Black night



 異世界も季節は廻る


 季節は夏
 昼夜問わず熱気込み上げる夏

 全身から噴き出す汗
 陽光を全身に浴びて身も心も焼け焦げる

 いっそ太陽を呪いたくなる程の灼熱地獄

 通り行く人々の肌もこんがり小麦色
 むしろ、見渡す限りコゲ人口増殖中



「…あ…暑い――……」

 ここはとある宿の一室

 半裸の青年がこの上なくダレていた
 余程暑いのだろう、僅かな涼を求めて床にべっとりと張り付いている

 彼の名前はカーマイン
 北国生まれの彼は暑さに滅法弱かった


「何で夕方なのに、こんなに暑いんだ…」

「カーマイン、きっと外の方が涼しい
 陽も落ちてきたし少しだけ外に出ないか?」

 彼の恋人、メルキゼデクはカーマインを外に誘う

 茜色の空に木の葉が揺らぐ
 確かに外の方が風通しは良さそうだ

「ん…じゃあ、ちょっとだけ出歩くか」

 彼らは涼める場所を求めて宿を出た


 人通りのある場所はそれだけで熱気を感じる
 二人は自然と寂れた路地裏へと足を運んでいた

「でも、今って微妙な時間帯だな
 普通の店は閉店準備始めてるし、
 かと言って酒場はまだ開いてないし…」

「向こうに露店が見える
 まだやっているみたいだから、行ってみよう」

 好奇心旺盛な子供のように嬉々として店に向かうメルキゼ


 最近になってようやく緊張せずに買い物が出来るようになったらしい
 メルキゼは驚くほど積極的に店に顔を出すようになっている

 そんな彼の変化が嬉しくもあり寂しくもある複雑な心境
 子供の成長を見守る親のような感情を抱きながらカーマインは彼の後を追った



 メルキゼは露店の店主と何やら話し込んでいる
 こうして自分が教えていない事も覚えて行くのだろう

 店主はアミュレットを身に付けて水晶球を持っている
 どうやらこの露店では占いをしているらしい

 カーマインは邪魔をしないようにそっと彼らの会話に聞き耳を立てた


「―――…で、具体的にどうなる?」

「そうですね…何故かボコボコ状の物がその辺に浮かぶでしょう」

 待て


「それ、全然具体的じゃないから!!」

 しゅぱ、と鋭く突っ込むカーマイン
 話の腰を折るのは悪いとは思ったが、今はそれ所じゃない

 これからどんな怪奇現象に見舞われるんだ!?


「おい、何について占ってたんだ…?」

「ああ、カーマイン
 別に大した事じゃないから気にしないで」

 充分に大した事だって!!
 物凄く気になるってば!!

 ボコボコ状のモノって何だよ!?


「それで、私はどうしたら良いのだろう?」

「…ひとつアドバイスしましょう
 人生はなる様にしかなりません
 でも、まだ若いですから失敗してもやり直し出来ます


 それ、アドバイス違う
 何の解決策にもなってないし!!


「…最終的には安全なのだろうか?」

「何事も全て順調に進みます―――…運が良ければ

 運かよ!?
 最終的には運頼みなのかよ!?



「…占いとは抽象的で難しいものだな…」

「いや、抽象的って言うか…」

 それ以前の問題だ
 あえて言うなれば奔放的


「せっかくだからカーマインも占って貰うと良い
 創業5周年セールで1人2回まで無料だそうだから」

 創業…って、ここ露店なんだけど…
 露店でも創業って言うのだろうか

「カーマインは何を占う?」

「えっと…」

 そう言われても困る

 占い結果も適当な感じだったし
 …まぁ、所詮占いなんてそんな物なんだろう


「そうだな…無料なら占って貰うか」

「何を占いましょう?」

「じゃあ…健康運を」

 暑さのせいで身体がダルい
 少し夏バテ気味かも知れないと思っていた

「わかりました」


 占い師は無言で水晶球を翳した
 恐らく水晶球の中に占いの答えが映るのだろう――…

 やがて占い師は水晶球を下ろすと、
 真っ直ぐにカーマインの瞳を見つめた

 水晶球がキラリと光る
 占い師がゆっくりと口を開いた


 そして―――…



「右が1.2、左が1.5、+αが148…はい、正常値です」


 視力測定!?

