6CA7に関する思い出など

Mar.17,2009:初 版


6CA7(EL34)とはどんな球?

 6CA7はヨーロッパ生まれの5極管で(1953,PHILIPS)、プレートとスクリーンの合算損失が30Wでスクリーン耐圧が500V以上あり、シングルで10W、プッシュプルで50W以上出すことが可能ですので古くから高級オーディオ、構内放送用PAなどに使われてきました。スクリーンの耐圧が高いので三結は得意と言えます。
 6CA7(EL34)はフィリップスと提携した松下が日本で発売し、各社が追従した球で、東芝は6GB8を開発して対抗したと言う経緯があります。右の写真は、左から松下(ナショナル)が発売した当時の6CA7ーHiFi、その隣がNECの6CA7(1970年前半)、右端がつい最近購入したVAのEL34の外形です。
 個人的には、外形がずんぐりむっくりのKT66やKT88より細身のスマートな6CA7が好きです。とくに初期のPHILIPSと同形のナショナルの6CA7-HiFiの外形が好きです。なにかしら、音質もビーム対五極の違いも含めて外形のような違いが有るような無いような・・・
 写真の松下6CA7-HiFiはプレミア物ですが残念ながらカソードの結線の溶接がはがれていて動きません。1970年以前のナショナルの球は溶接不良の断線や組み付け不良でカソードとグリッドがタッチするなどしてテレビやラジオをたたけば動くと言う不良が多かったと記憶してます。
 最近でも漫画とかドラマで動作不良のテレビや家電を叩く構図は見られますが昔は当たり前の光景でした(私は今でもパソコンを叩いてみますよ)。この起源は不良真空管だったのでしょうか。


6CA7/EL34の外形



東芝6GB8 HiFiの外形


校内放送用PA

 団塊世代ラヂオ少年が一日の大部分を過ごしたのは私立の中高一貫男子校の部活でした。勉強嫌いの私の場合、普通に高校を受験することは困難だろうとの親の思いやりで中学からエレベーター進級となる学校に入学し、落第の危機をかいくぐりながら低空飛行で卒業しました。
 在学時代は物理部に所属し、物理部が担当していた校内放送の手伝いをしておりました。そのような関係で高校生の先輩と一緒に放送設備にさわる機会があり、PAの中を覗いたり、放送用電線の点検のため屋根裏をはい回ったりしていたものです。また当時のラヂオ少年に取ってアマチュア無線が一種のステータスでしたので受信機やワイヤレスマイクなどの自作、当時普及してきたステレオセットが買えないため自作したCZ-504-Dのアンプ作りなどに夢中になっていたものです。また、NHKや民放FM局がステレオ放送を始めるなどで飽きない時代でした(さすがにテレビまでは手が出せませんでした)。
 私の学校のPAはUY-807プッシュプルの出力30WぐらいでPHONOと三つのマイクが使える(一寸あやふや)もので6年間の在学中を通して使い続けました。その他には音楽室にLPレコードがかかる2A3PPのモノラル電蓄がありました。また当時としては立派な水泳プールがあり、ここで割と大きな水泳大会が開かれることがあり、我々はその放送設備担当でした。
 そのようなことから、PAにはお世話になっていたので、たまにポータブルや小型のPAが修理できないかと持ち込まれることがあり、ナショナルやトウワなどの機械の中を見ることができました。
 これらのPAの出力球は6V6や6L6、807でしたが卒業が近くなる頃には6BQ5や6CA7が使われているものを見受けるようになりました。このころ、学校用放送設備などのカタログをおもしろ半分に取り寄せていて、それによれば6CA7が使われているものが多く、我が校のオンボロPAとの格差に愕然としたものです。
 オンボロPAの名誉のために付記しますが、ローカルモニターにそれなりのスピーカーを接続すると、教室の6半ボックスや校庭のトランペットとは比べものにならない良い音が出たのですが、出力回路のマッチングの問題でローカルのみの音出しが難しく、試験以外には好きな曲を大音量で流すなんてことは出来ませんでした。
 放課後教室に人がいなくなった頃を見計らって、ポーン♪ポーン♪ポーン♪ポーン♪〜「アーアー、本日は晴天なり、これから放送器の試験を行います」とやって、その後聴きたいお皿を回して放送室だけは良い音で楽しんだものです。


