<旧車シリーズ 611>


DAIHATSU HIJET CAB (S35)


 
ダイハツ初の軽4輪トラックとして1960年に登場し、好評を博したハイゼットは、1964年にキャブオーバータイプのハイゼットキャブを追加した。エンジンはハイゼットと共通のユニットで、空冷2サイクル2気筒356ccのZL型で、ガソリンとオイルを自動混合するオイルマチック機構を採用していた。シャシーはコンパーノ譲りの角パイプ成形によるラダーフレームを採用、サスペンションは前輪にウィッシュボーン&コイル、後輪にはロングスパンのリーフスプリングに複動ショックアブソーバーを装着した。当時の軽キャブトラックの中でも、文字通りエンジンを前席下に搭載するモデルは少数派で、ハイゼットキャブはフラットな荷台と、軽トラック最大級の荷台有効積載スペース(1.7m×1.2m)を誇っていた。
 1965年、ZL型エンジンは圧縮比アップによって最大出力を17psから21psに向上させ、同時にトランスミッションも3速から4速へ進化する。同年11月には300kg積のライトバン(S35V)を追加。翌1966年にはフェローのZM型エンジンを移植した水冷エンジンシリーズが登場する。


 写真のハイゼットキャブは山間の県道沿いで偶然見つけて撮影したものですが、いざ写真が出来てきても肝心の車名がわからず、随分と調べ回った記憶があります。すでに実動状態ではなかったと思われますが、今ここを通っても同じように佇んでいるような気がするくらい、周囲の風景にすっかりとけ込んでいました。
 
人間の顔を思わせるような愛嬌あるフロントマスクですが、シングルのワイパーや逆開きのドアはやはり時代を感じさせますね。

推定年式:1964
撮影時期:1981年3月
撮影場所:山口県柳井市伊陸にて