 ――…って、最後の+αって何!?
 俺の何処がどのように148なんだ!?


「あ、あの…最後の数値は?」

解像度です」


 何処の!?


 …って、普通健康運で視力測るか?
 しかも水晶球で


「…あの…健康運ですよね…?

「ええ、そうですよ
 上が微妙に白金色ですね…
 やるなら今のうちですよ」

 何が!?
 何処が!?


「…占いとは実にミステリアスなものだな…」

「いや、ミステリアスっていうより…」

 この場合支離滅裂と言った方が正しい
 はっきり言って何をどう占われたのかさえ不明だ


「これ、絶対に健康運占いじゃ無いだろ…」

 どっと押し寄せる疲労感
 しかし占い師は満足気に水晶球を磨いていた

「――…さて、次は何を占いましょう?」


 これで終了なの!?
 結局自分が健康なのか不健康なのか…それすらわからない



「…いや、もう充分だ…」

「そうですか?
 では最後にラッキーアイテムを教えましょう」

 占い師は徐に、風呂敷包みを足元に広げた
 ごろごろと大量の商品が地面に転がる

 恐らくこの中のどれかを売り付けるつもりなのだろう

 無料で占いをして、適当な事を言って商品を買わせようとする
 良くある販売手法だ…充分に警戒して注意しなければ


「いや、買い物する気は無いんで――…」

「見るだけでも結構です
 ほら…これなんか凄いですよ?」

 占い師が笑顔で示した風呂敷の中央部

 そこには見るからに憑いてそうな人形や、
 何故かお経がびっしり書かれたロザリオ
 そして風も無いのに揺れ動く紐などが並んでいた


 確かに凄い迫力
 素人目にもヤバそうなオーラを痛いほど感じる

 しかし―――…


「…これ、絶対ラッキーアイテムじゃないから!!」

 むしろ不運を呼び込みそう

 とうか、この店本当に大丈夫か!?
 ここにいて俺たちは呪われたりしないのか!?

 急に不安になってくるカーマイン
 しかしメルキゼは目の前のオカルトグッズに興味津々な様子を見せていた


「占い師、これは何?」

 メルキゼは興味深そうにオカルトグッズを指差す
 何にでも興味を示せるという事も、ある意味一種の才能だ

 占い師は笑顔で商品の説明を始めた

「これは太古より伝わる現代の最新技術で作られた化石です」

 それは古いの?
 それとも新しいの?

 はっきりしろや


「じゃあ、こっちは何?
 雨傘のように見えるのだけれど…」

「深紅のアンブレラです
 この傘が雨に濡れると、流れ落ちる水滴が血に変わります

 嫌過ぎる


「それは…何とも使い難そうだな
 血は洗濯しても落ちないから困る」

 突っ込む場所は本当にそこで良いのか?
 もっと他に突っ込むべき場所があるんじゃないのか!?


「この靴は履いて歩くと何故か足音が複数聞こえて来るんです」

「賑やかで良い事だな」

 良くねぇよ!!


「明らかに憑いてるだろ、それ…」

「オマケが憑いてボリュームアップ?」

「…何か違う…」

 毎度の事ながら何かがズレているコメントをありがとう
 カーマインは諦めて話題転換を試みた




「…で、俺のラッキーアイテムは結局どれなんだ?」

「少々お待ち下さい
 これから占ってみます」

 再び水晶球を覗き込む占い師
 一体この中のどれを指し示すつもりなのか


「どれが選ばれても嫌だな…」

「…カーマイン、ひとつ聞いても良いだろうか?
 さっきから言っている『ラッキーアイテム』って何?」

「ああ、持ってると運気が上がる物だ
 人によって違うんだけど…身に付けたり持ち歩いたりするんだ」

 日本にいた頃は毎朝ニュースの星占いを観てから学校に行くのが日課だった
 特に占いを信じているわけではないのだけれど―――…何となく観てしまうのだ


「…占い結果が出ました」

 徐に占い師が口を開く
 咄嗟にカーマインは斜めに構えた

 弱みを突いて何かを売りつけられたらたまらない


「…それで…何を持ち歩けば良いんだ?」

 占い師は水晶球を台に戻す
 そして一呼吸吐いてから静かに答えた


「ラッキーアイテムは白熊の親子
 生け捕りにして背負うと良いでしょう」


 無茶言うな

 ――…って、熊はアイテム違う
 幸運が舞い降りる前にこっちが食われる


「ちなみにラッキーカラーは空五倍子色です」

 何色だよ!?
 そもそも何て読むんだよ!?


