「ふわぁ〜…」


 朝っぱらから盛大な欠伸
 眠り眼をこすりながらレンはコーヒーに口付ける

 …ちょっと苦いな、と思った矢先、
 タイミング良くミルクの小瓶が差し出された

 振り返るとそこには陽光を反射させて黄金色に輝く男の姿



「随分と眠そうですね
 徹夜でもしていたのですか?」

「ゴールドさん…おはよ〜…
 うん…ちょっと寝不足かも…」


 受け取ったミルクを豪快に注ぎ込むと、
 スプーンで底に沈んだ砂糖ごとガリガリとかき混ぜる

 一口含んで好みの味になった事を確認してからレンはゴールドに向かい合った





「最近色々と忙しいからさぁ…
 レグルスが淋しい思いをしないように、
 夜は出来るだけ一緒に過ごすようにしてるんだよ」

「家庭と仕事の両立ですか
 日中は仕事に没頭しながらも夜は家族サービス、
 甲斐性のある男の見本ですね、立派な事ですよ」


「え…そうかな?
 そう言ってくれると嬉しい――…」

「まぁ…そういう家庭に限って妻は『亭主元気で留守がいい』的思考が
 多いという現実もあるのですが、とりあえず家庭は円満そうなのです」

「…一言多いよ、ゴールドさん
 さてはジュン君に煙たがられてる?」


 外見に反して毒のある性格の持ち主であるゴールド
 しかしそれに負けず劣らずなのがレン

 互いの性格を熟知しているからこそ本音で言いたい放題
 これはこれで、ある意味良いコンビなのかも知れない


 …たまに殺気立つ事もあるが




「下半身で物事を考える下ネタエロオヤジだもんね
 ジュン君も良く耐えてると思うよ、百年の恋も凍りつきそうなものだけど」

「凍り付くどころか日増しに燃え上がっていますよ
 大人の男の魅力がわからないなんて、まだ青いガキですね」

「年寄りの冷や水って言葉知ってる?
 もう中年なんだから、無理して身体壊さないようにしないと
 俺達みたいな若い二十代パワーについて行けなくなるよ?」


 この場にジュンかレグルスがいれば
 それとなく制止に入ったのだろうが、
 不幸にして頼みの綱の二人は未だに姿を現さない

 満面の笑みをたたえたまま、猛毒のトゲを持った会話が続く



「いや〜…若いカップルも大変なんだけどね?
 若さが有り余ってるからレグルスも毎晩誘ってくるし…
 昨夜だって、もっともっとって何度もおねだりされちゃってさ」

「おや、何度もしなければ満足させられない程度の技術なのですか?
 まぁ…若いうちは質の悪さを回数でカバー出来るから良いですけれどね」


「ふっふっふ…ゴールドさん、羨ましいでしょ?
 ジュン君は自分から積極的に誘ってくることなんて無いもんね
 レグルスなんて毎晩凄いんだよ?
 日増しに色っぽい誘い方を覚えてきてねぇ…
 昨日なんて服脱ぎながら足を絡めてくるんだもん、理性が吹っ飛んじゃった」

「ジュンはレグルスとはまた違った魅力があるのですよ
 いつでもストイックな彼を思うがままに蹂躙するのがまた快感なのです
 何度抱いても初々しい反応が返ってきて…生娘のように恥らう姿が堪りません」



「その発想がまたオヤジ臭いんだよねぇ…
 変態だし、鬼畜だし…あまり酷い事ばかりしてると亀裂入るよ?
 俺みたいに優しく抱いてあげないと、いつかジュン君が壊れちゃうんじゃない?」

「勿論飴と鞭はちゃんと使い分けてますよ
 それよりレン、貴方の方こそプレイスタイルの幅を広げないと、
 いつかマンネリ化して飽きられますよ?
 たまには目隠しの一つ、手錠の一つくらい使わないと―――…くぅっ!!」