UY-807,807A,6V6,CZ-504-Dの外形

 写真の807Aは最終形のもので5881のようなボタンステムとなっています。
 自作アンプでお世話になった電電公社放出CZ-504-DはUZ-42そっくりですがヒーターが5.5V/1Aの電流駆動でプレートと外形が一回り大きいWE311A類似管です。ちなみに310A相当はCZ-501-Dとのことです。


6L6-GTとUY807の比較

 二つは兄弟なのでプレートは同じ大きさです。ガラスとの距離が無いGT管はかなり熱くなります。無線送信管の807はトッププレートでシールドが付いてスクリーン耐圧が大きくなっています。

ステレオコンサート

 この頃には我が地方都市でもステレオコンサートなる催しが教育会館などのホールで月に1回程度開催されておりました。これにはステレオセットを作っていた大手メーカーが自慢のアンプやスピーカーを持ち込み、たまには著名な音楽評論家をゲストとして地元の放送局のアナウンサー嬢を進行役にレコードを回して音を聴いてもらうと言う内容でした。
 当時の私は、(1)真ん中に大きな穴が開いたドーナツ盤レコードをやっとの思いで買って自作のアンプで鳴らす、(2)AMラジオの音を我慢しながら聴く、(3)フェージングと混信の中でFENを聴く(後半はFM放送も聴けるようになりましたが)ことなどが音楽を聴く手段でしたので、ステレオコンサートと映画館の音は最高のものでした。
 現在ではテレビやコンポが良い音を出すようになったためその頃の感動を思い起こすことは少なくなってますが、永年愛用のスピーカーから流れ出る自作のアンプの第一声には感ずるものがあります。また当時持っていたレコードのCD版を見つけて音を出したときも感ずるものがあります。が、しかし、リマスタリングによりとても良い音にはなってはいますが当時の環境で聴いていた音との差が大きく違和感を感じることも時にはあります。
 このコンサートは比較的大きなホールで開催するのでメーカーが持ち込むセットは一般市販品とは異なり自社のフラッグシップモデルで、とびきりの音だったと記憶してます。コンサートに持ち込まれるアンプは半導体はまだ少なく、渡されたパンフで調べたら6CA7を使ったものが結構多かったと記憶してます。
 そのようなわけで6CA7は高級アンプ用と言う先入観を持っておりましたが、後に、就職した先の実験用電源に電圧調整管として6本パラで使われていたのを見たときは驚きました。これが廃棄されたとき拾っておけば電源トランスも含めてものすごく役に立ったと後悔してます。このころは真空管は使い物にならんと言われていたので職場でも多くの真空管搭載機器が捨てられてしまい残念に思います。
 最近では「ステレオセット」と「HiFi」は死語となってしまいました。当時のHiFiは高忠実と言うよりとても良い音と言う用法だったと思います。本当の意味のHiFiは半導体アンプが普及したころにフラットな周波数特性や低歪みを自慢する広告と共に用いられることが多かったと記憶しています。
 近年「線が細い」とか「厚みがある」とかの私的な感覚表現が目に付きますが、アンプの世界では入力が色付け無しに忠実に増幅されて出力に現れると言う意味で「HiFi」を復活させたいと思っているのは私だけでしょうか?
 真空管アンプは本当にHiFiなのか?、ソースからスピーカー、リスニングルームのトータルなシステムとしてのパフォーマンスが聴く人の私的な好みと共振しているだけではないか?・・・などと思っている今日この頃です。


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