[イブニングアイ]
長野パラリンピック
インターネットで応援中!
5日開幕


1998年3月3日発行 毎日新聞大阪本社夕刊 一面より転載



 長野五輪と同じ会場、施設を使う障害者五輪「長野パラリンピック冬季大会」が、5日から14日まで開かれる。欧州以外で初めて開催される冬の大会で、史上最高の32カ国から選手・役員約1200人が参加する。選手村への入村式は3日、始まった(17面に関連記事)。日本の出場選手を、インターネットで応援する動きが広がっている。大阪市東淀川区の荒川淳子さん(29)が作るホームページ「なんとなく、ぱらりんぴっく」からリンクをたどり、開催直前の盛り上がりようを見てみよう。【山口一朗】

 刃がついたそりに乗り、ストックを両手でこぐ障害者のスピードスケート「アイススレッジスピードレース」=写真(上)=は、昨年3月のプレ大会で16種目中、14種目で日本選手が金メダルを取った有望種目。「長野パラリンピックに挑む日本スレッジチームと土田和歌子選手応援ページ」は、スレッジレース競技経験のある東京都八王子市の稲月伸吉さん(29)が作成。日本女子で初めて冬季2大会連続出場を決めた土田選手(23)らの練習の様子や写真=(下)・ともに稲月さんのホームページから=を掲載している。
 土田選手のホームページには、松江美季選手(24)のページも統合されている。松江選手の東京都目黒区立東山小学校、東山中学校時代の同級生、角田弓子さん(24)=千葉県流山市=が代表の「松江美季を応援する会」の会報を転載する。
 角田さんはテレビのパラリンピック特集で偶然、同じ水泳部員だった松江選手を見て、約10年ぶりに松江選手に連絡。松江選手は大学入学後に交通事故でせき髄を損傷し、車いす生活となり、スレッジを始めたと知った。ホームページは、同級生の一人で福島県郡山市の宍戸圭太郎さん(24)が「大勢の人に見てもらおう」と作った。
 このほか、東京都江東区役所のページでは、区職員の荒井秀樹さん(42)がクロスカントリー、バイアスロン両競技の見どころなどを紹介。長野県白馬村立白馬中学校生徒会も、同校3年で生徒会長も経験した日本代表最年少の丸山直也選手(15)=アルペンスキー=を応援している。



有森さんたちも激励


 長野パラリンピック組織委員会の公式ページには、著名人がビデオ画像で激励メッセージを送る。
 女子マラソンの五輪メダリスト、有森裕子さんは「ハンディのあるないの違いはあれ、それぞれの選手の夢や希望の強さに変わりはない。勝負として頑張ってほしい」。また、香港の人気俳優、ジャッキー・チェンさんは「パラリンピックは、障害者に自信をつけ、何の障害もない若い人たちにも、いい影響を与えると考えている」と話している。シンクロナイズド・スイミング元五輪代表の小谷実可子さん、フォーク歌手の高石ともやさん、日本人初のプロサッカー選手となった奥寺康彦さんらも登場している。



障害者スポーツに正しい理解を


 こうしたページが増えた背景には「障害者スポーツに正しい理解を」との作者の強い願いがある。同時に「マスコミは、障害者スポーツ報道が少ない上に、曲げて伝えている」と不満も多い。例えば、パラリンピックでは全競技とも障害の部位や程度でクラスを分け、「障害を抱えたまま」競技する。だが、新聞記事の多くに「障害を克服」という見出しが並ぶ。稲月さんは「正しく伝えないなら、ただでさえ社会的に弱い立場である障害者は立つ瀬がない」と言う。
 2008年夏季五輪の国内候補都市・大阪市への批判や、横浜市の敗戦を残念がるページもある。横浜が五輪・パラリンピック同時招致、パラリンピック先行開催の方針を明確にしたのに、大阪は言及していないからだ。横浜市への誘致ホームページを「横浜も応援します! オリンピックを大阪で!」に変えた同市職員、須田幸隆さん(53)は「横浜はノーマライゼーション(生活上、不自由のある人が、当たり前に暮らせる社会にする、という考え方)とバリアフリー(健常者と障害者の間の垣根をなくすこと)を理念とした。大阪も引き継いでほしい」と話す。





毎日新聞AULOS・長野パラリンピック
長野パラリンピックのページへ
バリアフリーについて考えよう(福祉のコーナー)の目次へ


電脳いっちゃんタイムズのホームへ