「日本身体障害者野球連盟」の名誉理事長で
「世界の盗塁王」の福本豊さんに聞く


1997年12月13日発行 毎日新聞大阪本社夕刊 ボランティア面「希望夕刊VV」より転載



 「世界の盗塁王」として知られるプロ野球・阪神タイガースの福本豊打撃コーチ(50)が、「日本身体障害者野球連盟」の名誉理事長を務めている。「野球を愛する気持ちは同じ」と福本さん。ボランティアだが、規約に定められた連盟役員でもある。加盟数は25団体・約600選手と、すそ野は広がっている。その魅力を、福本さんに語ってもらった。【山口一朗】
 福本さんは、阪急ブレーブス(現オリックス)に入団した1969年から毎年1回、神戸市西区の肢体不自由者医療施設「のじぎく園」(現のじぎく療育センター)を訪れた。「選手が行くと、子供たちはごっつう喜んだ」。一緒に遊び、ソフトボールをして交流を深めた。子供たちの励ましが、20年間もプロ野球で頑張ることが出来た理由の一つとも。その「子供」の1人だった岩崎廣司理事長の「ぜひ役員に」という熱意に応え、昨年10月、名誉理事長を引き受けた。
 今年5月に行われた全国大会が初の公式行事だった。現役時代の背番号7のユニホーム姿でグリーンスタジアム神戸に行った。「選手の中には泣いて喜んでくれた人もいた。逆に僕の方が感激させられた」
 開会式後、参加選手の東西選抜による親善試合があった。福本さんは西軍の先発投手としてマウンドへ。ところが、「一生懸命投げたのに、ポカポカ打たれる。相手投手は、いいボールを投げる。僕のヒットは1本あったかな。でも、みんなうまいこと打つよ。いいバッティングだよ」と、プロ通算2543安打の名手が舌を巻いた。
 守備でも、隻腕の選手が、米大リーグで活躍したジム・アボット投手のようにボールをつかみ、投げるのに驚いた。足の不自由な人に打者代走を認めたり、盗塁やバントが出来ないなどの独自ルール。また軟式を使う違いもあるが「高校野球の地方大会に出ても2、3回勝つかも」と、レベルの高さを強調する。
 選手には肢体不自由者が多いが、障害の形態や性別も不問。「野球を始め、選手の性格が明るくなった。大勢が参加し、健常者チームとも交流してほしい。プロ選手にも試合を見せたい。学ぶことが多い」と福本さん。使えるグラウンドがなく、河原で練習しようとしたチームもあった。「球場はもっと理解してほしい」と福本さんは協力を呼び掛けている。
 問い合わせは連盟事務局(電話・ファクスとも078・752・4100)。





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