<旧車シリーズ 840>


DAIHATSU SCE型


 
1950年代に押し寄せたオート3輪の大型化・高級化の流れに沿って、ダイハツのオート3輪が2灯式ヘッドランプを採用し始めたのは1954年のこと。1トン積みクラスでは1955年式として登場したSCB型が最初のものとなった。方向指示器もウィンカー式となり、洗練されたスタイルが注目を集めるが、空冷単気筒の794ccエンジンはOHV化されて最高出力が22psに向上し、さらに油圧タペットの採用で静粛性を、セルモーターの採用で始動性を向上させていた。フレーム構造も耐久性を重視したものに変更され、エンジンをラバーマウント化するなど、シャシー側も大きく進化した。
 このSCB型と同じ1トン積み車で、さらなる高出力化の要望に応えたモデルがSCE型である。パワーユニットは空冷V型2気筒SVの1135ccエンジンで、最高出力は28psに達した。外観スタイルはほぼSCB型と共通イメージながら、2トン積み車・SCO型と並びダイハツカーブライトと呼ばれる大型のサイドウィンカーが採用されたのが特徴。荷台長さは7尺/8尺/10尺のワイドバリエーションが用意されていた。トランスミッションはこの時代のダイハツ号の例に漏れず、副変速機付きの前進6段ミッションを採用している。


 
この時代のオート3輪は、激しい開発競争の中で年ごとにデザインが変化していくので、全く目が離せないのですが、ダイハツ号もまさにその典型的存在で、随所にディテールの進化が見てとれます。わりと平面を中心にデザインが構成されているのがダイハツ号の特徴ですが、もはやかつてのバーハンドル三輪の面影は皆無といって良い感じですね。
 スタイリッシュなカウルデザインの導入で先鞭を付けた東洋工業に対し、ダイハツはこのSCE型の翌年から高性能な水冷エンジンという切り札を投入して対抗するのです。


推定年式:1956
撮影時期:2005年6月
撮影場所:山口県萩市 萩クラシックカーフェスティバル会場にて