「え、どうし――…あたっ…!!」



 どごっ

 べきっ



 二人の会話を中断させる鈍い音が二発響き渡る
 そして後頭部を抑えて蹲るゴールドとレン

 今までの勢いは何処へやら
 急に無言になる二人の男


 その背筋に冷たい汗が流れる
 ひしひしと感じる怒りのオーラが背を向けていても伝わってくる

 その場の気温が数度低下した気がする


 恐る恐る振り返ると案の定、
 阿修羅の如く怒りの形相を浮かべた恋人が仁王立ちしていた




「…レン、てめぇ…!!
 朝っぱらから大声で何を話してやがる…っ!!」

「れ、れ、れ、レグルス…っ…!!
 いや…あ、あの…ね?
 これにはちょっとした大人の事情が…」


「言い訳よりも先に、言う事があるんじゃねぇの!?
 でけぇ声で喋りやがって、オレがどんだけ恥かいたか…!!」

「……ご、ごめんなさい……」


 ひたすら謝り倒すレン
 海の破壊神も、機嫌を損ねた恋人には敵わない




「……あ、あの……じ、ジュン……」

「恥を知れ、色狂悪魔が
 …こっちに来るな、変態がうつる」


「お、怒らないで下さい、反省しているのです
 ボクも、ちょっと度が過ぎた話をしていた気がしていたのです」

「反省しているなら態度で示せ
 …今日から禁欲、一週間だ」

「えぇぇ〜っ!?」



 ストイックな恋人にお預け宣言される

 レグルスと違い、声を荒げないところが逆に怖い
 その態度から伝わる怒りの感情に、すっかり萎縮するゴールド


 毒舌だろうが腹黒だろうが、
 恋人には勝てないゴールドとレンだった







「…ったく、信じらんねぇ!!
 こんな時間から猥談に熱弁揮いやがって!!」


 部屋に戻ってきたレンとレグルス

 未だに怒り冷め遣らぬ、といった様子のレグルスは、
 耳の先まで真っ赤にしながらレンに向かって愚痴を漏らす


「……お前の言い方じゃ…オレ、すげー淫乱っぽいじゃねぇか…」

「れ、レグルス…」


 実際そうじゃないか、と言いかけて慌てて口を噤むレン

 そんな事を言おうものなら、
 ゴールドのように禁欲宣言を食らいかねない

 これ以上機嫌を損ねさせないようにと、
 頭をフル回転させてフォローの言葉を探す




「別に俺はレグルスがエッチだって話をしていたわけじゃないよ?
 ゴールドさんに自慢してたんだ、レグルスがどれだけ俺のこと愛してくれてるかって」

 さり気なくレグルスの背後に回ると、
 その身体を優しく抱きしめながら耳元で囁く


「愛する人に求められるなんて、こんなに嬉しい事ないでしょ?
 だからつい自慢したくなっちゃうんだ…俺はこんなに幸せ者なんだよ、って」

 ちゅっ、と頬に口付ける
 くすぐったそうに目を細めるレグルス



「くせーこと言ってんじゃねぇよ…」

「だって事実だから
 本当の事言って何が悪いの?」


 顔を引き寄せると両手でその頬を包み込む
 視線を合わせるとレグルスは恥ずかしそうに視線をそらす

 その表情から怒りの色が消えていることを確認してから、
 わざと不安そうな声色を作ってレグルスに語りかける




「…でも、さっきはごめんね?
 今度から気をつけるから、許してくれる?」

「ん…しゃーねぇな…」

「ふふ…ありがとうレグルス、愛してるよ」


 今度は唇に口付ける

 素直にそれを受け入れるレグルスに気を良くしたレンは、
 少しだけ調子に乗ってシャツの裾から手を差し込んでみる


 腰から背中にかけてゆっくりと撫で上げると
 無意識の反応なのか、細い腰をくねらせて熱い吐息を漏らす



「…ん…」


 レグルスの両手が背に回される
