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飢えたクマ出没情報相次ぐ、マスタケ、ヤマブシタケ、ナメコ、ナラタケ、ブナハリタケ
 2004年9月下旬、小玉氏とともにキノコを求めて白神に向かった。車止めに着くと、地元のマイタケ採りは、わずか二人だけ。恐らく、マイタケシーズンも終わりに近付いているのだろう。上の写真は、ブナの枯れた立木にびっしり生えたブナハリタケ。このぐらい束生していると絵になる。でも今年は山の異常が気になる。
山の異常・その1・・・クマの人身事故や出没情報相次ぐ
 2004年、秋田県内の人身事故・・・4月25日、協和町稲沢でクマの生息調査をしていた猟友会員がクマに襲われ、顔にけが。同29日、五城目町で山菜採りの男性、クマに襲われ、頭と顔、右腕に全治3週間の裂傷。6月5日、矢島町でタケノコ採りの最中、クマに襲われ右腕骨折、頭部裂傷、左腕挫傷などの重傷。

 7月19日、山菜採りの女性、クマに襲われ顔の骨を折る重傷。7月23日、秋田市仁別サイクリングロードで帰宅途中の男性、クマに襲われ、左顔面挫創で1ヶ月の重傷。8月16日、秋田市の遊歩道をクマよけ鈴を鳴らしながら散歩していた夫婦クマに襲われ2週間のけが。9月18日、中仙町で山菜採り中の女性、クマに襲われ1ヶ月の重傷・・・。
 クマ出没情報・・・県内でクマの目撃情報相次ぐ、5、6月で捕獲申請50件。7月21日、鹿角市で果樹園のモモ、クマに食い荒らされる。7月26日、秋田自動車道で車4台に次々はねられクマ即死。8月2日、鹿角市でクマ果樹園のリンゴとモモ荒らす。8月29日、阿仁町でクマに比内地鶏25羽襲われる。9月6日、河辺町・民家から10mほどの祠にいたクマを射殺。9月11日、横手市のぶどう園でクマ捕獲。解体すると、収穫期を迎えた巨峰やモモなど腹一杯入っていた。9月20日、クマ被害が全国で多発。本県で7月末現在で目撃既に118件、昨年の107件を上回る。9月25日、仙北町の水田に出没したクマを射殺。
 秋田地域振興局管内だけで既に61頭(9月末現在)のクマが捕獲されている。いずれのクマも痩せているのが特徴。例えば、体長120cmのクマの体重がわずか40kg(通常なら100kg前後)と激やせのクマも捕獲されている。これは山の食べ物が不作で、一様に飢えていることを示している。

