ふりょうしゃいんではなく、はみだししゃいん、とよませるようです。副題は、画期的プロジェクト成功の奥義。
本書の入手は困難なようで、書店ではほとんど見かけません。著者名はペンネームで、新製品開発をを何度も成功に導いた、大手家電メーカー幹部。
今はもうあまり聞きませんが、彗星のようにあらわれて、市場を席巻したワークステーション、News開発にまつわる実話。大組織と新製品開発の矛盾が、くっきりと描かれています。今でも、この内容は決して古くなっていないと思います。皆が電子メールを使っててきぱき作業をするという話、恥ずかしながら10年前には想像がつきませんでした。
出版直後、BusinessweekだかNewsweekに取り上げられたような記憶があります。
当時、業界あげて膨大な予算を投入した官製プロジェクトに、シグマプロジェクトというものがありました。家電メーカーで、コンピューターに実績のない会社は、これに加われず、かやの外におかれてしまっていました。ところが、その企業が、少数精鋭の人材のゲリラ的奮闘によって、見事にワークステーションビジネスを立ち上げてしまったのです。
(おなじ会社が今、プレーステーションとVioで一世を風靡しています。)
クリンジリーの名著「コンピューター帝国の興亡」(原題はAccidental Empire)、あるいは、Dealers of Lightningといった、コンピュータ関連技術の開発を描いた本を読むたびに、この本を思い出します。
上の顔を伺って仕事をする良い子には、画期的な新製品が開発できない、鋭角的で、使いにくい「人材」が必要だ、というのは、いずこでも同じなのかも知れません。
本書末尾に、こうあります。
(以下、引用)
……思い切って、やってみたら!
武運つたなく失敗したり、背後から飛んできた鉄砲玉に当たって挫折したとしても、本当に死ぬわけじゃないヨ。しばらく窓際でお休みするだけじゃないか。
大過なく、良い子をきめ込むのも悪くはないかもしれないけど、波瀾万丈のほうが、人生はずっとおもしろいかもヨ……
(引用終わり)
非常に残念なことに本書は絶版で、著者が最近書かれている本「気」というか「超能力」に関するものばかりのようです。
現実は厳しく、思い切ってやってみようとすると、しばらく窓際ではすまず永久追放されるので、「人材」は密かに超能力を磨くしかないのでしょうか?
(1999/5/22記)犬のロボットAiboという画期的な商品が生まれましたが、これもどうやら、著者がからんでいるようです。それならばなおさら、本書の復刊を期待したいもの。超能力でAiboが生まれるとは思われませんので。
(2001/8/26記)