「それは…例えばどんな色なのだろう?」

「簡単に言えばマイルドに渋い色です」

 どんなだよ!!
 カーマインとメルキゼの心の突っ込みが見事にハモった瞬間だった




「あーもう…何か疲れた」


 ぐったりと憔悴しながらカーマインは占いの店を後にする
 メルキゼだけが妙に嬉しそうだった

「…何かお前、妙に嬉しそうだな」

「だって初めて占いしたから
 私はまた新しい事を覚えたんだ」

「いや、今日の事はあまり覚えない方が…」

 というより早々に忘れるべきだと思う
 じゃないと悪夢を見そうだ


「でも…まぁ暇潰しにはなったな
 この時間帯になると風も涼しいし…

 ちょっとした恐怖体験も味わえたし

「カーマイン、もう帰ろうか
 冷たくなるもの作ってあげるから」

「そうだな…明かりが消える前に帰るか」


 爽やかな風に吹かれながら歩く帰り道
 虫の鳴き声が耳に心地良い

 空には満天の星―――…あれは天の川だろうか
 ここが日本なら何処かで花火の音でもしていただろう

 何となく気分が乗って、メルキゼの手を握ってみる
 案の定驚かれたけれど彼自身も慣れて来たのか手を握り返す余裕があった


「この星を見ていると思い出す…」

 メルキゼは空を見上げながら呟いた
 月明かりに照らされた横顔は頬の辺りだけが色付いている

「……ん…?」

「君と想いが通じ合った日も、このような星空の下だった
 私はあの日以来、満天の星空を見上げる度に思い出す」

「…あぁ…そうだったな…」

 俺もつられて空を見上げた
 そして心の中で、そっと彼に告げる

 ごめんな、メルキゼ―――…

 俺、イソギンチャクのインパクトが強過ぎて正直あまり覚えてないんだ


「ねえ、カーマイン…覚えているだろうか?
 本当は私、あの時君に花をプレゼントしたかったんだ」

「ああ、覚えてるよ…」

 その後のオチまでしっかりと!!
 この先何があってもこれだけは忘れないだろう


「それで…今度こそ、君に花を贈りたい
 さっき、店で花飾りを買ったんだ―――…受け取ってくれるだろうか?」

 メルキゼが取り出したのは花を模した飾りだった
 白と赤紫のグラデーションが綺麗な藤の花――…


 …って、藤の花!?

 普通、花を贈るといったら花束だろうに…
 手の上にコロンと乗せられた造花が所在無さ気に転がる

「これまたレアな事を…」

「そうだろうか?」

「平安時代とかなら有り得たかもな…
 手紙に生花とかを添えて出してた時代だし
 ありがとうな…お前の気持ち、ありがたく受け取っておくよ」


 つか、藤の花って間近で初めて見た
 というより手に取って見る事自体が初めてだ

 造花だけど、かなりリアルに作られている
 機械とか無いのに…この世界の人って意外と器用なんだな

 俺は妙に感心しながら造花を眺めていた



 一足先に帰っってきたツインのルーム
 自分に割り当てられたベッドに腰掛けて息を吐く

 メルキゼは飲み物を作りに厨房へ行っていたため、
 カーマインは彼が戻ってくるまで一人で時間を潰していた


「あいつ…いつの間にこんな物買ってたんだろうな…」

 手の平で転がる藤の造花
 メルキゼの髪と同じ色

 この花を見つめて、思うことはただ一つ


「…これ、何かに使い道あるのか?


 形からして花瓶に生ける事は無理だし旅をする上では邪魔
 しかし、紐で結んでペンダントにするにもちょっと苦しい

「女の子なら髪飾りとかにも出来たんだけどな…」

 何となくシャレのつもりで頭の上に乗せてみる
 すると微かな音が頭の中に響いた

「……?」

 何かのからくり仕掛けなのだろうか
 カーマインは花を耳に押し当ててみる


 ――――…もし…もし……


「し…喋ったっ!!
 何か呼びかけられてる…!?」

 花が何かを訴えているのだろうか
 それとも何かの呪いという可能性も…

 カーマインは恐る恐る花に耳を押し当てた


 ―――…か〜めよ…亀さんよ――……♪


 歌かよ!!

