Zayoのエッセイ ６
先日、老い先短き老人を励まし続けた実習期間をついに終えた
一部の患者は生きた心地しなかっ
たかも知れないが、とりあえず自分は励ましたと思うっておこう
思い起こせばこの二十数年生きてきたこの人生の中で私は
善行と呼ばれるものを一体どれ程成した事があるのだろうか
悪行なら数え切れない
ほどした事があるが
情けは人のためならず、と古人はよく言ったものである
人のために何か良い事をすると、それが巡り巡って自分に帰ってくる、という意味だ
決して情けをかける
とその者のためにな
らんから放っておけと
いう意味ではない
私は熱心な仏教徒ではないから来世のために徳を積もうとは思っていない
キリスト教かぶれではあるが洗礼を受けているわけでもないし神の国で永遠の命を欲しいとも思っていない
ただ、何となく気になるのだ
私はあまり他人のことは気にならない性格の持ち主だけれど
自分の周囲の人は今までにどれ程の善行と悪行を行ってきたのだろうか
別に、他人と自分を比較して焦る趣味は持ち合わせていない
他人の善行を知り、己の人としての未熟さを知り、社会に取り残されたと焦燥感に駆られる
そんな繊細さは絶対に持ち合わせてない
普段からマイペースで周囲を錯乱させ爆走している私がそんな感情を抱くわけが無い
そんなことは百も承知である
しかし、一度気になってしまったら確かめずにはいられないのだ
というわけで、同僚の男女や身近な者たちに質問してみた
「ねぇ、今まで生きてきた中で、自分が一番した良い事って何？」
私の友人の女性は少し宙を見つめた後、呟いた
「小学生の頃、野良犬
に冷蔵庫の中の霜降り
ステーキを全部食べさ
せてあげたことかな…
…」
親に怒られなかった
か？
「…………じ、じゃぁ、今までに自分がやった中で一番悪い事って何？」
友人はタバコを一口吸うと重い口を開いた
「旦那の実家にお歳
暮と間違えてエッチ
な同人誌のダンボー
ル送りつけたことか
な……」
それは酷い……
私はそれ以上、何も聞くことが出来なかった
その後、私は懲りずに同僚とのランチのときに隣になった男性にも同じ質問をしてみた
「俺がやった良いこと？」
「そう、何かない？」
「うーん、襲われてた女の子を助けた事ぐらいしかないな……」
いや、十分ご立派で
すよ！！！
うんうん、やっぱり善行はこうでなきゃね
弱いもの助けは善行の基本
あんた、立派な漢だよ……
「じゃあ、悪い事は？」
「おやじ狩りかな」
ちょっと待てぃ
私は思わず「びっくり○ンキー」の机に突っ伏した
……今のは聞かなか
ったことにしておこう…
…
何かないのか、もっと
こう、普通の返答は
彼氏のゴーキに尋ねてみれど「何だべなぁ……」と言ったきり毛布をかぶってブラックジャックを読み耽ってしまった
母親には怖くて聞くこ
とが出来なかった
だって、絶対に何
かやってそうなん
だもん……
他にも、偶然駅で逢った後輩にも聞いてみたが、彼女は俯いたまま
延々と薄笑いを浮かべ
続けていただけだった
同人仲間の先輩は
「深入りしない方が身
のためよ」と言い残し
姿を消した
先輩、貴女、一体
何を……
こうして私は身近な連中に一通り聞いて回った
ちょっと空恐ろしい経験もしたが、とりあえず私は色々な人の経験を聞けて満足だ
ご協力いただいた皆様、どうもありがとう
感謝してます
あとね……
勝手にエッセイに載
せてゴメン
でも、実名は載せてないから
許せ。