キミのためにできること
カイザルの兄貴を探して、ゴールドと二人で度に出た俺は、
またしてもサバイバル生活を送っていた。
この異世界の生物には相変わらず驚かされっぱなしで、
なかなか慣れる事が出来ずにいる。
戦闘になっても俺はやっぱり悲鳴をあげるか逃げるか、そんな事しか出来なくて、
カイザルにもらった剣だって一度も使った事がないぐらいだった。
いつだって、俺の事はゴールドが守ってくれて、俺はやっぱり役立たずだ。
戦うのも、様々な手配も、王子の兄貴の情報を集めるのだって、動いているのはゴールドばかり。
俺が言い出しっぺなのに、結局は何も出来ていないそんな状況に自分の力なさを痛感する日々だった。
今だって、木の上から突如降ってきた芋虫のオバケみたいな気持ち悪いやつを、
ゴールドが華麗な剣さばきでやっつけてくれたところだ。
「いつもおまえにばっかり戦わせてごめんな。俺だって男なのに、守られてばっかりだ」
溜息まじりに呟くと、ゴールドは俺を元気付けるみたいににっこりと笑った。
「人には得手不得手があるのです。ボクはたまたま戦いがわりと得意な方ですし、
でもジュンみたいに上手な絵は描けないのです」
「そりゃまあ、そうなんだけど。でも絵が描けたって、旅するのには何の役にも立たないし。むしろ足手纏い?」
「そんなことないのです!」
ゴールドは、小さな子供に言い聞かせるみたいに、俺の手を握り、その金色の瞳で俺の目をじっと覗き込む。
「ジュンがいるからボクは戦えるのです。ジュンのために、強くいられるのです」
真剣にそう言い、そして最後にぼそりと独り言のように呟いた。
「…ジュンがボクより強かったら、嫌なのです…」
確かに、ゴールドよりも強い俺なんて気持ち悪いよなあと、自分でも思う。
当然、人間の俺には魔法なんて使えないし、となると肉体勝負でいくしかない。
すごいマッチョな俺を想像して、げんなりした。
「それに、役になら立ってるのです!」
しゃきんと胸を張ったゴールドは、首元にぶら下がっている魔石をそっと握りしめる。
ジュンが細工し、プレゼントしたものだ。ゴールドはいつでも身に付けてくれている。
「これはちゃんとボクを守ってくれているのです」
「そうだね…」
こんな事しか出来ないけれど、それでも何か役に立てるようにと勉強したマジック・アート。
気休め程度の力でも、それは確かに存在する俺の力だ。
「俺も、ゴールドを守れるのかな」
たとえ、ゴールドが俺を守ってくれるほどじゃなかったとしても。
「もっともっと勉強するよ。マジック・アートの事も、この世界の事も」
「はい。期待しています」
俺たちは、再び道なき道を進み始める。
そうだ、こんな所で立ち止まっている暇はない。
俺には友を助ける使命があるのだ。
力の限りに進むしかない。
「でも、勉強ばかりでなく、ボクの相手もしてくださいね?」
ゴールドは俺の腰に手を回し、にっこりと微笑んだ。
<終わり>
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え〜、zayoさんの武瀬純くんを書かせていただきました。
一応、ワイバーンを求めてのその後な感じで書いてみましたが、
お目汚しですみません〜Uu
本当はもっと楽しいお話なのですっ
もっとゴールドにくさいセリフを言わせてみたかった…けど無理でした(がっくり
いやはや、力量不足でゴメンナサイ。