UX12Aシングル、ロフチンホワイト型0.25W ×2 ステレオ・アンプ

Nov. 5,2012:初 版


はじめに

 一昨年、NEC製の通信用直熱三極管104-Dを使って作製した104-Dロフチンホワイト型0.25Wモノラル・アンプの相方としてUX12Aを使った0.25Wモノラル・アンプを作製してしばらく鳴らしていました。同アンプの音がとても良かったので、スペアに確保していたUX-12Aを使いステレオアンプとして新たに製作しました。モノラル・アンプは12Aをトリタンフィラメントの201Aに差し替えて104-Dの相方として残しています。
 アンプの回路はモノラル・アンプとほぼ同じですが手持ちの都合で電圧増幅管を電圧増幅率が100の6B6Gから電圧増幅率が70の12Q7G=6Q7Gに変更しましたので回路定数とNFBの量を変更しました。また、ステレオ化のため電源も一部変更しています



回路構成

 回路構成は、UX12Aを使った0.25Wモノラル・アンプをステレオ化したため、電圧増幅の12Q7GとUX12Aを直結するロフチンホワイト形です。出力管UX12Aは、直熱三極管で並四ラジオのマグネチックスピーカーを鳴らしていた有名な球です。主な定格は、フィラメントが5V250mA、プレート電圧が180V、プレート電流が7.7mA、グリッドバイアス-13.5V、プレート抵抗4.7KΩ、負荷抵抗10.65KΩ、出力0.285W、電圧増幅率8.5です。電圧増幅の12Q7Gは6B6Gと同じラジオの検波増幅用の双二極三極複合管で、三極部の電圧増幅率が70のG管です。電源の整流管は傍熱型全波整流の6ZY5Gです。以下に示す回路図では電源部を除き左チャネルのV1とV2周りをを省略してあります。



UX12Aステレオ・アンプの回路図


UX12Aステレオ・アンプの裏と


回路設計の概要

 12Aのデータから動作点を、プレート電圧180V、プレート電流7.7mA、グリッドバイアス-13.5Vに決めます。プレート負荷は10.65KΩですが、手持ちの出力トランス(ノグチPMF-230)の都合で一次側12KΩ、二次側8Ωの端子を使用し、出力は8Ω負荷の時0.25W RMSとしました。
 以上から、12Aをフルスイングするためにはグリッドに9.5V RMS以上が必要となります。12Q7Gはμが70、プレート供給電圧300Vで470KΩ負荷の時、ゲインが50倍程得られますので入力190mV RMSで12Aをフルスイングできます。アンプの仕上がり出力を8Ω負荷で0.25W RMS、入力を0.5V RMSとすると必要なゲインは9dbとなります。このアンプの裸のゲインは約17.4dbなので8.4dbの負帰還が可能なことが解ります。
 ロフチンホワイト回路では、前段のプレート電位が次段のバイアスとなるため前段のカソードを負に引っ張るか、次段のカソード電圧を嵩上げすることが必要です。本アンプでは12Q7Gのカソードを負に引っ張り、12Aのグリッドを0V相当にして自己バイアス方式とし、直流的にも帰還を与え動作を安定させることとしました。この方式のメリットは出力管を変更しても12Q7G周りを変更する必要がないことです。
 12Q7Gの動作点を、プレート供給電圧300V、負荷抵抗470KΩ、プレート電圧152V、グリッド・バイアス-2.2Vに決めます。プレート電圧=12Aのグリッド電圧とし、この電位を12Aのプレート供給電圧(=通常の+B=プレート電圧+グリッドバイアス+トランスのドロップ=195V)のマイナス側とします。12Q7Gは6B6Gよりバイアスが深いため入力の電圧レンジが6B6Gより多少広くなりました。12Q7GのカソードにはバイアスとNFB量調整用の半固定抵抗を入れています。
 12Q7Gのプレート電圧が12Aの基準電圧0Vなのでカソードに−152Vを供給すると相殺できますので別途-152Vの-C電源が必要となります。12Aを基準にした電源は+Bが195V、-Cが-152Vです。しかしながら、電圧増幅管のカソードがグランドより-152Vの電位があると危険なので-152Vをグランドに落とします。これにより、12Aの共通電位は+152Vとなり、+Bは345Vとなります。電源トランスは所用電流がDC25mA以下なのでノグチトランスのPMC-35Eとします。
 傍熱管の12Q7Gと直熱管の12Aを直結するため電源にはダイオードや直熱整流管を使えないので傍熱型の6ZY5Gを用い、+B電源電圧が195Vと低いためチョークインプット方式を採用しました。-C電源の容量は数ミリアンペアだけなので1N4007の半波整流としましたが+Bとの電位差が500V近くになりますので感電には十分注意が必要です。
 右チャンネルの12Aのフィラメントには整流管用の5Vをブリッジ整流して3300uFのケミコンで平滑して与えています。左チャンネルの12Aのフィラメントには整流管と共用の6.3Vをブリッジ整流して3300uFのケミコンで平滑した後5.1Ωの抵抗を介して5Vにして与えていますが両方ともハムバランサーは入れていません。12Q7Gのヒータは小型のトランスで点灯しています。


製作と音色などについて

 アンプに使用したシャシーはタカチのアルミケースYM300ですが、カバーとなる部材に球やトランスなどを取り付けています。外観はケースの片側を斜めにカットしてパネル面とし、マッキンの275風としました。入出力の端子類と電源は後方にまとめています。球のベースの半分ぐらいが沈むようにソケットをスペーサー沈めてトランス類との高さのバランスを取っています。出力トランスにはカバーをかけています。ST管が5本並んでいると結構迫力があります。
 UX12Aのプレート抵抗は4.7KΩと高いのですが高増幅率管との組み合わせでNFBを多めにかけることが出来たので締まった音がしています。シングルの出力トランスにとってはプレート電流が少ないことは良いことで思ったより低域も出ています。アンプのゲインが低く電源電流が少ないため残留ノイズは0.8mV以下でした。出力管がA級で低出力なためクロストークも残留ノイズ以下です。
 このアンプは 0.25W の低出力でビッグバンド系には少し力不足ですがジャズトリオやボーカルなどを毎日聴く分には十分で、かつ、低消費電力なため、最近は2A3差動アンプに火を入れる機会が少なくなってしまいました。出力トランスを交換するとより良い音となるとは思いますが今のところその必要も無いようです。蛇足ですがUX-12Aは結構レアな球なのでプチ贅沢アンプなのかも?




UX12Aステレオ・アンプのサイドビュー


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