粘り強く





 最近、ジュンのボクに対する評価が下がっているような気がします


 思い当たる節は多々あります
 生きてきた環境も違いますし、年齢も親子ほど離れていますし

 価値観も大きく違います
 ジュンの常識も、こちらでは通用しない事もあります


 …些細な事のすれ違いの積み重なりなのでしょう…

 ですが、近頃のジュンの態度は本当に酷いのです
 一挙一動を『おっさん臭い』の一言で一蹴される毎日です
 ボクだって少しでもジュンの世代を理解しようと努力しているのに…

 思春期の娘から避けられている父親の気持ちが理解出来るような気がします…



 …はぁ…


 いえ、落ち込んでばかりもいられません
 下がった評価は再び上げればいいのです

 とりあえず何かでご機嫌取りでもしてみましょう…


 ああ、でも手段に迷います

 服やアクセサリーを贈ってもボクのセンスでは『おっさん臭い』と言われてしまいます
 遊びに連れて行こうにも、ジュンの喜びそうな所はボクにとって疲れ過ぎるのです…
 それに、ジュンも遊びに行くならボクよりも歳の近いレンやレグルスの方が楽しめるでしょう


 …そう言えば以前、メルキゼデクがカーマインに手料理を振舞っていましたね…

 あれはポイントが高そうです
 おっさん臭いイメージを家庭的なイメージに変えられるチャンスかも知れません



 ジュンの好きな食べ物は…お好み焼きでしたね

 正直言ってボク自身、料理は得意ではありませんが…
 でも、お好み焼きくらいなら何とかなりそうな気がします

 材料はキャベツと卵と豚肉と―――…
 …そう言えば、山芋を入れると良いとジュンが言ってました

 そうと決まれば早速、食材を買いに行きましょう
 ふふふ…ジュン、喜んでくれるといいのですが…




 ―――2時間後―――




 部屋に明かりがともっています
 どうやらジュンは室内にいるみたいですね



「ジュン、ただいま」

「何処行ってたんだ?
 …お前、その荷物は?」

「買い物に行っていたのですよ
 ほら、見て下さい
 こんなに太くて立派な山芋が――…」

「!!!!!」

「……ジュン?
 あの、どうしましたか…?」


 何か…凄く怯えたような表情をしています

 何故、山芋にここまで恐怖を感じる事が出来るのでしょう?
 …もしかして毒芋だったとか?

 いや、まさかねぇ…



「お前…っ!!
 その山芋で俺をどうする気だ!?


 ……は…?


「この変態っ!!
 鬼畜悪魔っ!!
 エロおやじっ!!」

「…………。」


 …ジュン…

 貴方、一体何を想像してるんですか





「…確かに最近、お前に対して冷たかったかも知れないけど!!
 でも…だからって、これは酷過ぎるだろ!!
 こんな事、良く思い付けるものだな!!」


 それはこっちのセリフです

 何か…物凄い事を考えてますよね…

 山芋ひとつに、そこまで想像を膨らませられるものですか…
 ボク、純粋に感心してしまいます


「酷いよ、ゴールド…
 ナスやキュウリならともかく…
 山芋なんて、あんまりじゃないかっ!!」

 …ともかく…って、ジュン…
 ナスやキュウリなら許容出来るんですか…

 それは良い事を知った―――…じゃなくって!!




「ジュン違います、誤解なのです
 ボクは山芋を使って料理をしようと…」

「食材の中に俺自身も含まれてないだろうな!?
 健全な話題で油断させておいて…っていう魂胆じゃないのか!?」


 そんなに信用ありませんか

 …いえ、全てはボクの日頃の行いのせいです
 その辺はちゃんと理解してますとも…



「…警戒しなくても大丈夫ですって…
 ボクは純粋にジュンに美味しいものを食べてもらおうと…」

「…本当だな?」

「本当です
 料理以外、何もしませんよ」

「……それはそれで…ちょっと、つまらない…」



 …ジュン…

 ボクにどうしろと…




「と、とにかく作りますから
 ジュンは待っていて下さいね」

「ああ、わかった」


 …ふぅ…


 まぁ、多少の誤解はありましたが当初の予定を実行しましょう

 でもボクってかなり誤解されてますね…
 今回の事でボクの評価も上がってくれるといいのですが… 

 『ダーリン』とまでは行かなくても、
 せめて『おっさん』から『アニキ』にまで上昇してくれれば今は充分です



「…お前の背中を見ていると、思い出すなぁ…」

「何がです?」

「うん…俺の父親もさ、たまにこうやって飯作ってくれてたな…って
 そうやって台所に立ってるお前って…何だか、父さんみたいだ」

「………そ、そうですか……」


 評価は…一応、上がったみたいです

 とりあえず『おっさん』から『父親』に
 身内レベルにまで上昇したのですから成功でしょうか


 …でも…


 恋人から遠ざかっている気がするのはボクの気のせいでしょうか…





たまにはちょっとお茶目なジュンの話を(笑)
どんどん想像力が鍛えられておりまする

そして一応、ゴールドも自覚はあるようにござります
おっさん扱いは心外なのじゃな(笑)

きっとこの数日後、野菜プレイを繰り広げることにござりましょう…ははは…