 それを了承の合図と受け取ったレンは更に口付けを深くさせた

 舌先で歯列をなぞると薄く開いたそこに今度は舌を差し込む


 暖かくて柔らかい口内の感触を楽しむように舐め回すと
 レグルスの唇の端から飲み込みきれなかった唾液が透明なラインを描く

 次第に高まって行く彼の体温を感じながら、
 レンは満足するまでレグルスとの口付けを味わった





「………はぁ…っ……」


 ようやく解放されたレグルスは、
 軽い酸欠に陥っていたのか荒い呼吸を繰り返す

 しかし、どうしても一言文句を言いたかったらしく、
 整わないままの呼吸でレンに向かって抗議の言葉を吐いた


「…っ…あ、朝っぱらからするキスじゃ…ねぇよっ…!!」

「…やっぱりレグルスもそう思った?
 俺もちょっと激しかったかな〜…って思ってたんだけど」



 また怒らせたかな、と少し不安を抱きつつ
 気まずそうに頭を掻くレン

 その隣りで不機嫌そうに睨みつけてくるレグルス


 外見や口調の乱雑さに反して、彼は身も心もデリケートに出来ている
 図太い神経の持ち主であるレンとは対称的に、些細な事でも傷つきやすい




「…ご、ごめんね?
 あんな会話してたから、つい…」

「……ったく…信じらんねぇ……
 こんな時間から…まだ明るいってのに…」


 レグルスはそこまで言うと一度言葉を途切れさせる
 そして困ったようにレンから視線を逸らせると小声で呟いた


「…火、ついちまったじゃねぇか…」

「えっ……?」

「どうしてくれんだよ…
 お前があんなキスするから…っ!!」



 困惑した表情が紅く染まっている

 熱を宿した身体を持て余しながら、
 レグルスは自嘲気味に笑う


「…やべぇよ…これじゃ…オレ、マジで淫乱みてぇ…」

「あ…うん――…いや、感じやすいって事なんじゃないかな
 敏感だからすぐに身体が反応しちゃうってだけだよ、うん」


「…それってオレがエロい身体だって言ってねぇ?」

「素直だって言ってるんだよ
 …で、その身体どうするつもり?
 トイレで済ませるか、それとも冷水シャワーでも浴びてくる?」


「……レン…お前、わかってて言ってんだろ?」

「うん、もちろん
 だって…やっぱりレグルスの口から言って欲しいから」





 レンはレグルスから数歩離れると、
 意地の悪い笑みを浮かべて後に続く言葉を待つ

 そんなレンを前にレグルスは悔しそうに唇を噛んだ


 こんな時間から
 しかも部屋の中は明るい

 抵抗感が無いといえば嘘になる



「…っ…意地、悪ぃ……!!」

「時間帯が不満なら夜まで待つけど?
 でもムラムラした身体を抱えたまま過ごすのも辛いんじゃない?」


 悔しいがレンの言うとおりだ

 屈辱的な流れだが、
 レグルスも早く熱を処理して一日を始めたい



「……くっ……わ、わかったよ!!
 だ、抱けよ、抱いてくれよ…っ!!
 ――――…こ、これで良いんだろっ!?」

「ん〜…もう一声欲しいな
 昨夜みたいにサービスしてよ
 …あ、どうせならストリップ見せて欲しいな」

「……ぐっ…てめぇ…!!」


 明らかに図に乗っているレンに怒りが湧く
 ―――…が、ここで怒ってもどうしようもない

 レグルスは半ば自棄でベッドに上がると、
 髪を結い上げていた鉄の輪を外した






 飲みかけのコーヒーをすすりながら、
 レンは満面の笑みで恋人の姿を眺める

 楽しくて仕方が無い、とその表情が語っていた


 その笑顔が癪に障る

 こうなったら逆にレンを追い詰めてやろう、
 そんな考えがレグルスの脳裏を過ぎっていた


「…全部脱ぐまで、オレに触んなよ?」

