瞑想に挑戦



 親たちの間で流行っている瞑想というものを、
 娘の私もやってみようかと思い、
 こうして本を手に取っている――…


 …って、これじゃあ徒然日記だ


 とにかくこれから瞑想をしてみようと思う

 まぁ自分の場合、瞑想というより空想
 空想というより妄想といった方が正しいかも知れんが

 妄想――…じゃない、瞑想して浮かんだビジョンは、
 イラストにして載せてみようと思う


 …頼むから、とてもじゃないが絵に出来ないような、
 とてつもねぇブツが脳裏に浮かばない事を祈る




 …で、だ


 とりあえず図書館に向かうらしい
 図書館に行って門番とやらに会うらしい

 というわけで図書館と門番を頭に浮かべてみる



 ……………。


 すみません、国籍何処ですか?
 と、問いかけたくなるような人が浮かぶ

 というより空気というか周りの雰囲気が奇怪


 赤と緑


 クリスマスカラーだけど、そんな綺麗なものじゃなくて

 例えるならお化け屋敷のライトアップのような
 赤と緑の光がぼや〜っと照らしてる感じ



 んでもって、図書館の壁にもたれかかってこっちを見ている門番とやら

 中国か韓国か日本か

 アジア系の大昔の民族衣装のような
 でも西洋の城勤めキャラでありそうな服にも見える




  



 眼鏡かけててニコリともしない
 真っ先に頭に浮かんだ言葉が『公務員』

 お役所仕事ですか、そうですか
 もしかしてタライ回しってオチですか?

 アストラルな世界まで来て公務員のお役所仕事に振り回されるんですか?


 本には危害は加えないと書いてあるけど、
 この空気というか雰囲気自体が既に精神的ダメージ






 くっそう…


 この朴念仁、とことんお役所気質だ
 何言っても表情すら変えやがらねぇ…
 せめて返事くらいしろや

 まるで不機嫌な時の自分を見てるようだ


 とりあえず本だ本

 自分自身のことが書いてあるという、
 魂の本とやらを受け取るらしい

 自分の魂――…さぞかし腐ってるに違いない

 本のビジョンを思い浮かべる





 ……………。

 あの…

 もしかしてコレ?

 この妙に薄っぺらい本ですか?

 これって、同人誌じゃございませんこと?


 
OK。
 流石だな、自分


 とりあえず開くか
 BL本だったらどうしよう…
 
 萌え萌えな内容だったら後で腐女子友達に連絡だ




 そして本を開く


 …んが

 妙に強いライトが当たってて読めない
 ちょっと照明さん、もうちょっと落として下さいな

 眩しくって字が見えないって
 むしろ光で字が真っ白になっちゃってて
 何処に字があるのかすらわかんないって


 …なんて思ってるうちに、

 燃 え や が っ た


 これライトじゃなくて火?

 あぁ、もしかして虫眼鏡の実験?
 虫眼鏡で光集めて紙燃やすとかいうアレ





   



 そっか…

 うん、

 あのね…


 ふ ざ け ん な 



 萌えじゃなくって燃えですか
 というかコレ、どんなメッセージですか

 こういう仕様ですか?
 請求されたりしませんよね?
 
 おい、答えろや朴念仁


 …もういいや、次行こ、次





 続いて
 こんどは図書館の裏口へ通される

 水族館の裏側探検ツアーとかなら行っても良いが、
 正直言って図書館の裏口を案内されても…まぁ、いいや


 ドアをくぐると、そこに広がる光景

 一面の麦畑
 見渡す限りの麦畑

 ただ、黄金色ではなく真っ白
 真っ白な麦畑が一面に広がっている


 風も無いのにゆらゆら



 ……というか、これって麦だよね?


 実は綺麗に食べた魚の骨ってオチは無いよね?


 一面に広がる魚の骨―――…

 な、何か嫌だ
 凄く嫌だ

 これは先日、貝塚を見た影響だろうか…



 本には『この光景を全身で味わってください』と記されている



 ………。

 うん、これは麦
 そうさ…これは麦さ

 麦という事にしておこう


 麦オッケー!!





 続いてメッセンジャーとやらに会うらしい


 さて、どんな奴だ

 今までの展開からして、
 係長っぽい恰幅の良いオヤジが出てきたらどうしよう…


 なんて考えてる間にも妄想は止まらない

 ほんのり周囲の空気が変わってきたな〜
 とか思ってるうちにパッとスポットライト

 このライトの中心にメッセンジャーが…!!




 …………。

 ………………。


 あの…これ…これ、ですか…?


 全体的にキツネ色で

 曲線を描いた緩やかなフォルム

 手の平の上にコロンと乗りそうな大きさ


 スポットライトの光に照らされて、
 ぼんやりと浮かんでいるそれは――…




 ひよこ饅頭だった



 …おぉ―――…い…


 何で〜…?
 どうしてぇ〜…?


 この脱力感をどう言い表せば良いのだろう…


 ひよこ饅頭から何のお言葉を頂けと…?
 むしろひよこ饅頭そのものを頂けとか…?




 いや、考え直せ
 むしろ見直せ

 そして別のメッセンジャーの姿を思い浮かべるんだ、自分!!


 …ええと…そう、これはツボ!!

 ひよこ饅頭っぽい形をしたツボ!!
 上にぱっくりと開いた穴があって!!

 ん―――…と、それから尾っぽの所にはクロワッサン



 ………。


 クロワッサン!?

 いよいよ自分の想像力に脱力

 何でツボの尻にクロワッサンが…
 でも頭に浮かんだひよこ饅頭っぽいツボの尻には確かにクロワッサンが



   



 ここから一体何のメッセージを受け取れと…

 ツボに手を入れてもアンコしか入ってなさそうな予感

 もしかしてツボの前で笛を吹けば真のメッセンジャーが…!!
 …いや、そんなメッセンジャー嫌だ




 しゃーねー…次行くか…


 というわけで戻ってきた
 微妙に公務員の顔が違ってる…

 まぁ、いいや
 じゃ…帰るから


 そーゆーわけで、


 手土産よこせ


 ここでひよこ饅頭出されたら、
 容赦なく張り倒せる気がする

 ただ所詮、この脳内だ


 手渡された箱にハズレの文字
 ――…それくらいの展開は覚悟して置かなければ



 …が、しかし


 公務員に貰ったのは花びら
 ピンク色の花びらが一枚

 一瞬赤紙かと思った自分に乾杯


 桜――…じゃなくて、これはアレだ

 蓮の花びら
 先日蓮の花を見に行った影響だろうか



   




 蓮の花――…から読み取れるメッセージ

 キーワード性が高いような、低いような
 蓮という言葉から連想されるメッセージとは何ぞや?


 まさか『ハス女』と言われているわけでもなかろうに

 いやいや、ここまでしておきながら、
 唯一貰ったメッセージが『蓮っ葉』の一言じゃ悲し過ぎる


 それとも何か?

 蓮の花を見に行ったくせに、
 葉の上にいたカエルにばかり目をやっていた事への当て付けか?




 様々な疑問――…というか、突っ込み要素を胸に一先ず終了

 なにも、こんなときにまでウケを狙わんでも…
 次回はもう少し真面目な展開になるだろうか…