ザヨのエッセイ・３
今日は視覚障害について学びましょう。
視覚障害ではないけれど、私も２０歳までは視力が0.01しかなくてほとんど物が見えなかったのよ。
あの頃は酷かったわ……
台所で寝ている犬を鍋と間違ったりね
想像してみて下さい
鍋だと思って掴んだ物が
生暖かくて
しかも
もじゃもじゃしていたら
あのショックは暫く忘れられそうにもありません
例えるなら
砂糖だと思って紅茶に入れたものが
実は
味の素だったとき
あの時もショックでしたね
いや、本当に凄い味でして……
あぁ、話が脱線しましたね
えっと、そう、視覚障害
これはもう
自らの身を持って知るのが一番なんですよ
というわけで
クラスで二人一組になって
白杖を持つわけですよ
で、視界を塞ぐ為にアイパッチもつけるわけなんです
この状態で歩き回って視覚障害者の心理を学ぼうというわけです
これは
普段から何も無くても転んだりぶつかったりする私にとって
自殺行為なのでは
明らかに
無謀行為だ
自嘲気味に窓の外を見つめると
外は
土砂降り
うを
そして先生は外を見つつ一言
「大通りまで行きましょう」
嫌がらせか
「雨が降ってますから、各自一枚ずつ持って下さい」
と
先生の手には
半透明のゴミ袋
まさか
まさか
「ハサミで顔と腕を出すところは切り取って下さいね」
がーん
こうして約20名の生徒たちは
ゴミ袋を着る事になりました
目にはアイパッチ
手には白い杖
ぞろぞろと２列に並んで
地下街を練り歩く
傍から見れば
妖しい宗教団体
こんな姿
知り合いに見られたら
おしまいだ
いや
それ以前に
もう
嫁に行けねぇ
ようやく授業も終わって
晒し者から開放される
一刻も早く教室に帰りたい
外はドカ降り
でもそんな事もう気にならない
猛ダッシュ
そこにメールの着信音が鳴り響く
ごーきからだ
メールには一文
〝迎えに来たよ〟
来るなぁ―――!!!!!
たのむ
こんな私を見ないでくれ
祈るように校舎の前まで行くと
玄関の目の前に
ごーきの車があった
終わった……
よりによって
一番見られたくない奴に……
……。
ふ
こうなったら
私も
ごーきの
死ぬほど恥ずかしい姿を見てやる
ふふふ……
私の中で何かが壊れ始めていた
教訓
ゴミ袋を着る時は恋人を迎えに来させてはいけない
皆様もくれぐれもお気をつけ下さい……