 「本来臆病なクマが人を恐れなくなっているのではないか」「人間の食べ物の美味さを知ってしまった可能性がある」「今年は酷暑で、クマの行動がかく乱されたのかも知れない」「クマは生後2年で独り立ちする。一昨年秋には、好物のブナの実が豊作だったので、昨春の繁殖率は例年より高かったはず。そして今年は親離れする年。ベビーラッシュ期の子グマが食べ物を求めて歩き回り、里へ下りてきているのではないか」「クマは増えたが、ハンターは減った」など、様々な推測・意見が出ている。いずれにしても、キノコ採りで山に入る場合、クマには特に注意が必要だ。
山の異常2・・・キノコの珍現象、ブナの実不作
 今年の夏は猛暑が続いた後、大型台風が15号、16号、18号と連続して東北を襲った。9月の天候も雨が多かった。上の写真は8月中旬に生えていたナメコ。例年なら10月上旬だから、約2ヶ月も早かった。今年の異常気象を物語るキノコの珍現象と言えるだろう。
 9月26日、早くも腐ったナメコ・・・ここ数日の雨でナラタケのほとんどは腐り、さらに生えだしたナメコまで腐っていた。例年なら、ナラタケが最盛期のはずなのだが・・・。
 大滝又沢右岸・杣道沿いのブナ林・・・今年はブナの実が凶作。山ぶどうも見当たらない。飢えているのはクマだけではない。枯れたブナの立木に登っていたサルは、樹肌をはだけるようにしてキノコを食べていた。本来なら、クリ、ヤマブドウ、マタタビ、サルナシなどもっと美味しい木の実を食べていただろうに。何となく寂しい光景だった。
マスタケ・・・釣り人必見のキノコ
 紅マスやサクラマスの身の色に似ていることから「マスタケ」と名付けられた。釣り人にとっては、縁の深いキノコだ。梅雨期から秋の紅葉時まで発生期間は長い。はじめ柔らかいが、生長すると固くなる。旬は、柔らかく弾力のある若い菌。
 傘は幾重にも重なって発生。生長すると波打ち、縁部は裂けたり不規則な形になる。傘裏は、初め黄色っぽく、後に退色して白くなる。マイタケ、トンビマイタケと並ぶ大形食用キノコ。薄切りにして、天ぷら、油炒め、和え物など。
ヤマブシタケ
 なかなかお目にかかれないキノコだけに、ピンボケ写真になってしまったのが悔やまれる。ブナ、ミズナラなどの立ち枯れや生木の高い所などに寄生する。長く白い針が垂れ下がった白い塊のキノコ。山伏の着物についた飾りに似ていることから、ヤマブシタケと名付けられた。さっと湯がいて冷水にさらし、ワサビ醤油又は酢醤油で刺身風にして食べると美味い。
サワモダシ(ナラタケ)
 サワモダシをメインに沢を歩いたが、ほとんど腐っていた。それだけに、こうした幼菌に出会うと、小躍りするほど嬉しかった。秋雨の後、倒木から一斉に顔を出したようだ。生長はすこぶる早く、あっと言う間に成菌になる。
 見栄えは良くないが、食べると一番美味しいキノコのように思う。天は二物を与えず・・・傘は幼菌の頃半球形、後に平に開く。
 やがて成菌になると、中央部がややくぼむ。柄にヒダ、傘の裏面は、黄褐色で繊維質。
 秋晴れに誘われて顔を出したサワモダシ。本流筋は、ことごとく腐っていたので、細流の小沢に入る。すると、何とか旬のサワモダシに出会えた。
ちょっと早いナメコ
 湿気が多い沢筋で、かつ日当たりの良い倒木に顔を出し始めた。独特のヌメリ、色艶・・・ブナの森のフィナーレを飾る美を感じさせてくれる。
 豆粒のような幼菌は、数日でこの位に生長する。この他に、わずかだがクリタケ、ヌメリスギタケモドキ、ウスヒラタケが生えていた。
 ナメコを良く見ると、一部虫が食っていた。今年は生暖かく、湿気が多いせいか、虫がつきやすいようだ。無農薬の天然物だから、虫のつかないキノコなんてない。虫も栄養というけれど・・・
 キツネノチャブクロ(ホコリタケ)・・・これくらいになると、指で押せば、頂点に開いた穴から、ホコリのような胞子が飛び出す。
 倒木に、まるで白いヒゲでも生えたように群生していたブナハリタケ。猛毒のツキヨタケは最盛期、それに良く似たムキタケは、さすがにまだ顔を出していなかった。時期的に正常なのは、ブナハリタケとツキヨタケの二種といった感じ。
 青鹿沢・・・キノコを探しながら青鹿岳に登る途中の鬼の坪ルートを探す。
 鬼の坪ルートらしき踏み跡を辿っていくと、斜面に仁王立ちしていた巨木に出会う。神木をしばし見上げては、シャッターを押す。
 斜面に途切れ途切れに残っていた鬼の坪ルートらしき踏み跡を下る。10月下旬のキノコ狩りは、ぜひこのルートを歩き、鬼が作ったと言われる庭園を見てみたい。
 ブナの巨木を見上げる。黄葉は、まだまだ・・・。雑草もまだ枯れず、森の中の見通しも悪い。やはり、ブナ林のキノコ狩りは、黄色に染まった黄葉シーズンが最高だ。ただし、今年はクマが飢えているだけに、残飯や生ゴミは絶対に捨てないこと。その味を覚えてしまうと、熊よけ鈴が逆に熊呼び鈴になってしまう。次回は、念のため、熊撃退スプレーを腰に下げて山に入ろうと思う。

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