「うん、じっくり楽しませてもらうよ」

「……ん…じゃあ、始めるからな」



 レグルスはシャツを捲り上げると、
 胸の突起が見えるか見えないかのギリギリの所で手を止める

 そして徐に指先を口に含むと、
 濡れた指でその突起を弄り始めた


「あぁ…っ…ん…」


 甘く濡れた声を漏らしながら、
 レグルスは指で、爪で、自らの身体を責め立てる

 刺激を受けた胸の突起は赤く色付いて白い肌に咲く花弁のようだ




「…はぁ…あぁん…」


 再び指を塗らす
 ぴちゃ、ぴちゃと赤い舌が白く細い指に絡み付く

 伝う唾液をゆっくりと舐めあげると、
 今度はその手を下肢へと滑り込ませた


 ベルトを引き抜くと緩いズボンは抵抗もなく、するりと落ちる

 むき出しになる白い脚
 そのラインを濡れた手が撫で上げた



 ごく、とレンの喉が音を立てる

 目の前の光景は想像の範疇を遥かに超えていた
 眩暈がしそうなほどに艶やかで官能的なレグルスの艶姿


 匂い立つような色気に身体の芯が熱くなる

 見ているだけで息が上がる
 理性なんて保っていられる筈がない


 レンのものは既に熱を帯び、欲望をむき出しにしてる
 一刻も早くその白い肌を貪り食らいたくて涎を垂らしていた





「……れ、レグルス…っ…」

「んっ…こら、まだ終わっちゃいねぇぜ?
 全部脱ぎ終わるまで手ぇ出さねぇって約束だったじゃねぇか」


 レグルスは唇の端を上げて笑うと、
 そのまま下着に手をかけた

 太腿の所までそれを下ろすと、
 両手で髪をかき上げながら淫らに腰をくねらせる

 薄く開いた唇から、挑発するかのように赤い舌が覗く



「…レグルス、俺…そろそろ限界だよ」

「レン…まだ駄目だ…
 もっと…もっと、オレを見て――…」


 その手が茂みを掻き分ける

 自分自身を握りこむと、
 レグルスはそれをゆっくりと揉み扱き始めた




「…あっ…あぁん…んぅ…」


 瞳を潤ませて身悶える肢体は薄紅色に淡く色付く
 額から汗のしずくが流れて顎を伝った

 次第に乱れてくる吐息が切なげにレンの名を呼ぶ


 質量を増して紅く充血するレグルス自身も、
 滲み出たもので濡れそぼり、湿った音を立てる

 時折びくびくと跳ね上がる肢体が限界が近い事を告げていた



「あぁぁ…も、もう…っ…!!」


 苦しげに眉を寄せて喘ぐレグルス
 激しく身を捩る度に玉の汗が飛び散る

 しかし苦悶する表情とは裏腹に、
 自分自身を責め立てる手の動きは勢いを増して行く


「あぁ…っ…!!
 レン…レン、もう…イく…っ!!」


 ぐっと身体を折り曲げると、
 歯を食いしばって自身を握り締める

 何度も身体を痙攣させながら、
 レグルスはその手に熱を解き放った





「……はぁ…ぁ…はぁ…はぁ…っ…」


 息を整えながら、がっくりとシーツに膝をつく

 欲望を吐き出したばかりのレグルス自身は、
 自らが放ったもので、ねっとりと濡れていた


 レグルスが身じろぎする度に、
 そこから白い粘液が滴り落ちてシーツに染みを作る

 それを舌先で舐め取りながら、
 レグルスは這った姿勢のまま足に絡み付いていた下着を脱ぎ捨てる


 そして濡れた手の平から体液を掬い取ると、
 自らの蕾にそれを塗り込め始めた



「んぅ…っ…あぁ………!!」

 白い指が淡く色付く蕾を擽る

 丹念に濡らして綻んだ頃合を見て指を差し込むと、
 汗で光る滑らかな背が弓のように撓った


「あぁぁ―――…っ…!!」


 甘く濡れた嬌声が鼓膜を震わせる

 空いた方の手で再び自分自身を握り締めると、
