エレベーターで九階に上がる。九〇一号室は左手奥のようだ。 部屋の前まで来ると、いよいよ緊張が高まった。 「行くわよ」 「うん」 意を決して、呼び鈴を押すアスカ。 数秒の後、扉は開く。そして扉が開くと共に、大音量の騒ぎ声が部屋の中から飛び出してきた。 「いらっしゃい―――!」 「アスカ!」 「シンジじゃないか!」 「シンちゃん!アスカ!」 二人に降り注ぐ、懐かしい声。懐かしい顔。 葛城ミサトがいた。鈴原トウジがいた。洞木ヒカリがいた。相田ケンスケがいた。赤木リツコがいた。伊吹マヤがいた。青葉シゲルがいた。日向マコトがいた。冬月コウゾウがいた。 「え、な、え」 「!」 それは、予想だにしない、最高の再会だった。 「いや、実はオレ達も、綾波に呼び出されたんだよ」 「そうそう。綾波さんったら酷いのよ?みんなが来るなんて、一言も書いてないんだから」 「ノコノコ来てみたら、みんな大集合ってわけや」 「ったく、レイにここまでやられるとはね。元作戦部長としては恥ずかしいわ」 「不様ね」 「アンタも騙されたんでしょおが!」 「で、肝心のファーストは?」 「それが……」 急に押し黙る、面々。 「レイはね、来てないのよ」 腕を組みながら、ミサトが言う。 「何か事情があったんでしょう。とにかく今、ここにレイはいないわ」 「いないって……」 「綾波……」 さっきまでの馬鹿騒ぎがうそのように、しんと静まり返る。 暫し、沈黙があたりを支配する。 不意に、リツコが携帯電話を取り出す。彼女はメールの着信を確認すると、バッグの中からノート型の端末を引っぱり出した。 仕事をしているような顔でキーを叩くリツコ。皆の視線が彼女に集中する。 彼女はすぐに顔を上げると、そこに集まった顔を見回した。そして、いつもの落ち着いた声で話し始める。 「今、レイからのメールが届きました」 どよめく一同。 「読み上げますから、そのまま聞いて下さい」 |