SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第11号

SVAの活動を支える地域活動団体と交流

サンタピアップみやぎボランティア会を訪問
地域社会へ働きかけ・書き損じ葉書で学校建設

仙台市の事務局を訪問

 7月に東京でサンタピアップ(クメール語で平和)みやぎの中心を担っている「曹洞宗青年会」の皆さんと交流会を持ったとき、「なんと元気なお坊さんたちなんだ」「どこにこのエネルギーがあるのか」「地域ではいったいどんな活動をしているのか」という疑問を抱いた。わが「SVA東京市民ネットワーク」とは好対照のボランティア組織だからだ。そんな折り、たまたま仙台へ出掛ける用事ができたので、そのついでに事務局を訪問し、お話をうかがった。
 9月5日の午前中、仙台市内青葉区にある玄光庵を訪ねた。仙台市役所や県庁のある中心部から歩いて約15分、青葉神社の近くの寺町の一角、堂々たる伽藍のお寺が、玄光庵だ。出迎えていただいたのは、曹洞宗青年会の佐藤会長のほかに岡崎さんと伊串さんの3人。私は仙台市役所と気仙沼市役所の組合関係者や友人3人を紹介がてらお連れした。

サンタピアップの活動

 活動は1985年に難民救済のための「難民に衣類を送る宮城県民の会」として始まった。その活動は、1993年の難民キャンプ閉鎖とともに終了し、その後の活動としてカンボジアの学校建設のための活動が始まったという。発足は1993年9月のことだ。
 以来、サナン村小学校・リーチ・モンティ小学校、アンピル小学校など4校を建設し、現在5か所めになるメーソット小学校にとりかかっている。
 年に1校ずつ建設するための資金はどうやって集めているのか。これがなんと書き損じ葉書をひたすら集めることによって捻出しているのである。例えば1996年には、葉書約4万5千枚、切手約22万円分で総額約240万円を集約した。たかが葉書、されど葉書といった感がする。では、これほどの葉書を集めるための仕掛けはどうなっているのか。
 サンタピアップは団体参加方式をとっており、主な構成団体は次のとおりとなっている。
 曹洞宗宗務所と関連組織、日本赤十字、社会福祉協議会、立正佼成会、いくつかの小中高校、ライオンズクラブ、葬儀社、お茶やさん、仕出し業者などだ。まだまだ市民的広がりとはいかないが、地域社会での影響力は持っており、キャンペーンなどでマスコミが取り上げると市民からの反応もかなりあるという。学校での取り組みはその一例だ。

地域でのお寺さんの役割を見つめ直す

 ところで、お寺の関係者がこのような活動をすることについてどうなのであろうか。SVAについても常に言われていることだが、実際に地域社会の中でのお寺さんの活動を見させていただいて、改めて考えてみた。お寺さんが何かやるということについて、わが国では様々な反応がある。一番多く聞かれるのは「特定の宗教に利用されるのはいやだ」「布教活動ではないのか」などの声である。しかし、私はむしろお寺さんが地域で活動することのプラス面を見ていきたい。むしろそういった活動を進めることこそがお寺の本来の姿なのではないかと思う。ところが、現実には日本の大半のお寺はこういった姿勢を示さず、閉ざされた狭い世界の中でのみ存在し、ある時は経営優先の姿すら見せることもある。これに対してSVAに積極的に関わるお寺さんは、活動を通して本来の姿を示しているわけだ。SVAは非宗教団体であるが、私個人としてはいい活動をしていれば、布教活動と重なっても構わないとすら言いたい。サンタピアップの活動は宮城県曹洞宗青年会の皆さんの旺盛な活動で支えられている事実を目の当たりにして、そう感じた。

SVA活動の今後は地域展開の成否にある

 NGO「業界」では当たり前のことが地域社会では全く通じないことはざらにある。例えば「NGO」という用語すら大半の市民は知らない。ましてやNGOがどのような活動をしているのかは、ほとんど理解されていないと考える方が正しいだろう。こんな段階で「NPO法」が成立したとしても寄付してくれる市民がどれほどいるだろうか。自立したNGO活動を進めるためには、優れた人材の発掘、育成と活動資金作りが不可欠と言われているが、公的補助頼みではそれもおぼつかない。
 だからこそ、地域社会での活動を徹底して重視し、地域へ広げ、深めるための努力をすることが求められている。SVAには、お寺という地域社会に存在感を示せるものがあり、これを利点として活用することが可能だ。国などからの補助金を獲得することはよく、お寺の援助は嫌だというのでは「自立」と正反対に思うのだが、皆さんはいかがだろうか。
 サンタピアップだけでなく、SVAを支える地域組織のどこでもいいからお付き合いしてみると、先入観は払拭されるであろう。

(白石 孝)


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