 思わずベッドに突っ伏するカーマイン
 どうやら本当にからくり仕掛けがあったらしい

「子供向けのオモチャなのか…?」

 再び花に耳を寄せると歌の続きが聞こえてくる


 ――…世界のうちで〜……えーっと……お前ほど〜……♪


 今、ちょっとど忘れしなかったか!?
 何事も無かったように歌ってるけど、確かに『えーっと』って考えたよな!?


 ――…なんたらかんたら…ふんふふんふふ〜ん……♪


 いや、途中で歌詞適当になってるし
 つーかハミングで誤魔化すな

「最後まで覚えてないのかよ!!」


 ―――…酸いも甘いも…かみ分けて〜…♪


 何の歌だ

「それ趣向変わってるから!!
 一体どこを突き進んでるんだよカメさんはっ!?」

 からくり相手だと理解していても突っ込まずにはいられない
 ぺしぺし、と造花相手にソフトタッチな裏拳を叩き込む


「―――…か、カーマイン…何してるの?」

「あ、メルキゼ…おかえり」

 何時の間にか部屋に戻ってきていたらしい
 思いっきり不審そうな顔を浮かべられた


「いや…ちょっと裏拳の練習をな…ははは
 ところでこの造花って、からくり仕掛けなんだな…何処で買ったんだ?」

「さっきの占いの店」

 ちょっと待て


「もしかして…憑いてるんじゃないのか!?
 からくりじゃなくて、霊なんじゃないのか!?」

「大丈夫、悪いものは憑いていない
 妖精の一種が宿っているようだけれど危害は加えないから
 多少悪戯好きな所があるけれど、基本的に持ち主を護ってくれる」

 じゃあ応用的にはどうなんだよ!?
 何か聞き捨てならないワードが飛び交ってるぞ!?



「…で、これはどうすれば…」

「お守りのようなものだと思ってくれ
 私の方からも君を護るように頼んでおくから」

 メルキゼは造花を手に取ると、唇を寄せて囁いた


「…花に宿る妖精よ、どうか私のカーマインを護っておくれ
 もし彼に何かあったら私の炎で消し炭にして花ごと消滅させるから」

 人はそれを脅迫と呼ぶ


「―――…はい、カーマイン…大丈夫だよ
 妖精は命がけで君の事を護ると言っている」

「…そ、そーっすか…」

 他に言うべき言葉が見つからない
 俺は空笑いを浮かべながら花を受け取った

 …うん、大丈夫
 メルキゼの事だから…たぶん大丈夫

 何がどう大丈夫なのか自分でも解らないままカーマインは己に言い聞かせた




「そうだ、冷たい飲み物作ってきたんだ」

 不意に思い出したのか、メルキゼがコールドドリンクを差し出してくる
 小さなグラスに満ちた液体が仄かな明かりに照らされて揺れる

 そのドリンクは―――…妙に黒光りしていた
 例えるなら物凄く濃く磨った墨汁とでも言うべきか

 そして、その黒い液体の中から突き出ているのは謎のロウソク


怖っ!!


 黒いタール状の液体と白いロウソクのコラボレーション
 それはまるで底無し沼から出てきた人魂のようだ


「…こ、こ、これって…何の儀式なんだ……?」

 するとメルキゼは一瞬恥じらいの表情を浮かべる
 しかし極上の甘い笑みを浮かべると俺の耳元で囁いた

「…これは君の瞳の色に合わせて作ったカクテルだ」


 カクテル!?


