一緒に朝日が昇るのを見たいと言ったのはレグルス。
レンは眠い目を擦りながら、レグルスについていった。



「……いつになったら日が昇るんだろうね……」
レンとレグルスは、朝日を見る為に海辺に来ていた、が、待つことおよそ一時間。そろそろ○×ゲームにも飽きてきた。
いい加減眠気に耐えられなくなったレンは、ぱったりと横になった。
「わ、悪い。眠いか?」
「うん。凄くね。はい俺の勝ち」
レグルスが動揺して変なところに×印を描いてくれたお陰で、すぐに勝利することができた。
「これで俺が36勝ね。……レグルス、弱くない?」
「そんなはずは……おいレン、もう一回だ!」
「はいはい、あと一回だけね」
まだ空は明るくならない。つまり暇なのである。

次の戦いはレンがあっさり勝利を収めた。









「……あ」
段々空が白んできた。
隣にいるはずのレグルスを見ると、自分から誘っておいて眠りこけていた。先程とは立場が逆である。
寝顔を見たいと思う気持ちもあるにはあるが、それでは何の為にまだ夜も明けない朝からこんなところにいるのかわからない。レグルスの寝顔を眺めるのはまたの機会にすることにした。
「ほら、レグルス。起きなよ」
熟睡しているのか揺さぶっても反応がない。仕方がないので鼻をつまんでやった。
数秒後、目を見開いて跳ね起きた。
「す、済まねえな、俺から誘っておいて……」
レグルスはすぐに状況が理解出来たらしく、それからひたすら謝っていた。



「……疲れたね」
「ああ」
謝り倒し、それをあしらうのに疲れたふたりは、横になった。レンは右を向いて、レグルスに話しかける。
「喋るだけでも疲れるんだね……」
実際殆ど怒鳴っていたのだが、その辺の近所迷惑はふたりともあまり気にしていなかった。
「……けど、楽しかったぜ?」
レグルスの瞳はまっすぐ空を向いていた。
「うん、そうだね」
その内容は兎も角として。
次の話題は何にしようと考えながら、ゆっくりと目を閉じた。











「あ」
気がつけば夜は明けていて、太陽と海が輝いていた。もう朝とは言えない時分だが、レグルスがわざわざ見に行こうと言ったのも理解出来る、美しい光だった。
当の隣のレグルスはまだ眠っている。
「……また?」
もう春になったとはいえ、朝は冷える。このままこんなところで熟睡していては風邪を引くかも知れない。
だが、やはり揺さぶった程度では効果がない。二回も呼吸を止めるのは可哀想なので、全身を擽ってやった。





「……やっちまった」
昇りきった太陽を見ながら、レグルスは低く溜息を吐いた。
「輝く太陽よりお前の方が綺麗だとか言おうと思ってたのに」
「顔赤いよー、レグルス」
歯の浮くような口説き文句をさらりと言えないレグルスは、レンの視線に気づいて慌てて顔を逸らした。
レグルスの赤く染まった耳を見て、レンはこっそりと笑いを堪えていた。



「でも綺麗だったよね」
「ああ、目的の日の出は見れなかったが、じゅうぶん綺麗な景色だったと思うぜ」
レグルスもレンと同じ感想を抱いていたようだ。
「……鈍感だなあ。君のことだって」
レグルスはレンの言葉を正確に理解するのに数秒を要した。
その数秒後、顔を真っ赤にしながら震え出す。
「ちょ、ちょっと待て、俺は……っ!!」
「あはは、言われると結構恥ずかしいもんでしょ?」
実は言った方のレンも少しいたたまれない。相手が想像以上に混乱しはじめたのだから尚更だ。
「あ、あのー、レグルス? あんまり本気にしない方が……」
「う、うわああっ!!」
うっかり肩を叩こうとしてしまったばっかりに、脱兎の勢いで逃走されてしまった。
「……まあ、いいか。あんな反応のレグルスが見れるなんて珍しいし」
レンは常になくいい気分で、のんびり歩いていた。
観光ついでにレグルスと合流しようと思いながら。


その後。
レンがレグルスを見つけられたのはその日の夕暮れで、手にはレグルスが勢いで破壊した公共物の賠償請求書があったとか、なかったとか。



BL系オリキャラ同盟の企画にて砂様に書いて頂いた小説にござります
レン×レグルスのラブラブほのぼの(+コメディ)ストーリーじゃな
『初々しい青春の1コマ』という言葉が脳裏に浮かびました(笑)

このカップルは主に唐突なコメディが書きたい時に活躍するので、
BL要素が強かったり、甘々な話にはなりにくいのじゃよ
それ故にこういう話は新鮮にござりまするな

…そっか…普通の御仁が書けば平和に話が進むのじゃな…
拙者が書けば十中八九、突拍子もないハプニングが起こることじゃろうて…

砂様、どうもありがとうございました〜