ザヨのエッセイ集・２
今日の天気は薄曇り
風は涼しくて爽やかな朝
クラスメイトと朝の挨拶を交わし
授業準備をする姿は意気揚揚
陽光が差し込み
教室の中は清清しい
黒板には本日の授業項目が大きく書かれていた
〝死の教育〟
朝っぱらから縁起悪い
中年のおばちゃん講師が雑談交じりに熱弁を振るう
時折笑いも取りながら
ひたすら『死』について
語るわ語るわ
おばちゃん……
あんた、すげーな
もう
背筋を涼しい風が通り抜けっぱなし
二時間ほど経って
次の項目に移る
次の授業はもう少しポジティブだといいな
黒板には大きく
〝悲嘆の過程〟
おう
悲嘆の過程についての講義が行われる中
私の頭の中にはひたすら
〝朧月夜〟が流れていた
いつの間にか授業は
ホスピスの説明へと移っていた
末期癌の患者をいかに安らかに看取れるか
死を目の当たりにした患者にどう語りかけるか……
先生の話を聴きながら
私が思っていた事は
お腹減った……
朝食抜いてきたのよ、今日は
先生はテキストを音読している
末期癌のまだ若い母親を
自宅で看取る家族の話だ
もちろんノンフィクション。
余命一ヶ月を宣告されてから最期までの生活が
とても鮮明に書かれている。
余命を十日過ぎた辺りからの主人公とその息子の
心理と言動が生々しい
クラスメイトの大半が涙ぐんでいる
所々ですすり泣く声も聞こえてくる
そんな中
私は
腹の虫と格闘していた
ここで腹を鳴らすわけにはいかない
悲劇だらけの教科書を
先生は淡々と読み上げていく
爽やかだった教室は
今や
通夜状態
しんと静まり返った教室
聞こえるのは先生の朗読と
クラスメイトの鳴き声
たのむ
腹よ、鳴るな
つーか
何でこんなシリアスな教室の中で
私だけがこんな無駄にアホなバトルをしてるんだろう
…………。
今更か
開き直ってみる
とりあえず私が今すべきことは
飯だ（授業終わった）
目指せスーパーバイジー