「───────ジュン?」
夢の淵から呼び覚ます声。
その声に、びくっと一瞬身体を強張らせて眼を覚ました。
硬質でいて穏やかな綺麗な顔が、焚き火の明かりに照らされている。
彼の黄金の瞳が心配げに俺を見つめていた。
額に浮かぶ冷や汗に、白い指が触れる。
今さっきまで見ていた嫌な夢が掻き消えていく感覚がする。
「ジュン、魘されていたのです。怖い夢でも見たのですか?」
「うん、そんなとこ……………」
ゴールドの肩をつややかな髪が滑り落ちていくのを見つめながら、俺はぼんやり呟いた。
見えない何かに追い詰められて、息が出来なくなる夢。
夢だけに、一度覚めてしまえば内容は曖昧になってしまう。
ただ、ひどく怖かった……………起こしてもらえなかったら、もっと長く苦しんでいた。
ただでさえ疲れてるのに、何で夢の中でさえも疲れなきゃいけないんだ……………。
「少しの時間でいいから、何か話しててくれないか?」
ゴールドは子供をあやす様にゆっくりと髪を撫でてくる。
その手が心地よくて、俺はつい甘えてそんな事を云った。
「判ったのです。何の話がいいのですか?」
ゴールドは快く頷くと、そう聞き返してきた。
……………と、改めて訊かれると、何の話がいいと答えられない。
脳内は半分微睡んでるし……………。
「……………別に何の話でも」
「それでは、ボクも困ってしまうのです」
俺が曖昧な事を云うと、彼に困った様な顔をされた。
本当は困ってなんかないのに……………そんな仕草に参ってしまうのは俺だ。
「では、やっぱりお話はやめにするのです」
「ん……………?」
ゴールドはぼんやりしてる俺を抱え起こした。
そして、俺がその意を解するより早く、彼に抱き込まれていた。
体温がすぐ傍に触れて、暖かくて……………。
「ボクのお話より、心臓の音を聞いていた方が落ち着くと思うのです」
腕の中に抱え込んだジュンの体重を全て受け止め、ゴールドは静かに云った。
ジュンの頭を自分の胸元に寄せ、彼の身体を支える。
体温とか、すごく気持ちいいんだけど、落ち着くよりは、その逆だって。
すっかり抱き込まれて今更逃げられないんだけど……………顔、赤くなりそう。
「ぁ、あの、ゴールド……………」
「どうしたのですか?」
見上げようとした顔が近くて、俺は眼を合わせられない。
「イヤなのですか?」
俺が俯くと、不安げに問い掛けられる。
自分の頭の中の歯車が何処か狂って、現実感が薄れてく。
「そうじゃなくて、なんか……………まだ夢の中みたいで──────」
「夢なのです」
俺の言葉を遮り、彼はそう云った。
「ですから、このまま眼を閉じて下さい。少し時を置いてから、今度はちゃんと目覚めて下さい」
ゴールドの手がそっと俺の目元を覆うのに促され、俺は眼を閉じた。
瞼の上に暖かい掌が降りてくる。
「それまで、おやすみなさいなのです」
「うん……………」
最後に小さく頷いて、俺は完全に体重を彼に預けた。
「夢じゃなきゃ、いけないのです」
ジュンが意識を手放す頃、ゴールドが誰に云うでもなく呟いた。
ゴールド、オヤジ大人の余裕って感じにござりますな
凄くラブラブで周囲の空気がピンクに染まって見えまする
時期的にはワイバーンを求めて≠フ第15話の後くらいだそうです
…変色した妖しい葉っぱを食わされた後の話ですな(笑)
あんなもん食うから、夢の中で魘されるのじゃろうて…
つーか、ジュンよ…ゴールドに話をさせちゃ駄目じゃぁ!!
奴の口からはハニーシロップ級の口説き文句かオヤジ丸出しの下ネタ話しか出て来んわぁ!!
でもゐ兎海様のゴールドはそんな事しそうにないのぅ
やはり拙者が書くのとは違うのじゃな…勉強になりまする
ゐ兎海様、どうもありがとうございました