わがままトーク「聖バレンタインデー考」
「エトス」1988年2月号(太平洋教育文化交流協会関西本部発行)より転載
ご意見、ご要望は、 こちらに。
この拙文が諸兄諸姉のお目にかかる頃には、「今年の結果」はもう出ているだろう。業
界ペースに乗せられているのは、とうの昔に分かっているはずなのだが、つい気にしてし
まうのが男心である。
そんな時の女性はどうであるかというと、おそらく男性と似たりよったりだろう。秘め
た思いを打ちあけたのに、つれない返事しかもらえなかったり、きちんと心も品物も準備
しておいたのに、何かが妨げとなってしまって結局渡せず、今となって悔やんでいる人が
あまたいるに違いない。
かくして、今年は一億二〇〇〇万人のうち、何千万の人が不幸になってしまったのだろ
う。
男性と女性のこの勝負、私に言わせれば、女性が圧倒的に優勢だ。中島みゆきさんによ
ると、「落葉の積もる窓辺はいるも同じ場所に限る」そうだが、劣勢の中でも、特に落葉
一枚すら舞い降りない窓辺に立つ者としては、積もるなんて恐れ多い。たとえ間違いでも
いいから一枚降ってこないかなあ、とけっこう真剣に悩むものである。
さて、一四日、アメリカではバラが贈られる。私の通ったハイスクールでは、生徒会が
三色のバラを用意していた。
まず、紅。花ことばでは「愛の告白」を意味している。見たところ、かなり
親密な彼氏に贈られる。日本でいえば、「本命チョコ」にあたるだろう。
続いてピンク。実はこちらが「熱愛」を意味する。しかし、やや淡い色だから恥じらい
が感じられるのだろうか、「告白チョコ」の役割を果たしている、と思われた。
最後は、白。花ことばでは「自信」これは「義理チョコ」にあたるようだった。ただし
、日本みたいに乱発する人は少なかったと思う。義理とはいえ、ごく親しい男性の友
人 に贈っていた。私のある同級生のように、五〇個もバラまくのとは、わけが違う
のだ。この辺が自信の表れだろうか。
ところで、日本では恋人の男性に、わざわざ「義理チョコです」とただし書きをつけて
、チョコレートを贈る女性がいるそうだ。もしアメリカに行ったら、彼女は何色のバラを
贈るつもりなのだろうか。
山口 一朗
「アメリカ・ミシガン州への高校留学で思ったこと」の目次へ
電脳いっちゃんタイムズのホームへ