「真夏のムーディーな夜のお供に…」

 ごめん、それちょっと無理
 ムーディーというよりは怪談百連発な雰囲気が漂う


「…どーりで黒いと思ったら……」

「宿の女将が『恋人の瞳色カクテルを持ってくと喜ぶよ』って
 だから君の瞳の色をしたカクテルを作ってみたのだけれど…」

「…そ、そっか…」

 『君の瞳色のカクテルだよ』って、映画で良く出てくるセリフだけれど、
 あれって洋画限定だったんだな――…


「…って、ちょっと待て
 このロウソクの意味がわからないんだけど」

「黒一色だけだと寂しいと思って…
 何かインパクトを付けようとしたのだけれど、
 他にはデッキブラシ便座カバーしかなくて…!!」

 どんな環境だ


「中に便座カバーが入っていたら君を驚かせてしまうと思って…
 だからまだダメージの少なそうなロウソクを選んでみたのだけれど」

 確かに『君の瞳の色に合わせたカクテルだよ』と差し出されたカクテルに
 何故か便座カバーが添えてあったら―――…驚くなんてものじゃないだろう

 普通は破局を招く


「まぁ、確かに便座カバーよりはロウソクの方がマシだけど…
 これはこれでかなりショッキングな感じのカクテルだな…」

「でも、黒さを追求するのも楽しかったよ」

 確かにこれだけ黒ければ充実感もあるだろう
 それにしても本当にドス黒いな…

 材料には何を使っているのだろう
 黒いからコーヒーか何かだろうか…


「これ、どうやって作った?」

搾った


 何を!?


「主語を言え主語を…」

「カシスとブラックベリーとハスカップ」

 意外と普通だ
 黒っぽい木の実を搾ったというわけか…

 とりあえず安心してカクテルに口を付ける
 甘酸っぱい酸味が火照った身体に心地良い


「…うん、味は良いな…黒いけど」

「最後に黒さが増すように呪文をかけるんだ
 赤ワインの入ったグラスに三切れのパンを浸して、
 カーマインの顔と身体を考えながら一気に食べれば…」

「…なあ、それって黒魔術じゃなかったっけ?」

 確かベイバロンの聖杯とかいう黒魔術
 しかもそれは黒く色付ける魔術じゃなくて!!


「お前…それ、誘惑の魔術――…」

「そうなのか!?
 黒魔術と言うからには黒く染めるのに使うのだとばかり…」

 そんな黒魔術は無い


「まぁ…これもお前らしいと言えばお前らしいんだけどな…」

 落ち込むメルキゼの頭を撫でながら苦笑を浮かべるカーマイン

「誰だって勘違いはあるし、失敗する事だってあるさ
 大丈夫、こうやって一つ一つ覚えていけば良いんだ」

 俺の身が持つかどうかは別として

 今日もまた寿命が縮む思いの一日だった
 カーマインは遥か遠くを見つめながら渋い笑みを浮かべた




「…つーか、俺……黒魔術かけられたんだよな?」

 しかも誘惑
 このままでいても大丈夫なのだろうか

 そして妖精さんは護ってくれるのだろうか


「…なぁ、もし黒魔術の効果で俺がお前を襲ったらどうする?」

「そうだな…いざという時の為に白旗でも作っておこうか」

「いや、白旗揚げられても――…」

「そうだろうか?
 黒魔術と白旗、黒と白でリセットにならない?」


 ならねぇよ
 なぁ、何かが間違ってるとは思わないか?


「大丈夫、火だって水をかけたら消えるのだから」

「……それとこれとは次元が別だろ……」

 カーマインは先行きの不安に痛む頭を抑えた


 季節は夏
 昼夜問わず熱気込み上げる夏

 どんなに気温が上昇しようとも、
 恐らく今夜も平和だろう



 ― END ―



 何か、物凄く時間が掛かってしまいました…すみませぬ
 実は黒魔術ネタを書くか占いネタを書くかで迷いまして…結局どっちも書いてしまったのじゃが(笑)

 メルキゼデク×カーマインのコメディというリクエストだったのじゃが、
 にょにょ餅 様、こんなのでよろしかったじゃろうか…

 本当はメルキゼデク自身をもっとボケさせたかったのぅ…
 しかもラブに持って行こうとして――…見事に玉砕致しました

 何で花に憑いてるんだよ…今度こそ真面目な告白劇にしようと思ったのに…
 あ、例の歌は普通にあのメロディで歌えるので挑戦してみて下さりませ(笑)

 そしてやはりメルキゼデクには笑いの神が憑いているようで、
 シリアスな展開に持って行こうとしても何故か邪魔が入るのでござります

 にょにょ餅様、今回はキリ番のリクエストありがとうございました
 この場を借りて改めて深く御礼申し上げまする
 これに懲りず、今後ともよろしくお願い致します――…