降霊(バー・シー)の儀式

 

 

境内はまだ闇の中にある。寺に集まる村人は、徐々にその数を増していった。皆、太陽の昇る方向に向かって座し、祈りの言霊を待つ。やがて長の口が開かれ、厳粛な空気があたりを支配し始めた。精霊に呼びかけるように祈りは続く。この読経は寺の東西南北それぞれで行われた。

 

 

寺の四方に作られた小さな祠に、聖なる白い石、花などを供えていく。祈りとお供えが終わるたびに、かけ声と共にドラを打ちならす。3度目のドラの音に合わせて、ロケット花火と爆発音の打ち上げ花火があがる。それは村中に響きわたり、ピー・タ・コーン祭りの始まりを告げていた。

 

 

 

シンバル、肩から吊し左脇に抱える太鼓、日本の笙によく似た笛、あらん限りの力を絞り出す奇声・・・。 境内はすさまじい音に包まれる。昨夜村人と飲んだもち米焼酎がまだ残る頭に、強烈に進入してくる。


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