<旧車シリーズ 833>


MAZDA CT型改


 
終戦直後の混乱の中で、戦前生まれのGA型三輪トラックと、その改良版のGB型によって再び生産活動を軌道に乗せてきた東洋工業にとって、1950年に発売したCT型は、本当の意味で戦後初のニューモデルとなった。マツダ号初の1トン積み車として登場したCT型の心臓部は、空冷V型2気筒の新開発エンジンで、動弁機構は日本初のOHV式を採用、1157ccの排気量から32psの最高出力を発生した。CT型の先進性は外観にも表れており、安全合わせガラスを用いたウィンドシールドからフロントカバーまでを一体デザインとした画期的なスタイルで、天井にはシート地の幌を装備し、安全性と耐侯性を著しく向上させていた。また、CT型ではダンプ、タンクローリー、清掃車、消防車といった多種多様の特装モデルを次々にラインナップしていった。
 1951年には10尺のロングボディ車を、1952年には業界初の2トン積み車(CTL1型)を追加するなど、ユーザーの要望に応えて積極的な商品展開を図ったCT型は、一躍東洋工業を業界のリーダー的存在に押し上げることになった。1953年には改良型のCTA型へ移行、同年12月にはマツダ号初の2灯式ヘッドランプを導入するなど、CT/CTA型は登場以来ずっと東洋工業のイメージリーダー的な役割を担い続けた。


 
かつて一世を風靡したはずのCT型も、思い付く現存車といえば、トヨタ博物館の展示車とこの消防車くらいでしょうか。特殊用途のクルマ、とくに消防車は旧型車の宝庫であるという一例ではあります。私は一度、実際に現車の運転席に座ってみたことがありますが、椅子の裏に収められた大きなスプリングに思わず目が留まりました。ゴムブッシュのエンジンマウントを実用化し、車体の大幅な振動低減を達成したとされるCT型ですが、やはりその乗り心地は推して知るべし・・・といった感じなんでしょうね。

推定年式:1954
撮影時期:2000年10月
撮影場所:大分県湯布院町川上 九州自動車歴史館にて