の季節に は英雄にもなれる。それに、試合慣れするし、いろんな運動をすることによって、全身満 遍なく筋力がついていく。非科学的な練習法を重視し、何かというと努力と根性で片づけ る、某国の体育界とは違う。肉体的にも、精神的にも、全く合理的なのである。
 さて、結局、私は秋にクロスカントリー、冬にバスケットボール、春に野球と、三種目 やった。フロリダ合宿でもそうだったが、練習といっても厳しくはない。二時間ぐらい、 軽く汗を流して終わり。体をほぐしたら、あとの時間はフロリダの強い日差しの下で日光 浴をしたり、ディズニー・ワールドに行って遊んだりした。
 因みに、八三年わがワイオミングパーク・ヴァイキングズは、二七勝七敗、勝率七割九 分四厘。それでも「根性」を崇拝するのだろうか。
山口 一朗


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