決して真似してはいけな い地獄ラーメン雑炊の作 り方





ザヨ→ カズエ→ 泉鳥→ の色別で区別いたします







 あれは私ことザヨがまだ学生だった頃のことである…

 心躍る夏休み、ザヨ、カズエ、泉鳥の三人の同人女たちはコミケに出す合作本の仕上げのためカズエ宅へ泊まる事 となった

 原稿はそれなりに順調に進み、余裕の出てきた三人は多少の酒気もおび、ハイテンションとなっていた




 さて、貴方はご存知でしょうか?


 人間、酒気をおびると無性にある発作が出てくるものなのであることを…
















「ラーメン食いてぇ!!」


 突然泉鳥が叫んだ







「カズエ、あんたんとこラーメンないの!?」

「インスタントの塩ラーメンなら一袋だけ残ってたとおもうけど」

「私、作ってくるっすよ?」

「一人分かぁ…あたし一人で食べるのも悪いし…」

「ラーメン砕いてご飯入れてラーメン雑炊作ってみようか?」

「何それ…」

「知らないの? ラーメンのスープにご飯入れて煮込むと美味しい雑炊になるんだよ」

「それならみんなで食べれるしね、よしザヨ作ってみなさい」

「…え…マジっすか?」

「優しい先輩が二人がかりで教えてあげるんだから感謝しながらやってみようね」

「…感謝できるような教え方して下さいね」










 ―――十分後…



 ナベの中では無残にも砕かれ粉々になった塩ラーメンが煮えたぎっていた




「さて、ここで人数分のご飯を入れましょう」

「お茶碗三杯分だよね〜…」




 ぐつぐつぐつぐつ……ぽちょん☆



「何か、一気に水分無くなってない?」

「ラーメンがどこに入ってるのかすら分からん…」

「麺の三倍のご飯が入ってるからだね」

「スープが少なくてご飯がポソポソしてる…」

「水を足せばいいじゃん」



 じゃ―――――……

 泉鳥、ナベの中に冷水大量投入



「ちょっと多すぎるような…」

「それより、冷水でよかったの!? ナベの中身が一気に冷え切ったよ!?」

「煮ればいいじゃん」



 ぐぉぉおおおおおおおおお……

 泉鳥、火力最大





「お米の原形が崩れてきたね」

「麺は既に大半が溶けてますが……

「お粥だと思えばいいの」



 ぐつぐつぐつぐつぐつぐつ………



「はい、それじゃあ仕上げに生卵を三つ入れて軽く掻き混ぜてね」

「スープがゲル状になって見えるのは気のせいでしょうか……」

「卵を入れれば気にならないって」





 泉鳥が卵を入れ、完成―――……




「じゃ、盛り付けする前にちょっと味見…」

「どれどれ…」

「あの、何か食べるのがコワいんだけど………」

「だまされたと思って食べてみなさい」





 もぐもぐもぐも…ぐ……も…………












 ――間――


















「だっ…だまされたっ …!!」






「何これ、不味っ………とい うか、っ!!!






「ザヨあんた一体何入 れたの!?」





「入れたのはお前 (泉鳥)じゃ――!!!」










―――しばらくお待ちください…








「思うに、味付けが薄すぎるんだと思うんだ」

「ラーメンとご飯の割合が1:3だもんね」

「塩でも足してみる?」

「それよりも他の食材を入れて味付けを根本的に変えてよ」

「何を入れるの?」

「冷蔵庫に何が入ってる?」

「えーっと……納豆とイカの塩辛と…辛子明太子…ぐらいですかね…」

「何を入れるの?」

「究極の選択っすね」

「ふふふふふふふふふふ………」

「泉鳥…ちょっと飲みすぎだね」

「さっきから行動も大胆だしね――って、泉鳥っ何をっ!?」













「調合っ♪」

















「――……奴を止めろ ぉっ!!」






「待て待て待て待てぇ い!!!」






 しかし、時は既に遅かった……

 再び煮えたぎるナベの中には―――…










「うわ――…全部入れちゃったよ…」

「納豆と塩辛と明太子ってブレンドしたらどんな味になるんですかね」

「苦くて臭くて辛くて生臭いの☆」

「あぁぁあ……何て恐ろしいことをっ……!!」

「換気扇回します」

「……ザヨちゃん何か異様に落ち着いて達観してない?」

「先輩こそ何だかんだ言って楽しそうじゃないっすかぁ?」

「………くくくくく…………」

「………ふふふふ………」






 そのとき、二人の中の何かが切れた











「残ったビールと清酒も入れちゃいましょうかっ!?」


「マヨネーズ入りまぁ〜す♪」


「必殺・レモン汁攻撃!!!」


「そう来るなら私もっ!! ふふふ…この私に奥義を出させるとはな…食らえっ!! 落涙のラッキョウ・ストーム!!!!」


「りんごの皮のアップルウィップ!!」


「甘いっ!!! 賞味期限一週間過ぎたヨーグルトの切ない胸の内をその身に永久に刻むがいい!!!!」

















 多少酔いの醒めた泉鳥は思わずつぶやいた









「誰がそれ食うね ん……」











 ナベの中身は既に原形を保たぬケロイド状のスライムと化していた……









「泉鳥、ラーメン雑炊できたよ〜」


「全部食べてくださって結構っすよ〜」









「あんたら悪魔か」





 泉鳥は無理矢理押し付けられたこの世のものとは思えぬ鍋料理を手に涙した……











「あぁ…納豆がねっぱるぅ…マヨネーズとヨーグルトの境目がはっきりしないぃ…って、生ゴミ入ってるし………」


 泉鳥はナベの中身を箸で掻き混ぜながらどこか遠くを見つめていた
 その背に哀愁が漂ってみえるのは気のせいではないだろう



「箸をつけたからには完食しないと無作法だよねっ☆」

「食べ切れない場合はラップをしてフリージングしておくとよろしいですよ〜♪」

「あんたら悪魔決定っ!!!」

「悪魔というより死神かもね」

「確かにそのナベは身の危険を感じさせるものだしねっ」

「………………」






 何かが吹っ切れていた二人は最強だった…






「さ、私たちはもう寝よっかザヨちゃん☆」

「はい、カズエお姉さま♪」






 意気揚々と二人の悪魔(死神?)は床についたのだった



 その後、残された泉鳥とナベがどうなったのか―――……












 それは本人が黙して語らないため私たちが知る由もないのだった☆






―END―








〈言い訳〉
  コミケ前ってストレスたまるから…ね?