 その手を上下に動かして刺激を与える

 その動きに合わせるように、
 蕾に埋め込まれていた指もゆっくりと動き始めた





「はぁ…あぁ…っ!!
 あぁ――…ん…!!」


 くちゃくちゃと粘度のある水音を立てながら、
 次第に指の動きは勢いを増してレグルスを絶頂へと追い立てる

 銜え込む指の数を増やしながら激しく腰を振り、
 全身をくねらせて快楽に身悶えた


「あぁ――…あぁん…はぁ…ぁ…うぅ…!!」

 再び襲う快楽の波を堪えるレグルス
 限界が近いのか、苦しげにシーツを噛んで身を震わせた




「…っ…これ以上、無理…っ!!」


 先に限界を迎えたのはレンの方だった
 レンは立ち上がるとレグルスの背を抱きしめた


「…あっ……れ、レン…!!」

「もう我慢の限界だよ」


 汗の浮いた背に舌を押し当てて舐め上げると、
 レグルスの白い肌が泡立って震えた


 口付けを何度も落としながら、
 レンは蕾に埋め込まれたレグルスの指を引き抜く

 びくっ、と跳ね上がる腰を宥めながらレンは自分自身をそこに押し当てた




「…レグルス、力抜いててね…?」

「…っ…ま、待てっ…!!」

「流石にこれ以上は待てないよ
 ゆっくり挿れるから少しだけ我慢して」


 ぐっと腰を進めると充分に濡らされていた蕾は
 ゆっくりとレンを飲み込み始めた


「…う…ぐぅ…っ!!」

 限界まで抉じ開けられた蕾が痛みを訴えるのか、
 シーツを握り締めて苦しげに呻くレグルス

 圧迫感に息が詰まり一瞬、呼吸が止まる



「息、吐いて
 そのままだと窒息するよ?」


 レグルスの下肢に手を滑り込ませ、
 彼自身を握り込むと、微かな悲鳴が上がった

 まだ先程放ったもので濡れている


 その滑りを利用して小刻みに手を動かしてやると、
 甘く喘ぎながら強張った身体が少しずつ弛緩して行く



「…あぁぁ…っ…!!」

「少しは楽になってきたかな?
 …聞くまでもないか、気持ち良さそうな声出しちゃって…」


 鈴口を爪で刺激してやると、そこから蜜が溢れ出す
 ひくひくと動いているのが手を伝ってわかる

 含んだ熱は今にも破裂しそうなほど張り詰めていた



「そろそろ俺も動いて良いかな…」


 レグルスの反応を確かめながら腰を動かすと、
 彼の口から甲高い声が上がる

 その声に苦痛が混じっていない事を確認してからレンは腰の動きを強めた
 腰を打ち付けると、その動きに合わせてレグルスも腰を振り始める


「ぁあ――…っ…あぁぁ―――…っ!!」


 レンの荒い息遣いとレグルスの嬌声
 そして壊れそうなほど軋むベッドの音が部屋に響く

 汗の滴が飛び散りシーツに幾つもの染みを作った



「あぁぁ――っ…!!
 レン…オレ、もうっ…!!」

「んっ…うん、いいよ…俺も…!!」


 一際大きく腰を穿つと、
 レグルスは肢体を大きく痙攣させながら欲望を吐き出した

 一瞬の間を置いてからレンも熱を開放させる


 レグルスの細い腰を抱きしめると、
 レンはそのままベッドに転がった

 二人で倒れ込むように寝そべり暫くの間、荒い呼吸を繰り返す


 カーテン越しの朝日を浴びながら、
 気だるい時間がゆっくりと過ぎて行った





「…なぁ、レン……」

「…うん…どうしたの?
 どこか痛くしちゃった?」


「いや、そうじゃなくて…
 オレが脱ぐの…どうだった?
 サービスしてやったつもりなんだけど、興奮したか?」

「……鼻血吹かなかったのが奇跡だよ
 レグルスは俺から理性を奪う達人だね」



 苦笑を浮かべながらレンはレグルスの首筋を舌で辿る
 あの淫らな姿を思い出すだけで、再び身体の芯が熱く疼いた


「…あんなこと、一体いつの間に覚えたの?」

「ん…ジュンから聞いたんだ
 マンネリ化しないように刺激的な演出しろ…って」

「…ジュン君、なんだかんだいって、
 結局はゴールドさんと同じ事言っちゃってるよ…」


 似たもの同士なのか、
 それとも思考がゴールドのものに感化されてきたのか

 …後者だったら由々しき事態だ



「オレ、さ…他にもっと、凄ぇ事覚えたぜ?
 本当は今夜挑戦してみようと思ってたんだけどよ、
 まだ体力に余裕あるなら―――…してみてもいいか?」

「もちろん大歓迎だよ
 レグルスからの誘いを断るなんて、出来るわけないでしょ?」


「…じゃあ、第二ラウンド…開始していいか?」

「ふふっ…喜んで」


 満面の笑みを浮かべると、互いの唇を重ね合う
 絡み合う舌の感触を楽しみながら二人はその背を強く抱きしめた






「……というわけで、朝から凄い内容のエッチしちゃったわけなんだ」


 昼食のベーグルに齧り付きながら、
 レンはアイスティーのおかわりを注文する

 彼の正面では金髪の男が不機嫌そうに肘を付いていた


「…ふーん…良かったですね」

「ゴールドさん、聞きたい?
 もう思い出すだけで鼻血出ちゃいそうなんだけどさ」


 ゴールドとは対称的にレンは上機嫌そのもの
 心なしか肌も艶々と血色が良い




「でも朝晩エッチする習慣が出来ちゃうと、ちょっと困るなぁ…」

 言葉とは裏腹に困った素振りは全く無いレン
 むしろ喜んでいる――…というより、完全に自慢だ


「お徳用で買った100個入りコンドーム、
 たった一ヶ月で使い切っちゃったんだよ!!
 これ以上回数が増えると出費が痛い事になるかな〜って」

「……じゃあ、回数減らしなさい」


「あれって洗って使い直して大丈夫なのかな?
 破かないように気をつけて使わなきゃ…
 リサイクル精神って大切だよね」

「……聞いてませんね…」



「というわけで、これから使い回し出来そうなやつ買いに行くんだけど…
 良かったらゴールドさんの分も買ってきてあげようか?」

「…結構ですっ!!」


「親切で言ってあげてるのに〜…
 あっ…そうか、そういえばゴールドさん、エッチ禁止されてるんだっけ」

「………わかってて言ってますね…?」


「うん!!」


 元気一杯
 力強く頷く

 ぴきっ…と、ゴールドの額に血管が浮き出た



「あははは…ゴールドさんったら怖い顔♪
 欲求不満だからって俺たちに八つ当たりしないでね?」

「………っ…!!」


 何かを言いかけるゴールドから逃げるように席を立つ

 タイミングよく運ばれて来たアイスティーを受け取ると、
 レンはストローをくわえながらその場を立ち去った


 街で買い物をするのも久しぶりだ
 レグルスはもう待ち合わせ場所に来ているだろうか

 足取りも軽く、レンは街へと続く石畳を歩いて行った





― END ―




 …さて、久しぶりのレン×レグルスにござります
 このカップルに、とりあえず一言だけ言ってやりたい


 あんたらサルか←サルに失礼


 レグルスが…レグルスがどんどんエロい子になって行く…orz
 頼む、そのエロさを少しで良いからジュンに分けてやっておくれ…(笑)

 そして珍しくゴールドがトホホな目に遭っておりまするな
 まぁ…たまにはこういうのも良いじゃろうて(笑)


 そしてこのカップルは、どうしてもコメディが付きまといまするな
 話を書きながらいつ超常現象が起きるかと冷や冷やしておるのが原因じゃろうか…

 彼らは裏でもコメディ担当という風に受け取って下さりませ